bridge over





40年経った今もなお
語られないエンディング


『明日に架ける橋』はサイモン&ガーファンクルにとって5枚目の、そして最後のアルバムである。

数限りないアーティストによってカバーされた超メジャーな表題曲のほか、
本作には<コンドルは飛んでいく><セシリア><ニューヨークの少年>
そして不朽の名曲<ボクサー>など、
「サイモン&ガーファンクル」というアーティストのイメージを
今日に至るまで刻印し続けている有名曲が多く収録されている。

特に<ボクサー>は、僕自身がサイモン&ガーファンクルにのめり込むきっかけとなった曲なので、
個人的にとても思い入れが深い。
あのイントロのアルペジオが聴こえ、二人が「I’m just a poor boy・・・」と歌い始めると、
たちまち僕の網膜には重い雲がたれこめた空に裸の街路樹、みぞれ混じりの雨、
真冬の街の景色が浮かび、なんだか涙が出そうになる。
まるで一編の詩、一幅の風景画のようなこの曲は、
10代の終わりから20歳頃にかけての僕にとって、大事な“テーマ曲”だった。

そんな、名曲揃いの文句無しの名盤『明日に架ける橋』であるが、
サイモン&ガーファンクルという枠の中で言えば、
すなわちデビューアルバム『水曜の朝、午前3時』から4枚目『ブックエンド』までの流れから見れば、
異色な印象を受ける作品である。

それは、このアルバムのオープニングに顕著だ。
1曲目<明日に架ける橋>はピアノの伴奏のみで展開され、
3コーラス目からオーケストラが入って壮大なクライマックスを見せる。
アルバムの幕開けを飾る曲にギターがまったく使われないのは、
これまでの彼らの作風からすれば画期的なことだ。

次の2曲目はフォルクローレの古典<コンドルは飛んでいく>、
そしてサンバやボサノヴァ的なノリの<セシリア>と、
冒頭3曲は前作までの彼らからすればどれも“らしくない”曲ばかりである。
その分、<アイ・アム・ア・ロック>『サウンド・オブ・サイレンス』収録)を髣髴とさせる
4曲目<キープ・ザ・カスタマー・サティスファイド>が妙に懐かしく、
ここに至ってようやく腰を落ち着けられた気分になる。

<明日に架ける橋>のような、静かに始まり、途中でストリングスが合流し、
ラストはダイナミックに展開するという手法は、前述の<ボクサー>でも用いられており、
初期の頃のようないわゆるフォーク・デュオという範疇には収まらない音楽的変化が
本作には随所に見られる。
アルバム終盤に、彼らのルーツであるエヴァリー・ブラザーズのカバー曲<バイ・バイ・ラヴ>の、
それもライヴ・バージョンが収録されてるのは、新たなステージに進んだ者が敢えて示した矜持と見るべきなのかもしれない。

このように『明日に架ける橋』は、『ブックエンド』以前とは一線を画すアルバムであり、
もしこの後も彼らの活動が続いていたらどんな音楽が作られたのだろうという“if”を夢想させる作品である。
彼らのデビューアルバム『水曜の朝、午前3時』のリリースが1964年。
そして『明日に架ける橋』がリリースされたのが1970年。
つまり、活動休止後、彼らの活動期間に比して実にその6倍近い時間が経っている。
にもかかわらず、彼らの残したインパクトというものは未だに強烈だ。
活動を休止してからも彼らは何度か再結成ツアー(つい昨年も来日しましたね)を行っているが、
それが毎回概ね好意的に迎えられているのは、最後のアルバム『明日に架ける橋』において
永久に語られることのないエンディング」を残したからではないだろうか。

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今年、僕が所属する劇団theatre project BRIDGEは結成10周年を迎えます。

僕らはいつも劇場で、開演前と終演後、客席に音楽を流しています。
曲目は芝居の内容に応じて毎公演異なります。
(例えば前回『七人のロッカー』では、開演前に『アビィ・ロード』を流しました)。
ただし、2000年の旗揚げ公演から、2006年の第8回公演『Lucky Bang Horror』までは、
1曲だけ必ず流す曲がありました。
その曲を流す箇所も決まっていました。
開演直前の1曲と、終演直後の1曲です。
つまり、芝居本編はその曲に挟まれた形で上演されていました。
実はそれが<明日に架ける橋>でした。

この曲を選んだ理由は恥ずかしいくらいに単純で、タイトルに「BRIDGE」が入っているから、でした。
今から10年前の蒸し暑い夏の夜、僕の家にメンバー数人が集まって、
劇団名が「theatre project BRIDGE」に決まった時のことでした。
ちょうどラジカセにサイモン&ガーファンクルのCDが入っていたのを見つけた僕が、
「じゃあうちらのテーマ曲は<明日に架ける橋>でいこう」と言いました。
以来7年間(奇しくもサイモン&ガーファンクルの活動期間と同じ時間!)、
<明日に架ける橋>は劇場に流れ続けました。

その後、次第に芝居の内容と<明日に架ける橋>の壮大なテンションとの間にズレを感じるようになり、
第9回公演『クワイエットライフ』からは使わなくなりました。
お客さんのなかに、かつて<明日に架ける橋>が客席に流れていたことを覚えている方はいないでしょう。
テーマ曲といっても、それは所詮メンバーだけの内輪ネタでした。

しかし、未だにこの曲を聴くと、誰もいない客席やロビーのざわめきなど、
終演後の劇場が瞼の裏に浮かびます。
劇団の活動のなかでいつか見た光景、誰かに言われた一言、そのときの気持ちを思い出します。
他の劇中BGMを聴いても何も感じないのに、<明日に架ける橋>を聴くときだけは、
妙に感傷的な気分になるのです。
10年前にその場のノリで選んだこの曲は今、本当に内輪ネタの、そして本物のテーマ曲になりました。










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