2014WilkoJohnson_GoingBackHome_280214

「死に向かう人」が
鳴らす音楽を聴いた日


1970年代中盤から後半にかけて、イギリスを中心に「パブロック」と呼ばれる音楽が現れました。
3コードブルースを基調に、性急なリズムやパワフルなギターといった要素が加わった
ハイブリッドな形態のパブロックは、
60年代のロックンロールと、70年代終盤に登場するパンクロックとの「橋渡し」の役割を果たしました。
そんなパブロックを代表するアイコンといえば、イギリスのエセックス出身の4人組、ドクター・フィールグッド
そして、このバンドの初代ギタリスト、ウィルコ・ジョンソンです。

ウィルコはピックを使わずに爪(正確には甘皮のあたり?)でギターを弾くことで知られ、
激しくも柔らかい独特のカッティング奏法は、後進に大きな影響を与えました。
日本ではミッシェル・ガン・エレファントの故アベフトシがウィルコフォロワーとして有名です。
ライトな音楽ファンにはそこまで知られていませんが、
間違いなく、ロックの歴史に名を残すギタリストの一人です。

ちなみにウィルコ・ジョンソンは大の親日家としても知られています。
何度も日本にやってきてはライブを披露しており、
中でも京都の老舗ライブハウス「磔磔」(たくたく)は、
来日した際には必ずといっていいほどステージに上がる、日本におけるウィルコのホームグラウンドです。

そんなウィルコは昨年1月、末期のすい臓がんに侵されていることを告白しました。
医者から告げられた余命はわずか半年。つまり2014年は迎えられないだろうと宣告されたのです。
病気を公表した直後の昨年1月にウィルコは来日。
東京レッドシューズと京都磔磔で開かれた「さよならライブ」には、
鮎川誠浅井健一チバユウスケらが駆けつけ、すさまじい盛り上がりを見せました。


……で、話はここからなのです。
昨年1月に余命半年と言われたウィルコですが、
なんと2014年3月現在、バリバリ元気に生きています
それどころか、昨年ロンドンでラストライブを行った後に
引退するつもりだったが、ステージに立たないとおかしくなる」と言って、ライブ活動を再開。
結局昨年は7月のFUJI ROCKでも再来日を果たしました。

さらに驚きは続きます。
なんとウィルコは新作のアルバム作りをスタート。
旧友のロジャー・ダルトリー(ザ・フー)をゲストに招き、
2人の連名で『GOING BACK HOME』というタイトルの作品を完成させました。
輸入盤は昨日3/26に、国内盤は来週4/2(水)に発売されます。
そして、ウィルコは今年の3月には再び単独来日。
東京・大阪・名古屋・京都という4都市を回るツアーを行いました。

あの、末期がん、ですよね?

と思わず聞いてみたくなるくらいに精力的な活動を続けるウィルコ。
「ライブをやらないと調子が悪くなる」と語ったそうですが、
化学療法は拒否したといいますから、
彼の中のがん細胞を抑えているのは、もしかしたら本当にロックなのかもしれません。
医療関係者は本気で彼に注目した方がよいのでは??

実は、今年3月の来日の際に、僕はウィルコのステージを見に行きました。
顔はちょっと痩せたかなという印象でしたが、演奏は本当に素晴らしく、
<She Does It Right>を含むフィールグッドの曲をたくさん弾いてくれました。
年齢層は高め(一番下が30代くらい)でしたが、ウィルコ愛に満ちていてすごく雰囲気の良いライブでした。

ちょうどその日は、3月11日だったんですよね。
死に向かう人が弾く音楽を、他でもないこの日に聴くということ。
もちろん単なる偶然なのですが、やはり僕はどうしても意味を探してしまいました。
多分、この日のライブはずっと覚えてるんじゃないかなあと思いました。


新作『GOING BACK HOME』より<I Keep It To Myself>


2011年のTV出演映像より<She Does It Right>







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