「仕事or趣味」という二元論は
ナンセンスなんじゃないだろうか


多くの愛読者(僕もその一人)をもつ音楽ブログ「レジーのブログ」で、
3月から『音楽で食わずに、音楽と生きる』という連載企画が始まっています。
昼間は音楽と関係のない仕事をしながら、
それ以外の時間で音楽ライターやバンドスタッフとして活動をしている人たちへのインタビュー企画です。
(これまでのところ、前口上1回、本編3回がアップされています)

前口上
case1 会社員×音楽ライター
case2 会社員×バンドスタッフ
case3 会社員×アーティストメディア編集者

記事を読むと音楽業界の(というほど僕は詳しくないですが)潮流の変化みたいなものを感じます。
きっと、かつてはレコード会社や有名雑誌といった、
いわゆる「業界の人たち」が強かったんだと思うのですが、
最近はそうした既存の枠に捉われない働き方や関わり方も生まれつつあるんだなあと。

ただ、僕がこの『音楽で食わずに、音楽と生きる』という企画で一番刺激を受けたのは、
ここに登場する人たちの「生き方」そのものです。

会社員として勤めながら、別の時間で違う仕事をする。
いわゆる「パラレルキャリア」の一つではあるのですが、この企画に登場する人たちは、
副業として稼いでやろう!とか、あわよくばこれを本職にしてやろう!というような、
ギラギラした目的で(別にそれが悪いってわけじゃないけど)二足のわらじをはいているわけではありません。
「音楽が好きだから」「楽しいから」というシンプルな「思い」によって、
彼らは自分独自の音楽との関わり方を見つけ出したのだと思います。

「音楽と関わる」というと、大抵、「音楽を仕事にする(音楽で食う)」こととイコールにされがちです。
(これ、映画とか演劇とかアート系は大体置き換え可能です)
もちろんそれは間違いではないんだけど、正確に言うなら「仕事にする」というのはしょせん手段であって、
「音楽と関わる」ということの本質は、その人の「思い」であるはずです。
好きな音楽と出会えた喜びであったり、音楽を通した人とのつながりであったり。
もちろん、ミュージシャンやレコード会社の社員や専業の音楽ライターになれれば理想なんでしょうが、
現実には誰もがそれをできるってわけじゃありません。
僕が言いたいのは、じゃあそうした「仕事」という手段を手にすることができないからといって、
「音楽と関わる」という思いまでを捨てる必要はないだろうってことです。

こういうのって「きれいごと」の一言で切り捨てられがちだし、
実際、何らかの事情で諦めざるを得ないケースとかいろいろあるとは思うのですが、
僕はどうしてもこの「きれいごと」(=思いが大事!)にこだわりたい。
というのは、僕自身がかつて劇団でこの問題に直面したからです。

劇団を旗揚げした当初、僕らは大学1,2年生でした。
だから、最初はひたすら芝居作りに没頭してればOKでした。
しかし、やがて大学3,4年生になると「プロを目指すのか、就職してスパッと辞めるのか」という、
おそらく全国の学生劇団が経験するであろう問題に直面することになりました。

当時、メンバーといろいろ議論をしたのですが、僕はこの問題について根本的に違和感がありました。
その頃の僕は寝ても覚めても芝居!というくらいに夢中になっていたので、
どちらかといえば「プロを目指す」派だったのですが、
しかし本心では「仕事か趣味か」とか「プロかアマか」という“括り”など、どうでもいいと思ってました。
というのは、プロを目指そうと趣味として続けようと、それはただの結果論であり、
プロだから本気でやる、趣味だから手を抜くということはないし、
プロだから楽しい、趣味だからつまらないということもないだろうと思っていたからです。
僕にとって大事なのは目の前の作品を一生懸命作ることであって、
会社員やりながらやろうが、フリーターしながらやろうが、
そんなことは大して重要じゃないというのが本音でした。
(もちろん、プロとアマの間には厳然たる違いがあることは重々承知しています。
 才能や努力の尺度としての「プロ」「アマ」というのはあるし、今はそれを棚上げして書いています)

結局、僕らが選んだのは「昼間は仕事をしながら劇団を続ける」というものでした。
この決断の背景には、「自分たちにはプロになれる才能も個性もない」という見切りがありました。
ですが、負け惜しみではなく、僕は「仕事をしながら劇団を続ける」という決断をしてよかったと思っています。
仮に理想を求めてプロを目指していたとしたら、売れないし食えないしで早晩僕らは潰れていたでしょう。
だから、昼間は会社に勤めて生活の基盤を確保した上で芝居を続けるという今のスタイルは、
「芝居を続けたい」という僕自身の希望に適っているし、
結果的にとても合理的な判断だったなあと思うのです。

ただ、前文のように、あくまで「結果的に」というエクスキューズがつきます。
「プロになるか、辞めるか」という二元論はくだらないと思っていたものの、
そのどちらでもない「仕事をしながら劇団を続ける」という選択について、
当時の僕らの身の回りにはロールモデルとなる先輩劇団がほとんどなかったので、
いざその方向へ進むのはけっこう不安がありました。
「プロになる」「辞める」以外の劇団のあり方が、当時の僕ら自身にも、正直イメージはついてませんでした。

でも、“結果的には”僕らはなんとか活動を続けて、それなりに楽しくやれている。
ちょっとイヤらしい言い方になってしまいますが、
同郷で同期の学生劇団には僕ら以上にプロを目指して活動をしている劇団がたくさんいましたが、
僕の知る限り、今でも残っているのは僕らだけです。
「どうだ、すごいだろう」と言いたいのではなく、
いち早く見切りをつけた僕らの方が結果的には長く続いているというのが、
なんというか、「『将来を決める』って難しいなあ」というように思うのです。

僕らは、当時直面していた「プロを目指すのか、就職してスパッと辞めるのか」という二元論の、
そのどちらでもない道を選びました。
多分、連載企画『音楽で食わずに、音楽と生きる』に登場した人たちも、
「仕事or趣味」というような、オール・オア・ナッシング的マインドに捉われなかったんだろうと思います。
中には、かつて専業で音楽関連の仕事に就くことを目指していた人もいるかもしれません。
もちろん、専業で音楽に関われることは素晴らしいことだけれど、
そこにこだわらなくても、兼業バンドスタッフやライター、あるいは音楽ファンが集うブロガーとか、
いろんな道があるんですよね。
そういう「第3の道」を行く彼らの生き方を、僕はすごくポジティブだと思うし、
人生の豊かさみたいなものを感じました。




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