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YMOの“裏の顔”が体感できる
傑作ライヴアルバム


YMO1980年の作品。
前年に行われた第1回ワールド・ツアーの演奏を収録した、彼らにとって初のライヴアルバム。
YMOは最初に海外で人気に火がつき、その後逆輸入される形で日本で認知された。
そのきっかけとなったのが、この第1回ワールドツアーである。
『PUBLIC PRESSURE』にはその内、ロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルスの3ヶ所でのテイクが収録された。

YMOはシンセサイザーやコンピュータを駆使した音作りで、
国内に「テクノ」という言葉を普及させた立役者となった。
「ピコピコ」「キュンキュン」といったゲームのような音や、何重にもエフェクトのかかったコーラスなど、
彼らは“生っぽさ”を排除することで、
「仮面性」「虚構性」とも言うべき一段洗練された音楽のおもしろさを提供した。

彼らは自らの表現衝動を拠り所として音楽を作るグループというよりも、
最初にコンセプト、あるいは世界観があり、メンバー3人はそれを構築するために集められた、
いわば建築機械のような存在だ。
人ではなくコンセプトが主導するという点において彼らは従来にはなかったタイプのグループなのである。

だがこのように知的でユーモラスなグループYMOが、
ライヴでは一転、興奮と刺激に満ちた肉体的な演奏を見せることは驚きであり、
このちぐはぐさがより一層彼らのつかみどころのなさを助長させ、そこがまたおもしろい。
この『PUBLIC PRESSURE』の最大の聴きどころは、
そんなYMOの裏の顔とも言うべき“ロックバンド”としての彼らが体感できるところである。

メンバーの演奏はスタジオ音源よりも伸びやかであり、熱さを感じさせる。
オーディエンスのクリアな歓声や手拍子などと相まって、30年近くの時間の隔たりを感じさせない。
今まさに目の前で演奏されているかのような濃い臨場感が詰まっている。

特に高橋幸宏のドラムが素晴らしい。
元々サディスティック・ミカ・バンドでドラムを叩いていた高橋だが、
一打一打の鮮やかさ、重さという点ではむしろYMOでのドラミングの方がロックを感じさせる。
彼のドラムが頑丈な背骨となって緊張感を漲らせ、
同時に強力なエンジンの役目を果たすことで疾走感を失わせない。
そして細野晴臣のベースがそれにねっとりと絡みつき、
全体としてかなりファンキーなノリを生んでいるところが意外な発見である。

収録されたのはトータル9曲とボリュームはやや少なめだが、
<RYDEEN>や<SOLID STATE SURVIVOR>、<TONG POO>、
<LA FEMME CHINOISE>などの代表曲が押さえられていて、初期YMOのベスト盤としても楽しめる。

アルバムのハイライトは4曲目<THE END OF ASIA>。
元は坂本龍一のソロデビューアルバム『千のナイフ』に収録されている曲だが、
これを大幅にバンドアレンジに変えて演奏している。
クールでヘヴィなドラムの上に、
シンセサイザーが不穏なメロディを何重にも重ねながら進行する1コーラス目は本当に素晴らしい。
この曲は日本の小劇場演劇における伝説的作品、第三舞台『朝日のような夕日をつれて』のテーマ曲でもある。

2000年代に入って以降、
「HASYMO」などに名義を変えたりしながら何度か単発的に再結成をしているYMOだが、
最近の3人の音楽性を反映してか、
かつての曲をアンビエント・ミュージック風にアレンジを変えて演奏する傾向があるため、
ファンとしてはどこか寂しいと言うか、不完全燃焼感がある。
3人とももういい年齢なので、再びこのアルバムのような演奏をするのはキツイのかもしれないが、
やはり多くのファンはオリジナルのアレンジで、
なおかつこのアルバムのような熱っぽい演奏を期待しているはずだ。











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