zutons 2nd
このバンド・・・
なんかヘン!!


 英リヴァプール出身の5人組、ズートンズ。とても個性的なバンドで僕は大好きなのだが、彼らの魅力を余すところなく言葉で説明するのはとても難しい(もっともそれはズートンズに限ったことではないけれど)。とりあえず、文末にリンクを貼った3曲のPVを観ていただきたい。

 この3曲に限らず、ズートンズのPVはどれもおもしろい。おもしろいというか、なんかヘン。すごくヘンなのではなく「なんかヘン」。突っ込みたいのに一体どこに突っ込めばよいのかわからず、振り上げた拳を引っ込めざるをえないような、妙にイライラする感じ。このフワフワとした「なんかヘン」なところがズートンズなのである。

 大体このバンドは5人の楽器構成からして一風変わっている。ボーカル、ギター、ベース、ドラム、とここまでは普通。ここでもう一人加えるとするならセカンド・ギターか鍵盤、というのがロックバンドのトラディショナルだが、彼らの場合はサックスとなる。ゲストという形でサックス奏者が加わることはよくあるが、オリジナルのメンバーとして、それもトロンボーンやトランペットと一緒にではなくサックス単体が在籍しているロックバンドはなかなかいないだろう。音楽的な面でも、最初に聴いてパッとわかるズートンズの特徴はサックスの音で、ギターのリフばりにドスを利かせた金管音が強いアクセントとなっている。

 ちなみに、サックスを担当しているのはアビィ・ハーディングというバンド唯一の女性メンバーなのだが、このアビィがモデルのような美女で、ヒゲ面のむさ苦しい男メンバーと一緒に彼女が並んでいるという画自体が、なんかヘン。

 さらにもう一つ、ズートンズは歌の内容もなんかヘン。というかこれに関しては「相当」ヘンで、「君を縛り付ける。僕の物にする。地下に閉じ込める。虫だらけの部屋でネズミの毛を食べさせる」とか「する、しない。やる、やらない。やると言っても、どうせやらない」とか、もう訳詞を読んでいるだけでもおもしろい。基本的にどの歌詞もシュールでダークでぶっ飛んでいるのだが、彼らの場合、それを大マジメに歌い上げるので、こちらとしてはどう反応すればよいのか毎回わからない。ただ、この行き場のない感じをズートンズは確信犯でやっているわけで、その感性の鋭さはすごいと思う。

 とにかく、このズートンズというバンドは「そのまま」が嫌いらしい。ヒネられていたり倒錯していたり、何かとひと手間加えたがる。変化球ばかり投げるのだ。だが、そのさじ加減は絶妙で、個性的な味付けをしつつもギリギリ下品にはなっていない。彼らは2004年にデビュー後、現在までに3枚のアルバムをリリースしているが、初期の頃より一貫してブラック・ミュージックへの傾倒を見せており、よくよく聴けば彼らの音楽的変遷は、ソウルやファンクのノリをいかに自分たちなりに解釈して取り込むかの試行錯誤であることがわかる。そういう意味では、むしろ古典的なロジックを持ったバンドなのだ。

 この『TIRED OF HANGING AROUND』は06年リリースの、彼らの2枚目のアルバム。エイミー・ワインハウスがカバーした<VALERIE>を含む、大量のヒット・シングルが収録され、デビュー作に比べよりポップなアルバムに仕上がっているので、最初にズートンズを聴くのにおすすめな1枚。だが、デビュー作はダーク、この2枚目はポップ、3枚目はゴージャスと、それぞれ異なる色合いを持っているので、彼らのことが気に入ったらぜひ3枚とも聴いて欲しい。現在ズートンズは新作のレコーディング中。今年あたり4枚目が聴けるかも。ストレートなギター・ロックばかり聴いていると、時折彼らの「なんかヘン」なロックが無性に恋しくなるのだ。
 

<IT’S THE LITTLE THINGS WE DO>

<WHY WON’T YOU GIVE ME YOUR LOVE?>

最後に、これは本作には収録されていない曲なのだが、どうしても紹介したいオモシロPV
<WHAT’S YOUR PROBLEM>