Collapse_Into_Now15570

R.E.M.
『Collapse Into Now』


2か月ぶりの更新になっちゃいました。
この2か月の間に、音楽に関するいろんなニュースがありました。
ビーチボーイズ『スマイル』の正規音源化。
そしてストーン・ローゼズのまさかの再結成。
そして・・・R.E.M.の解散。

ウソでしょう?」というのが最初の感想でした。
デビューから30年、彼らは常に音楽的野心を失わず、
チャレンジングで良質な音楽をずっと作り続けてきました。
メンバー同士の仲の良さも有名でしたし、僕の中では「世界で最も解散しなさそうなバンド」でした。
なのに・・・です。

バンドからの公式コメントを読んでも、解散の真相はわかりません。
ただ、コメントを読む限りは、少なくとも解散はネガティブなものではなく、
3人ともこれまで作ってきた音楽やバンドそのものを今も変わらず愛していることが窺えました。
きっと僕らからは見えないところに、何かしら期するものがあったのでしょう(としか言えません)。
一人のファンとしては粛々と彼らの決断を受け入れるしかないですね。

僕がR.E.M.を聞き始めたのは高校生の時でした。
確か最初にベストを買いました。
当時僕がよく聞いていたオアシスとか、そういう派手でポップな音楽からすると、
R.E.M.は明らかに異質で、どこか陰のある、当時の僕からすれば「大人のバンド」というような印象でした。
でもメロディがすごくキレイで、マイケル・スタイプの声もすごく良くて、少しだけ背伸びしながら聞き続けました。
そして気付けば、僕の中で最も大切なバンドになっていました。

解散のニュースを聞いて、持っていなかったアルバムを買いに行きました(2枚目のアルバム『reckoning』)。
そしたら、たまたまレジの店員さんもR.E.M.が好きな人で「解散しちゃいましたね」と声をかけられました。
でも「どのアルバムが一番好きか」「ライヴには行ったことがあるか」などなど、他愛のない話しかできず、
なぜ自分はR.E.M.が好きなのか」「どれくらい好きなのか」といった深いところまでは話ができませんでした。

僕はこれまで、R.E.M.について誰かと会話を交わした経験がほとんどありません。
それは、ファンが身近にいなかったというだけでなく、
そもそも彼らの音楽が本質的に「誰かに語る」ことに向かないからだと思います。

R.E.M.の音楽は、誰かと一緒に聞いて盛り上がるタイプのものではなく、
どちらかといえば部屋で一人、ヘッドフォンでじっくり聞きこむような、
1対1」が相応しい音楽である気がします。

部屋の中や移動中の電車の車内。
そんな、誰も知らない、誰にも見せない絶対的な孤独の時間にこそ、彼らの音楽は深く響きます。
そのような、孤独と密接にコミットした音楽について言葉でその魅力を伝えようとしたり、
ましてや誰かと共有したりすることは、本質的に難しいのです。
でも、だからこそ僕は、彼らの音楽をずっと聞き続けてきたのだと思います。

バンドにとって、結果的に最後のアルバムになってしまったのが、
今年3月にリリースされた『Collapse Into Now』
「ラストアルバム」という文脈を無視したとしても、ものすごくいいアルバムです。

<DISCOVERER><ALL THE BEST>のようなR.E.M.にしては珍しいスタジアムバンド的な曲もあれば、
<IT HAPPENED TODAY><OH MY HEART>のように、
『Automatic For The People』を髣髴とさせるアコースティックな曲もあり、
全体の振幅はこれまでの作品と比べてもかなり広めです。
しかし、全ての曲が本当に美しく、改めて彼らが圧倒的なバンドであったことを実感させるアルバムです。

アルバムの中盤に<WALK IT BACK>という曲が収録されています。その中に
Time
reverse and rewind,
erase and revise,
and try to start again

という歌詞があります。
時間を巻き戻して締め直し、消して書き直し、そしてもう一度始めるんだ」という意味でしょうか。
印象的な歌詞です。この部分を聞くたびに、なんだか目頭が熱くなります。

R.E.M.のこと、大好きでした。







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