週刊「歴史とロック」

歴史と音楽、たまに本やランニングのことなど。

Beverly 『The Blue Swell』

5c234e968543fbcda740a7006f8be046c9c026b0

「軽くなった」は
褒め言葉である


元Vivian Girlsのフランキー・ローズ
Pains Of Being Pure At Heartのキーボード、ドリュー・シトロン
この2人が組んだギターロックデュオ、Beverlyを最初に知ったのは、
確か彼女たちが1stアルバムを出す前だったと思うので、もう2年以上前になるはずです。

重たい轟音ギターによる、靄のかかった深い森のような陰鬱さと、
その森に差し込む朝日のように荘厳な、フランキーとドリューのコーラス。
一見、正統派グランジ系オルタナバンドのようなのに、
教会の讃美歌のようにも聴こえるという不思議な音の風合いは、めちゃくちゃインパクトがありました。

1stアルバム『Careers』がリリースされた2014年というと、
ホムカミHAPPYフォトハイといったバンドの名前が真っ先に浮かぶのですが、
その次に名前を挙げろと言われれば、Beverlyがその筆頭だったろうと思います。


あれから2年、彼女たちの2枚目のアルバム『The Blue Swell』が昨年5月にリリースされました。
この2年の間にフランキーは脱退し、代わりにギタリストのスコット・ローゼンタールが加入。
Beverlyは女性2人のデュオから男女のデュオへと装いがガラリと変わりました。
しかし、変わったのはグループの構成だけではありません。

アルバムから先行して発表された曲は<Victoria>
ドリューとPainsのキップ・バーマンとの共作曲だそうです。


ポップはポップでも、1stの質感と比べると軽やかに聴こえるのは、キップの個性でしょうか。
彼女たちのSoud Cloudでは、その後も続々と新作の音源が公開されていったのですが、
この<Victoria>に代表されるように、1stに比べるとどの曲も相対的に軽くなった印象でした。

「軽い」と書くと、ネガティブな表現になる場合もありますが、Beverlyの2ndについては逆。
「洗練された」という意味に近いです。
例えば<Bulldozer><Lake House>なんかを聴いていると、
(僕の好きな)シューゲイザーっぽい展開を予感させられます。

あるアーティストの1stアルバムがめちゃくちゃ良かったのに、
2ndアルバムを聴いてみたら、あまりに前作の延長線そのままで、
その変わり映えのなさにがっかりしてしまった、という経験があります。
片や、ラモーンズに対しては「変わらないところがいい!」とか言ってるし、
我ながら勝手だなあと思うのですが、一般論でいえば、
やっぱり(程度の大小はあっても)何らか前作と違うところを見たいというのが、
多くのリスナーの思いであり、アーティスト側もきっと思いは同じでしょう。

Beverlyについては、確かに1stの頃の「モワァッ…」とした重たい煙たい感じも捨てがたいんですが、
2作連続で「モワァッ…」とされるよりも、
こういう新しい展開のあるアルバムの方が聴きごたえがあるし、
次の作品に対する期待がグンッと上がります。








sassybestcatをフォローしましょう
ランキング参加中!
↓↓よろしければクリックをお願いします

にほんブログ村 音楽ブログ CDレビューへ
にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ

『騎士団長殺し』村上春樹(新潮社)

9

「68点や43点の人生」だって
そんなに悪くはないはずだ


発売前に予約して買っていたのですが、
一度読み始めたら止まらなくなるだろうからと、
読み始めるタイミングを計っていたら、
実際に手に取るまでに2か月以上かかってしまいました。
でも、やはり予想通り読み始めたら止まらなかったです。
文句なしに面白かった。

今回はいつにも増して、映像が頭に浮かんでくる作品だったように思います。
雨田具彦の家のリビングやアトリエの様子、裏庭の祠とその背後にある「穴」、メンシキさんの自宅…。
読み終えた今、この小説のことを思い出そうとすると、
真っ先に浮かんでくるのはストーリーよりも、物語の舞台になった場所の方です。
そういえば、広尾、東北、そして小田原と、
具体的な場所の名前が登場する頻度も、他の作品に比べて多いように感じました。

以前、僕は村上春樹の小説について、
読者をいつの間にか現実とは異なる位相の世界へと迷い込ませ、
最終的には(たとえそこが物理的には元いた場所であっても)思いもよらぬ場所へと
連れられてきてしまうという点で、
「冒険小説」であると書きました。
(過去記事:『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』
今回の作品を読んで、改めてその思いが強くなりました。

ただ、今回は僕にとって、おそらく初めて「主人公がほぼ同年齢である村上作品」でした。
そのせいか、「冒険」のもつ意味についてより深く納得できるような気がしました。
何を納得したのか、うまく伝わるかわからないけれど、
絶望するほど年老いてはいないけど、楽観できるほど若くもない。
人生の分水嶺を間もなく超えようとしている年齢を迎えた僕らには、
『とことん腰を据えて向き合わなければならないもの』がある

というような、ある世代になると共通してもつであろう、一種の人生観です。
冒険とはその「とことん腰を据えて向き合わなければならないもの」のことです。

そして、冒頭に述べた「具体的な地名が多く登場した」というのは決して偶然ではないと思っています。
30代も後半に入ると、健康でも仕事でも生活のさまざまな面で、
本当に引き返せないポイント(point of no return)がそこかしこにあるのを実感します。
そういうポイントに差し掛かったら、腰を据えてとことんその「何か」に向き合わないといけなくて、
そのためには、まずは今いる場所へのコミットメントが必要です。
具体的な地名が登場するのは、主人公が腰を据えた決意であり、
同時に彼に対する「縛り」でもあるように思うのです。


こないだ、劇団を旗揚げしてから今年で17年にもなることに気づいて、ゾッとしました。
だって、この17年なんて本当にあっという間だったから。
この「あっという間」をもう1回繰り返したら、
僕はもう50代の後半で今1歳の娘は18歳になっていて、
そしてさらにもう1回「あっという間」を繰り返したら、僕は後期高齢者の仲間入りです。

自分の人生の残りは「あっという間」2回分しかないんだ。
そう思ったら若い頃には無数にあったはずの選択肢が、
驚くほど少なくなっていることに気づきました。
そして、「ありえたかもしれない別の人生」に対する未練が急に湧いてきて、
(馬鹿な話と笑われるかもしれませんが)とても苦しくなりました。

そんなときに『騎士団長殺し』を読んだのです。
この作品で描かれる「冒険」は、本人が好むと好まざるとにかかわらず、
人生のある局面で向こうからやってくる、一種の宿命のようなもののように感じました。
その宿命に対して、戸惑ったり迷ったりしつつも、
粛々と一つひとつの課題や作業をこなしていく主人公に、僕は心から共感したのです。
今いる場所がベストな場所ではないかもしれないけれど、
それでも今いる場所で生きていくしかない。
100点の人生ではないかもしれないけど、
68点や43点の人生だってそんなに悪くはないはずだ、と。








sassybestcatをフォローしましょう
ランキング参加中!
↓↓よろしければクリックをお願いします

にほんブログ村 音楽ブログ CDレビューへ
にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ

2017年4月の3冊 〜海外在留日本人とストーン・ローゼズとトランプ支持者層〜

『ひとりの記憶 海の向こうの戦争と、生き抜いた人たち』橋口譲二

 昭和初期、日本の植民地政策や戦争で外国(主にアジア)に赴き、さまざまな事情で日本に戻らずに現地で一生を終えようとする日本人のインタビュー集。
 途中、書かれている内容の重さに何度となく読み進めるのを断念しようかと思いました。けど、ページを繰る手は止まらない。そんな本でした。「重い」といっても、凄惨であるという意味ではありません。日々の生活の営みや将来の夢、そうした人の人生をあまりにも簡単に吹き飛ばしてしまう時代(戦争)というものの重さ。そして、その中で一人の人間が下してきた決断の重さです。
 聞いたことのないような南の島で一生を畑作りに費やした人や、外国人のもとに嫁ぎ、日本人であることを隠しながら生活し、その結果今では日本語を忘れてしまった人。人の人生はなんて重く、同時になんて儚いんだろう。僕は何度もページを繰る手を止めては、胸に迫る何かをやり過ごさなくてはなりませんでした。
 このインタビューが収録されたのは10年も前。おそらく、今ではもう何人もの人が亡くなっているでしょう。




『ザ・ストーン・ローゼズ 自ら激動なバンド人生を選んだ異才ロック・バンドの全軌跡』サイモン・スペンス

 バンド結成前から2011年の再結成までを記録した、ローゼズの最新にして唯一の評伝。上下2段組で全365ページというボリュームもさることながら、メンバー含む100人近くの関係者へのインタビューによって構成された内容は、とにかく“濃い”です。来日公演に合わせて余裕を持って読み始めたのに、1ヶ月くらいかかって読み終えたのは結局公演直前でした。
 邦題サブタイトルは「自ら激動なバンド人生を選んだ異才ロック・バンドの全軌跡」。本を開く前はマユツバだろ?大げさなコピーだな?と思ってたのですが、いざ読んでみると、本当にこのバンドは無茶苦茶でした。
 テレビ出演やアメリカツアーといった、いわゆる「チャンス」を、「えええ?」みたいな理由でことごとくドブに捨ててしまう破天荒ぶり。それでも圧倒的ともいえる支持を得ているのが不思議でもあり、じゃあ90年当時、抜群のコンディションでアメリカに上陸してたらどうなったんだろうという想像も掻き立てられます。
 伝説のあの1stアルバム完成が、本の中ではちょうど全体の半分あたり。猛烈なスピードで向こうからやってきて、あっという間に姿を消してしまう。まさに暴風のようなグループであったことがわかる本です。




『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』J.D.ヴァンス

 米ケンタッキー州の片田舎に育ち、現在は法律家として活躍する著者による自伝的ノンフィクション。といっても、著者J.D.ヴァンスが本書で描きたかったのは、自身のサクセスストーリーではなく、自分が育った故郷の町ジャクソンとそこに住む人々のことでした。ジャクソンは、住民の1/3が貧困状態にあり、離婚や薬物などの問題を抱えているといわれる白人労働者階級の貧しい街です。著者自身も父親がおらず、母親は薬物中毒で何度もリハビリ施設に入所しています。ジャクソンのような、アパラチア山脈周辺の田舎の町に暮らす白人労働者たちは、ヒルビリー(=田舎者)と呼ばれます。
 ジャクソンは、元々は巨大な自動車工場を中心に、そこで働く人々とその家族によって作られた街でした。巨大資本に依存した町は、当然ながらその資本が縮小、撤退すると、途端に苦しくなります。政府の支援によって手厚く守られている黒人系やヒスパニック系と異なり、街を出ていく金も支援もなかったヒルビリーたちは、貧しくなる街に取り残されるしかありませんでした。そうして彼らの中に、厭世的な気分や既存の政府への不信感、自分たちの仕事を奪う外国人たちへの恨みが醸成されていったのです。
 本書の中に明記はされていませんが、読み終わって真っ先に感じるのは、彼らヒルビリーこそトランプ大統領の支持者層なのだろう、ということです。あとがきにも書いてありますが、実際本書は昨年の大統領選後「トランプを支持したのは誰なんだ?」という動機で手に取られ、ベストセラーにまで上りました。ヒルビリーの貧困は社会構造的な背景をもつものですが、著者はその解決には公的な支援だけでは不十分で、ヒルビリー自身の「貧困から抜け出そう」という意思が不可欠だと述べます。ところが、現実には多くのヒルビリーが、その意思(とその基になる平和な家庭や小さな成功体験)を持つことを自ら放棄している。きっと、本書を読んだ人はみんな途方に暮れたんじゃないでしょうか。
 僕自身は、実は本書を一種の「子育て指南書」として読みました。著者が、ヒルビリーの環境に生まれながら薬物中毒にも犯罪者にもならずにすんだ大きな背景には、姉による絶対的な愛情と、祖母による「あんたはやればできる子だ」という絶え間ない励ましがありました。「子供の成長には安心して過ごせる家庭が必要」ということはよく言われることですが、本書を読むと、それを極めて実際的なレベルで痛感できます。







sassybestcatをフォローしましょう
ランキング参加中!
↓↓よろしければクリックをお願いします

にほんブログ村 音楽ブログ CDレビューへ
にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ

Paul McCartney 「One On One Japan Tour 2017」

20170101000608fb6

今回ポールが覚えた日本語:
「ゴォルデンウィークゥゥ!」


ポールのライブについては過去に2回も書いてるので、
#Paul McCartney 「OUT THERE JAPAN TOUR 2013」
#Paul McCartney 「OUT THERE JAPAN TOUR 2015」
もう書くことなんてないだろうと我ながら思うのですが、
それでも何かを書きたくさせるのがポールです。

ということで、4月末に行われた、
ポール・マッカートニーの来日公演を見に行ってきました。

前回の来日が2015年のちょうど同じ時期でしたから、
ぴったり2年ぶりという短いスパンでの再来日です。
しかし今回は、16年から始まった新しいツアー、
「One On Oneツアー」としての日本初上陸になります。

メンバー的にもタイミング的にも、
前回の「Out Thereツアー」から地続きで始まっているツアーなので、
今までと大きく印象が変わったわけではありません。
まあ、あのクラスになると観客が聴きたい曲もだいたい決まってるから、
ある程度パッケージ化された内容にせざるをえないんでしょうけど。

その中で、主にセットリストの面で、
「One On Oneツアー」について僕がグッときたことを3つ、挙げてみました。

----------

■<In Spite of All the Danger>にグッときた
ライブ前半、バンドをアコースティック編成に変えたポールが、
「ビートルズが初めてレコーディングした曲をやるよ」と言って披露したのがこの曲。

録音されたのは1958年。
ジョンもポールもジョージもみんな10代で、
まだビートルズがクオリーメンと名乗ってた時代の、とにかくめちゃくちゃ古い曲です。
『アンソロジー1』に収録されてますが、まさかこんな曲を選んでくるとは。
ちなみに、ビートルズの歴史上、唯一ポールとジョージの2人で書いた曲でもあります。


リバプール郊外に暮らす無名の10代の少年2人が作った曲を、
60年近く経って、アジアの島国で何万人もの観客が歌ってる。
ううむ。うなるしかない光景です。

選曲の意外さもさることながら、
アコースティック編成のアレンジもよかったです。
同じ編成のまま<You Won’t See Me>、そして<Love Me Do>と続く、
Early Daysな一連のセクションはうっとりするものがありました。


■新曲<FourFiveSeconds>がフツーに良かった
「一番新しい曲をやるよ」といって突然披露したのがこの曲。
発売されてないから歌詞をバックスクリーンに映しながら演奏してました。
この曲、良かったですねえ
いかにもポールらしい、サラッと5分くらいで書いたような「小曲」ですが、
バンド向けにアレンジしていく中で凝ったような形跡もあり、早く音源として聴いてみたい。
いまアルバム作ってるって話ですが、そこに収録されるんでしょうか。

それにしても、「新曲をライブで初めて聴く」というのはよくあることですけど、
まさかそれをもうすぐ75歳になる人のライブで体験するとは思いませんでした。
しかもその新曲と60年近く前(!)の<In Spite of All the Danger>とが同じセットリストに入るって…。
つくづくポールのキャリアの長さを感じます。


■ついに<Get Back>を生で聴けた
いや〜、これは嬉しかった。
ライブに行くたびに毎回期待してたんだけど、
滅多に演奏しない曲なので、なかなか巡り会えませんでした。
今回も、武道館含め全4回のステージのうち、
この曲を演奏したのは東京ドームの最終日だけ。

ドーム2日目が終わった時点で「あ〜今回もやらないんだな」と、
最終日は期待すらしてなかったんですが、そこにきてのあのイントロ!
さすがに泣きました、これは
とにかく全部歌ってやろうと思って、
ギターソロのメロディとかまで「ティロリロ」言いながら歌いました

----------

以上の3曲が、今回のツアーのセットリストで特にグッときたのですが、
一方で、リイシューされたばかりの『Flowers In The Dirt』からは1曲も演奏してくれなかったとか、
おいおい<My Valentine>いつまで歌うんだよ?とか、
不満というか期待というか、突っ込みどころもあります。
それに、前述の通り、半分以上は「いつも演奏する曲」で占められているので、
総じていえば「新鮮味」はありません。

けれど、やっぱり<Ob-La-Di, Ob-La-Da>はワクワクするし、
<Band On The Run>は毎回「うおおおおぅ!」と叫んじゃうし、、
<Carry That Weight>は歌ってるとジワッときます。
何より「ポールがそこにいる」という空間はいつだって楽しくスペシャルです。

ということで、今回のツアーで、結局のところ一番強く感じたのは、
「ポールのライブは何度見ても超楽しい」ということでした。
そろそろ飽きるかな〜と思ったけど、全然飽きねえ!!

前回の「Out Thereツアー」では1つのツアーで2度の来日を果たしました。
そう考えると、今回の「One On Oneツアー」でも、もう1回来てくれるかも。
来てくれてもいいんじゃないか。
来てくれ頼むよポール






sassybestcatをフォローしましょう
ランキング参加中!
↓↓よろしければクリックをお願いします

にほんブログ村 音楽ブログ CDレビューへ
にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ

The Stone Roses 日本武道館公演

trs_tuika_header

「This Is The One She Waited For」だなんて
なんかもう出来すぎたドラマのようです


ストーン・ローゼズの武道館公演を見てきました。
来日自体は2013年のソニックマニア以来4年ぶりですが、単独としてはなんと22年ぶり
ロック史に残る気まぐれ&アクシデント続きのバンドなので、
このチャンスを逃したら、もう二度と見られないかもしれません。
だいたい、再結成後初の単独来日だって、
元々は去年予定されていたんですから(レニの骨折によりキャンセル)。

なので、「行かない」という選択肢などハナからなく、
真っ先にチケットを押さえたのですが、
当日を迎えても、武道館の座席についても、
4人が出てきて演奏を始めるまでは安心できないという、
非常に緊張感のあるイベントでした。

んで、肝心のステージの内容ですが、これが期待以上の素晴らしさでした。
いやあ、本当に見に行ってよかった。

どう素晴らしかったかというと、結局「あのローゼズを生で見た」という一言に尽きちゃうんですが、
でもそれは、<I Wanna Be Adored>のあのベースリフをついに大合唱できたとか、
人生でトップ10に入るほど繰り返し聴いた1stアルバムの全収録曲を生で、
しかもフルメンバーによる演奏で聴けたとか、
単に夢のような時間を過ごした感激だけを指してるわけじゃありません。
そうした、頭の中でイメージしてきたことの確認の意味だけでなく、
反対に、生で見たことでそれまでの印象がガラッ変わったという、
まさにライブに行くことでしか得られないものが、少なからずあったからです。

具体的にいうと、初めて見た生のローゼズは、
想像していたよりもはるかにフィジカルなバンドでした。

キレッキレなギターで麻薬的な陶酔感を生み出すジョンと、
ポップなのに挑発的で不穏なベースラインを鳴らすマニ。
(いかにも人の好さそうなおじさんというマニのルックスとのギャップもいい)

そして、僕の目をくぎ付けにしたのは、レニのドラムでした。
15曲前後しか演奏してないのに、レニが叩いたフレーズは軽く200種類はあったんじゃないでしょうか。
「本当に20年近くドラムを叩いてなかったのかよ?」
と突っ込みたくなるくらいに変幻自在。
2階席という利点もあり、途中から僕はずっとレニを見てました。

ジョン、マニ、そしてレニの3人が生み出す、まるで音の洪水を浴びているかのようなグルーヴは、
それまで抱いていた「歌(シング・アロング)のバンド」というイメージを覆すほど強烈でした。
ストーン・ローゼズの核は、あのグルーヴ感なんだなあというのが、生で見た一番の実感。
だから、<Adored>も<Waterfall>ももちろんよかったけど、
それよりも<Fools Gold>や2ndアルバムからの3曲のほうが、ガツン!ときました。
(あ〜、<One Love>やってほしかったなあ。あれだけが心残りだなあ)

じゃあ、一方で「歌(シング・アロング)」を担当するイアンはどうだったかというと、
Twitterでいろんな人が呟いていた通り、音外しまくってました
イアンが音を外すのは有名なので知ってたんですけど、
あんなにド派手に外すとは思ってなかった!
だって<She Bangs The Drums>というキメ曲で、フルコーラス最後まで外してましたからね。
ラストの<I am the Resurrection>もほとんど合ってなかった。
あと、何の曲だったか忘れたけど、歌の入りが遅れてレニが苦笑いしてたときもありました。
あれだけのビッグネームのバンドで「ボーカルが音痴」って逆にすごい。

でもそうすると、前述したようにローゼズの核は、
<I am the Resurrection>のアウトロのような非イアン部分にあるんだから、
「イアン要らないじゃん」って話になっちゃいそうですが、
それでも結局バンドの顔は彼以外にいないと感じるのが不思議です。

どんなに音を外そうが、やっぱりステージ上で一番目を引くのはイアンだし、
あの独特なパフォーマンスをはじめ、
彼にはなぜか人の目を奪ってしまうカリスマ性があります。
音楽的にも、3人のすさまじいグルーヴ感に釣り合うのは、
イアンのあの低体温な声しか考えられません。
だって、ロバート・プラントみたいな絶叫系の熱いボーカリストがあのノリに乗っかってしまったら、
楽曲のもつスペシャルな感じが生まれないばかりか、鬱陶しくて仕方ないもの。

「ジョン・マニ・レニによるローゼズ」という発見だけでなく、
イアンのキャラクターの再確認も、やはり生で見たからこそできたことでした。

ちなみに、この日僕がもっともグッと来た曲は<Sally Cinnamon>
初期のリボルバーレコード時代のシングルで、
ローゼズのキャリアを見ればもっと優れた楽曲は他にいくらでもあるんですが、
<Sally Cinnamon>にはブレイク前夜の緊張感や若さゆえのもろさみたいな、
この曲にしかない何かがあります。
全員50代のおじさんになった4人が演奏した<Sally Cinnamon>は、
不思議なほど当時のきらめきを失っていませんでした






sassybestcatをフォローしましょう
ランキング参加中!
↓↓よろしければクリックをお願いします

にほんブログ村 音楽ブログ CDレビューへ
にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ
記事検索
プロフィール
twitter
読書メーター
ReiKINOSHITAの最近読んだ本
訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

  • ライブドアブログ