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ステレオは真横から音が来る
モノラルは正面から音が迫る


 今更!ようやく!ビートルズのモノラル・ボックスを聴きました!

 これは、昨年9月9日に発売されたステレオ・リマスター盤と同時リリースされたもので、『PLEASE PLEASE ME』から『THE BEATLES(ホワイト・アルバム)』までの10枚のオリジナルアルバムと『MONO MASTERS』(『PAST MASTERS』のモノラル版)、つまりビートルズの楽曲のうちモノラルミックスが施されている音源が全て収録されている(『LET IT BE』と『ABBEY ROAD』の2枚はステレオミックスしか存在しない)。もちろん、全てリマスターされている。

 ビートルズのメンバーはモノラルのミックス作業には立ち会ったが、ステレオのそれはほとんどプロデューサーのジョージ・マーティンに任せっきりだったことから、メンバーの意志が反映されている音、つまり“ビートルズ自身が思い描いていた音”はモノラル音源にこそあると言われており、昨年9月の発売当初からファンの間ではステレオ・ボックスよりもこのモノ・ボックスを買い求める向きが強かった。モノ・ボックスのみバラ売りなしの初回限定生産だったこともファンを煽った(結局その後海外版モノ・ボックスの輸入盤というのが登場し、実質的には「初回限定」ではなくなったことでファンからはヒンシュクを買ったのだが)。

 僕はというと、当初から初期4枚の初ステレオ化というトピックの方に注目しており、元々旧盤からステレオを主体に聴いていたこともあって、迷わずにステレオ・ボックスを購入した(ステレオ・ボックスに関しては昨年載せた『ANTHOLOGY 1』『MAGICAL MYSTERY TOUR』『BEATLES FOR SALE』をご覧ください)。「音が生まれ変わった」と呼ぶべきステレオ・リマスター盤を僕は十二分に堪能していたのだが、その後ネットで飛び交うファンのレビューなどを見るにつれて、モノラル・リマスターの方も気になってはいたのである。

 で、実際に聴いてみた感想はというと・・・モノラルの方が良い(笑)。いやー、正直ステレオ主流のこの時代にモノラルなんて保守的な懐古趣味だと思っていたのだが、浅はかでした。

 まず、音のぶ厚さが全然違う。ステレオは音が真横からくる感じだが、モノラルは音が真正面からカタマリになって押し寄せてくる。また、楽器の音もモノラルの方がより質感がある。なめらかで柔らかで、ステレオのシャープな音と比べると耳ざわりが温かだ。特にギターの音は圧倒的にモノラルの方が良い。

 このモノ・ボックスを聴いて、少なくとも「ステレオ=新しい」「モノラル=古い」という認識は改めなければいけないと思った。リマスターとはごく簡単に言って汚い音をキレイにする作業だが、ステレオ音源とモノラル音源をそれぞれ旧盤とリマスター盤で聴き比べたときに、より落差がある(キレイになったと感じる)のはモノラルの方だった。

 ただ、「モノラルの方が良い」と感じるのは、おそらく「より生っぽい音で聴きたい」という僕のファン心理が多分に影響しているのだろう。厳密かつ冷静に聴き比べれば、ステレオがいいかモノラルがいいかは、アルバム・曲によるんじゃないだろうか。たとえば『Sgt. Pepper〜』から『ホワイト・アルバム』にかけての中期〜後期のアルバムはモノラルがいいし、反対に『HELP!』『RUBBER SOUL』にはステレオ映えする曲が多いと思った。また初期4枚は、やはり初のステレオ化というショックがあるので、ついついモノラルよりもステレオで聴きたくなる。コーラスワークなのかライヴ感なのか、その曲をどう聴きたいのかという各自が求める理想の音像(なんだかすごい話になってきた)によって、ステレオとモノラルどちらを選ぶかは異なるだろう。

 ステレオ・リマスター盤とモノラル・リマスター盤、両者の違いは自動車のオートマとマニュアルの違いに似ているように思う。一つひとつの音をわかりやすく区別し丁寧に配置したステレオ盤は、車で言うところのオートマ車である。手軽で実用的な反面、あっさりしていて時に物足りない。一方のモノラル盤はマニュアル車。ある程度の慣れが必要になるものの、両手両足をフルに使った運転には車を操ることの楽しさがある。だが、その楽しさもオートマを知っていればこそで、マニュアルしか知らなければただ煩雑に感じるだけだろう。モノラル盤の“味”も(少なくとも僕は)、ステレオ・リマスター盤を聴き込んでいたからこそ感じられたものなんだろうなあとは思うのである。

 つまりはステレオ・ボックスもモノラル・ボックスも両方持っているのが理想的なのであるという、う〜んなんだかあまり面白くない結論になってしまった。しかしそもそもの、そして最大の問題は両ボックス合わせて70,000円というコストである。高い!


聴き比べてみてください。どちらが好きですか?(ヘッドホンやイヤホンで聴くと違いがよくわかります)

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