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イケメン達が鳴らす
泥臭いブルース・ロック


 ニュージーランド出身の5人組、チェックスのデビュー・アルバム。

 地元オークランドの聖歌隊で知り合った幼なじみで結成され、2005年、彼らがまだ18歳のときにR.E.Mのツアー・サポートに抜擢されたのを皮切りに、オアシスやハイヴスなど大物バンドから次々とサポートのオファーを受け、デビュー前ながらも既に「話題の新人バンド」としてコアなロック・ファンから知られた存在になる。そんなチェックスが満を持して08年にリリースしたのがこの『HUNTING WHALES』。

 写真を見ると5人ともイマドキな若者でイケメン揃いなのだが、彼らの鳴らすロックはそのルックスに似合わず泥臭く男臭く、猛烈に渋い。ツェッペリンやゼムやクリームなど、60年代のレジェンドたちの遺伝子が70〜90年代をすっ飛ばしてダイレクトに受け継がれたかのような、コテコテなブルース・ロック。随所に“濃い味”なメロディやギターリフやシャウトがあって、本当に20代前半か?と突っ込みたくなるほど、クラシカルな感性が爆発している。

 以前、ボーカルのエド・ノウルズのインタビューを読んだことがあるのだけれど、「少年時代に影響を受けたアーティストは?」という質問に対して、彼は「ジム・モリソン」と答えていた。推して知るべし、である。

 ニュージーランドのすぐ隣、オーストラリアには、チェックスと同じく古典的ロックンロールをゴリゴリ鳴らすジェットという大物バンドがいるけれど、この“クラシック派”とも言うべき両バンドが揃ってオセアニア発であるところがおもしろい。

 そのことについてエドは、ニュージーランドならではの業界事情を指摘する。アメリカやイギリスを音楽産業の“都心部”とするならば、オセアニアは、いわば“僻地”である。マーケットはトレンドに対してどこかのんびりとしていて、ロック・シーンの新旧交代も極めてゆるやか。したがって、欧米では風化してしまった音楽が、今なお「現役の音楽」として生き続けているらしい。新人バンドがパブで演奏するにしても、ビートルズやザ・フーが弾けなければオーディエンスに受け入れてもらえないという。チェックスなどの若い世代はそういった環境で育っているから、クラシックなロックを演奏することを不思議とは思わず、むしろ自然にそういったバンドをカバーするのだそうだ。

 確かに、彼らは懐古趣味的な懐メロのコピーバンドではない。彼らには往年の直球型ブルース・ロックを、あくまで自分のモノにしているナチュラルさがある。だからこそ彼らのロックには古臭さが微塵もなく、むしろ最高にエネルギッシュであり、“現在のロック”として相対することができる。

 60年代に産声をあげたロックは、時代が進むにつれて新解釈と再構築を繰り返し、無数の枝分かれが行われてきた。それを主導してきたのはアメリカとイギリスだが、新陳代謝の激しいマーケットは、絶えず枝分かれのその先端にのみ関心を払い続け、いつの間にか、大元の「芯」の部分はスカスカになってしまっていた。ロックがまだブルースという親に手綱を握られていた時代。ブルースから“親離れ”しようと試行錯誤をしていた時代のロックである。

 そんな「芯」の部分を真正面から鳴らすチェックスのロックは逆に新鮮であり、カッコイイ。


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