explorer





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『Explorer』


2010年は劇団の結成10周年だったので、いつになく「続ける」ということを考えた一年だった。
作品を作り続けること。
人間関係を抱え続けること。
続けるということは、『続けてもいいのかな』という疑問を、絶えず自分自身に問いかけ続けることだ
―あるベテランのバンドマンがインタビューでそう語っていた。

方向性を迷ったり、モチベーションが低下したり、自分の才能に失望したり、
「物を作る」という道にはいくつもの起伏と曲がり角がある。
歩けば歩くほど、道は入り組んでいる。
もちろん、手ごたえを得たり、評価されたり、嬉しいこともたくさんある。
だがそういった出来事が行く先を正しく指し示してくれるとは限らない。
良い作品を作っても、それは次の作品の質を保証してはくれないのだ。
結局、作品を面白くできるのは過去の遺産ではなく、現在の自分の努力しかない。

そして、劇団やバンドといった集団での創作活動の場合、
さらに「人間関係」という全く別のタイプの命題がついて回る。
メンバー間のモチベーションが一致しないこともあるし、続けるうちに目指す方向がズレてくることもある。
途中で誰かが脱落することもあるかもしれない。
「最初は仲が良かったのに、次第に関係が冷え切って・・・」というような、
単純な(しかしシビアな)ケースだってある。

活動主体が個人であれば(小説家や写真家、画家、あるいはソロ歌手)、
創作にまつわる問題は基本的には全てその人の中で自己完結できる。
ダメなら本人が頑張ればいいだけの話だし、休むのも辞めるのも本人の責任だけで済む。
だが集団はそうはいかない。

そもそもクリエイティビティとは本質的にとてもパーソナルなものだから、
それを他人と一緒にやるという行為にはハナから無理があるのだ・・・
と言うとミもフタもないけれど、とにかく集団で創作活動を続けるということは、
絶え間ない緊張感を乗り越え続けていくことなのだ。
冒頭述べたバンドマンの言葉には、創作者として、ある集団の一員として、
ひたすら己と向き合ってきた者の苦渋が滲んでいる。

ところで、作品を作り続ける上で難しい問題の一つが「変わること」と「変わらないこと」である。
「進化」と「個性」と言い換えてもいい。
これまでと路線を変えたり、制作環境を大きく変えてみたり、変化を求めるチャレンジ精神は、
観客に飽きられないため、何より作り手自身が飽きないために必要なことだ。
だが同時に、いかに変化を起こそうが、その中心に頑としてブレない自分自身、
つまり個性を残したいと望むのも、作り手としては正直な思いだろう。
長く創作活動を続けるためには、反発し合うこの二つの思考をうまくなだめ、統御していかなくてはならない。

「変化とは、作者の自然な気持ちの移り変わりによって起こらなければならず、
『変えよう』と思って起こす作為的な変化は『変化』とは言えない。
それに、個性というものは自覚的に出したりひっこめたりできるものではなく、
それを意識している時点で『個性』とは呼べない」


そういう意見もあるだろう。確かに正論だ。
その自然体かつ無意識の境地に至ることができるなら、それがもちろん理想である。
でも・・・実際には理屈通りにはうまくいかないものである。集団作業ならなおのこと。
キャリアを積んだバンドでも「結局デビューアルバムが一番良い」と言われてしまう皮肉なケースは
現実として多く存在するのである。



昨年リリースされた新譜の中で、僕が特に印象的だったのはヌードルス『Explorer』である。
ヌードルスは2011年でキャリア20年にもなるベテランバンド。
以前紹介した『METROPOLIS』をはじめ、
これまでにもかっこいいアルバムをたくさん届けてきてくれた。

だが今回の『Explorer』は別格だ。
曲がいい、音もすごくいい・・・まあそういうことなのだが、今回はなんだろう、いつになく“熱い”。
若さがたぎっていて粗く、ドライブ感がものすごい。
ヌードルスというと、オルタナのひねりとガールズバンドとしての可愛らしさが組み合わさった
ちょっと変わった感じ」がウリで、ロックンロール的なものをそこまで期待するようなバンドではなかったはずだ。
なのに、である。

音楽性が変わったわけではない。
これまで築き上げてきたプロダクションがあくまでベースで、その上に熱さやドライブ感が乗っかっただけ。
結果、ベテランとしての成熟さと新人バンドのような粗さを併せ持った、聴き応えのある一枚に仕上がっている。
こういうアルバムを19年目で作ってしまうところがすごい。
19年というタイミングとこの内容で、『Explorer』というタイトル。かっこいい。

長く続けていれば当然それだけ知識も増えるし、技術も高くなる。
しかしヌードルスはずっと技巧的なものを避けてきたようなところがある。
感覚だけを頼りにしながら、それでいて自己模倣に陥ることなく、
こうして「変わる」と「変わらない」を同居させた作品を作ったヌードルスに、僕は去年ものすごく勇気をもらった。
劇団の10周年記念公演『バースデー』のOPにかかった曲は、このアルバムの8曲目<Galaxy Halo>である。








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