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特撮映画の「魂」は
アニメに受け継がれた


実写化が決まりそれがYahoo!のトップニュースを飾るなど、
最初のOVA版が制作されてから20年以上経てもなお根強い人気を誇る『機動警察パトレイバー』。
OVA、TV、映画と、メディアを転々としながら拡大してきた同シリーズの、
現時点における最新の公式作品が、2002年に公開された劇場版『WXIII』です。

もっとも、「パトレイバー」という名を冠しているとはいえ、
この作品で肝心のレイバーが登場するのはクライマックスのみ。
それどころか、野明や遊馬ら特車二課の面子も、
ほんの少ししか出番がありません。
初期OVAや『THE MOVIE』の雰囲気を期待していたシリーズファンは、
さぞかしがっかりしたと思います。

しかし、この映画には「パトレイバー」シリーズの一作品という位置づけの他に、
もう一つの(そしてさらに重要な)側面があります。
それは、この映画が「怪獣映画」である、という点です。

この映画でレイバーが戦うのは、篠原重工でもシャフト・エンタープライズでもありません。
南極に墜落した隕石に付着していた細胞を培養して生まれた、「怪獣」です。

冒頭に起きる東京湾での飛行機の墜落事故。
それからほどなくして湾岸地域に相次ぐ、不可解な殺人事件。
やがて姿を現した、巨大怪獣。
主人公が偶然出会う、謎めいた科学者。
裏で暗躍する、バイオ企業と軍。
そしてクライマックスの、怪獣の誘導作戦と最終決戦。

物語を構成する要素。それらの組み合わさり方と展開の仕方。
いずれもが、かつての特撮映画やSFアニメが培ってきた「型」と呼ぶべきものです。
冒頭から何かがひたひたと忍び寄る怪しさや、
その「何か」がなかなか姿を現さないという緊張感。
ほとんどのシーンが夜か曇りか雨という、
暗い雰囲気で進行するあたりもたまりません。

この映画を見て感じるのは、
まず純粋に、優れた怪獣映画・特撮映画を見たという喜び。
そして、かつての怪獣映画・特撮映画の(大げさに言えば)魂は、
実写映画ではなく、アニメに継承されていたのかという驚きです。

おそらく、映画のメインタッフを務めた年齢層(40代中盤?)は、
世代的に、子供の頃にウルトラマンやゴジラで特撮体験をしたクリエイターが多いのでしょう。
また、優れたクリエイターは、いつの時代も尖鋭的なメディアに集まるという「基本力学」を考えれば、
優秀なクリエイター達の才能が、“オワコン”となった実写特撮ではなく、
アニメという場所で花開いたのは当然と言えるかもしれません。
(今だったらどういう分野に集まるんだろう?ネット動画とかなのかな?)
ただ、「アニメで特撮を描く」というのは、どこか倒錯している感じも否定できず、
一抹のさみしさを覚えないではありません。

アニメも特撮同様に、かつてはロボットや宇宙や未来世界といった、
現実にはフィルムにおさめられない世界を専門に描く分野でした。
ところが近年、以前もこのブログで紹介した『千年女優』や原恵一監督の『カラフル』のように、
実写映画が担っていたような物語にまで進出し始めているアニメ作品が出始めています。
この貪欲な吸収力を見れば、アニメは今後も自らの可能性を広げ続ける気がします。

それに対して実写特撮は、明らかに先細りです。
日本の本格的な特撮怪獣映画は樋口真嗣監督の「平成ガメラシリーズ」を最後に、
今日まで作られてはいません(21世紀のゴジラシリーズはあまりにひどい出来なのでカウントしません)。
唯一元気なのはライダーや戦隊シリーズですが、
近年のヒーローものはターゲットが低年齢化しているため、、
最初期のウルトラマンのように「倒される怪獣の悲哀」などの渋い物語を描く余裕はなく、
また、制作会社ではなくスポンサーの玩具会社の力が大きいため、
「クリスマス商戦に向けて秋に変身合体する新しいロボットを登場させる」など、
かなり生臭い形で作品作りが行われているようです。

まあこういうことは時代の変化なので、良いも悪いもないんですが、
ただ個人的には、このまま放っておくと特撮が
単に「小さな子供が見るもの」という矮小なジャンルに貶められそうで、やきもきします。
(ヒーローものを見ていて辛いのは、物語がもはや子供に媚びているように見えるからです)
先日『パシフィック・リム』を見たときに何に感動したかって、
客席の年齢層の幅広さにでした。
字幕だったので子供は少なかったですが、
おじさんおばさんの夫婦とか、若いカップルなんかもいました。
(3Dの吹替版は子供たちが声を上げてイェーガーを応援しているそうです)
そういうのを見ると、特撮映画が子供だけじゃなくて大人にとっても、
エンターテインメントとして認知されてほしいと思わずにはいられません。

『パシフィック・リム』、『キングコング対ゴジラ』そして『WXIII』と、
特撮映画についてあれこれ書いてきましたが、
正直に言えば、僕が求めているセンスというものが、
かつての東宝特撮のムードを良しとする、多分に懐古趣味的なものであることは自覚しています。
仮にそういうムードをどっさり盛り込んだ特撮映画が制作されても、
それは「趣味映画」の範疇を超えるものではありません。

ただ、(これも何度も書いているように)なぜ『パシフィック・リム』や『キングコング対ゴジラ』が面白いかといえば、
「でっかいものとでっかいものが戦う」というシンプルな物語が、
僕らの素朴な好奇心を刺激するからです。
設定なんかは後付けでかまわなくて、むしろスキがあればあるほど楽しめるとさえ言えます。
『WXIII』にしても、ドラマのトーンはいたってシリアスですが、
設定の根本は、「宇宙の細胞によって培養された怪獣が東京湾で育つ」という、
突っ込みどころのある、ぶっ飛んだものです。
しかし、そのスキがあるからこそ、面白い。

観客としてのこういう素朴な心理というのは、
時代が移ってもそうそう変わるものではないと思います。
だから、特撮はもう一度、子供に媚びるでもなく、
あるいはゴチャゴチャと複雑にして大人層におもねるでもなく、
ましてや「映像ショー」という虚しい理想を追求するでもなく、
素朴なファンタジーとして開き直った作品づくりをしてほしいなあと思います。


<予告編>








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