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THE STROKES 『ANGLES』

米ロックバンド・ストロークスが5年ぶりにリリースしたアルバム『ANGLES』
3枚目『FIRST IMPRESSIONS OF EARTH』をリリース以降、
メンバーのソロ活動が活発になり、「バンドは解散しちゃうんじゃないか?」という不安を抱いたのですが、
なんとか帰ってきてくれました。

以前、1枚目『IS THIS IT』や2枚目『ROOM ON FIRE』を紹介したときにも書きましたが、
僕はこのバンドのことが大好きで、曲も音も何もかもが不思議なくらいバチッとフィットします。

しかし、そんな僕からしても、今回のアルバムは首をかしげざるをえませんでした。
これまでのようなドライなガレージサウンドは鳴りを潜め、代わりに打ち込みやシンセが入ってきて、
全体的に80年代ポップを髣髴とさせるアルバムに仕上がっているのです。
ワム!カルチャー・クラブみたいな感じ。

もちろん、ストロークスらしいリズムは健在だし、
相変わらずデュアル・ギターの絡みはゾクゾクするものがあります。
しかし、このアルバムにはかつてのような中毒性はありません
ファンのブログなどを見てみても、やはり同じ感想を抱いている人は多いようで、
これはダメ!」「5年もかけてコレか?」などなど、かなり厳しい意見が出てきています。

思い起こせば、一昨年にリリースされた、ジュリアン・カサブランカス(Vo)のソロアルバムが、
まさにこういう80年代ディスコ風の音に傾倒していました。
バンドのリーダーはジュリアンですから、あのソロアルバムの流れからすると、
今回の4枚目がこういう仕上がりになったのも、ある意味では自然なことだったのかもしれません。
でも、他のメンバーはどう思っているのでしょうか。
メンバーの中で、最もストロークスの音に近いソロアルバムを作っていた、
アルバート・ハモンド・Jr(Gt)などは、けっこう苦々しく思ってたりするんじゃないでしょうか。

ストロークスはデビューして今年でもう10年になりますが、実はその半分はソロ活動期なんですね。
特に今回のアルバムが出るまでは、前記のように5年も空いています。
長く離れている間に失われた集団としての求心力が、まだ取り戻せずにいるのかもしれません。

今回のアルバムで、ファンの振るい分けが進んでしまうんじゃないでしょうか。
「裏切られた」と見限ってしまう人と、「でもやっぱり好き」とへこたれない(?)人。
僕は後者です。それでもストロークスが好き!

先週のNHK『THE SONGWRITERS』で、ゲストのトータス松本が、
こんなことを語っていました。
作品を作るエネルギーというのは、『自分のことがわからない』という感覚だ。
わからないからこそ、知りたい。知るために僕は曲を作る

作品はその時その時の、作者自身のドキュメンタリーです。
つまり、常に変わり続けるし、当然ながらうまく自分自身とコミットできず失敗することもある。
だとするならば、受け手(ファン)は作品の表面的な出来不出来に過敏にならず、
「作者は今何を考えているのか」「何をしようとしているのか」について、
受け手自身も想像力を働かせるべきだと思います。
「働かせるべき」というか、そっちの方が間違いなく楽しい。
作品を瞬間的に消費するのではなく、作品を通じて「作者」という人間と付き合っていくことこそが、
僕はアートの醍醐味だろうと思います。

確かに今回のアルバムには僕も驚きましたが、
長い目で見たらこれがストロークスにとっての大きな転換点になるかもしれないし、
本当に彼らのことが好きだからこそ、そこまで深刻なショックを受けてはいません。
本にしおりを挟むように、次に紡がれる物語に期待したいと思います。
・・・でもまた5年とか空いたらイヤだなあ・・・。

本アルバムのリードトラック<UNDER COVER OF DARKNESS>。
この2本のギターの絡み方はまさに“ストロークス節”です。


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