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ハリウッドが本気で
「特撮映画」を作ってきた!


太平洋の海底に生じた異次元の裂け目(=リム)から続々と出現する巨大怪獣。
世界各地の都市を蹂躙され滅亡の危機に瀕した人類は、
対怪獣用の最終兵器として、巨大ロボット「イェーガー」を建造する――。

ああ、もうあらすじを書いているだけで興奮が蘇ります。
「総製作費200億円」?「芦田愛菜ちゃんハリウッドデビュー」?
いやいや、そんなところだけがこの映画の素晴らしさじゃありません。

映画『パシフィック・リム』。
それは、巨大ロボットと大怪獣が2時間半ひたすら戦いまくるという、
今日び絶滅しかかっていた「ザ・特撮映画」なのです。
ギレルモ・デル・トロ監督の、東宝特撮やウルトラマン、日本のアニメなどへの愛に溢れた、
感動的で胸熱な超・王道特撮映画なのです!

じゃあ具体的にどこがそんなに素晴らしいのか。
以下に列挙します。



その1:巨大ロボット「イェーガー」がかっこいい!

主役メカ「イェーガー」のデザインが素晴らしいです。
あの重量感溢れる逆三角形フォルム。
そして鈍色に光るボディの鋼鉄感と、関節周りのむき出し感。
最高に武骨です。
流線型の未来的デザインではなく、鉄人28号やマジンガーZのようなずんぐりデザインにしたあたりに、
「そう!そういうこと!」みたいな興奮を覚えます。

ちなみに僕はロシアのイェーガー「チェルノ・アルファ」が一番好き。
あの顔周りのデザインがいいですね(見ようによってはカエルにも見えます)。
「旧型で動きが重い」という設定もたまりません。
ギレルモ監督曰く、「チェルノ・アルファ」のデザインはザクをモデルにしたとのこと。
くぅぅ〜!受け継がれる魂!!



その2:「怪獣」という設定が素晴らしすぎる!

怪獣ですよ?怪獣!
エイリアンとかサイボーグとかじゃなくて「怪獣」!

多くの作品において設定先行型、リアリティ重視型の敵キャラが主流となった昨今、
「怪獣」はもはや時代的な役割を終えた感がありました。

しかし、この映画を見た人は気付いたはずです。
ただ巨大であること。ただ凶暴であること。そしてそれが「生き物」であること。
このシンプルさがいかにスカッと気持ちいいかということに。
(僕なんかは、本当はもっと怪獣の都市破壊シーンを見たかったです)
決してトレンディではなかった「怪獣」という存在に再び息を吹き込んだという点が、
僕は『パシフィック・リム』の最大の功績なのではないかと思います。

しかも素晴らしいことに、劇中では怪獣のことをみんな「カイジュウ」と呼ぶんですね!
「怪獣」がついに国際公用語に!
これは本当に感涙ものです。



その3:戦闘シーンが「プロレス」!

イェーガーと怪獣との戦いは徹頭徹尾、肉弾戦です。
飛び道具なんて姑息な手段は(ほとんど)ありません。

殴る!
引き裂く!
(怪獣は)噛む!
港で拾ったタンカーを棒代わりにぶっ叩く!

かつてのゴジラやウルトラマンの戦いがそうであったように、
巨大生物同士の戦いはプロレスでなくちゃ面白くありません。
平成ゴジラ(特に『vsメカゴジラ』以降)が非常につまらかったのは、一つには光線を多用しすぎたからです。
やはり巨大なモノとモノがくんずほごれつしながら道路やビルや車がどんどんめちゃくちゃになっていくというのが、
「特撮映画」の重要な醍醐味です。
そこを押さえている『パシフィック・リム』は素晴らしい。

また、各イェーガーの「必殺技」もたまりませんね。
主役イェーガー「ジプシー・デンジャー」のキメ技の一つ「エルボーロケット」
(肘に装着したロケットを噴射させ、パンチの威力を倍加させる!)なんて、
見ていて「うおおおっ!」と叫びそうになりました。
僕が一番好きなのは、香港のイェーガー「クリムゾン・タイフーン」の「雷雲旋風脚」!
4本腕に装着したドリル的なものを振り回すという「天津飯+ゲッターロボ」みたいな最強の技!
そしてナイス・ネーミング!



その4:「超シンプル」なストーリー!

「怪獣がいきなり現れたから、ロボット作って戦う」。

どうです、ストーリーが1行に収まります!
バカにしているわけじゃありません。
特撮映画はこれくらいシンプルじゃないといけないんです。
あれこれと余計なテーマを盛り込んだ(また引き合いに出しますが)平成ゴジラがどうなったか。
子どもはワケが分からない、大人には物足りないという、
結局誰も満足しない映画になってシリーズは終わったのです。

まあ、『パシフィック・リム』も一応ハリウッドですから、
登場人物のトラウマやそこからの再生、お決まりのロマンスなんていう要素も入ってますが、
あれは多分、ギレルモ監督が映画会社へのエクスキューズとしてねじ込んだに過ぎません。
(ラストにヒーローとヒロインがキスをしなかったという点は評価すべきです)
怪獣がなぜ攻めてくるのかという謎についても説明はありますが、あれも基本的にはエクスキューズ。

この映画の本質は(何度も言うように)かっこいい巨大ロボットと「怪獣」が、
画面狭しと戦いまくるというその一点に尽きるわけです。

リアリティ?背景?設定?
そんなしゃらくさいものには目もくれず、
ただひたすらに、映画の原点である「ワクワク」を追求した作品。
それが『パシフィック・リム』なのです。




正直に言えば、悔しさもあります。
だって、怪獣ものや巨大ロボットもの、特撮ものは、
東宝をはじめ、日本の専売特許だったのです。
いえ、それを奪われたから悔しいというのではありません。
過去の遺物となった特撮映画について、
自身の手で作ってしまおうと考えるほど「特撮愛」に満ちた人間が、
日本ではなく海外から出てしまったということに、情けなさを感じるのです。

ただ、『パシフィック・リム』は同時に、日本にもチャンスがあることを示唆してもいます。
特撮映画を撮る場合、映像技術が(つまりはお金が)何よりも重要だと考えられがちですが、
それ以上に「センス」が必要なのだと教えているからです。
願わくば、特撮映画を撮りたいという才能ある若手にポンッと任せられちゃうような、
そんな(観客含め)環境が、日本映画に培われるといいなと思います。

『パシフィック・リム』予告編





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