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「逸脱」のない
サイケデリック・ロック


英国ミッドランド出身の4人組、テンプルズ(“The”は付きません)が、
今年2月にリリースしたデビューアルバム『サン・ストラクチャーズ』

本作を聴いたノエル・ギャラガーは、
20年前に俺がオアシスでやろうとしてできなかったサウンドだ」と語ったそうです。

<Shelter Song>


尋常じゃない褒めっぷりですが、テンプルズが素晴らしいという点については僕も100%同意。
間もなく2014年も折り返しですが、今年前半に聴いたアルバムの中では本作がNo.1です。
いえ、ひょっとしたら、1年を通してもこれ以上にインパクトのある作品には出会えないかもしれません。
とにかく、そのくらいガツンとやられました。

ちなみに、ジョニー・マーもノエルと同じようにテンプルズに惚れこみ、
マンチェスターでライブをするなら俺の家で洗濯していいよ!」と言ったとか。
マー家で洗濯”ってスゴイ(笑)。

テンプルズの音楽を表すキーワードは「サイケデリック」。
最初に聴いたときは思わず「60年代の曲なんじゃないの?」と疑ったくらい、
かつてサイケ・ロックがまとっていた、まばゆくも気だるい空気が真空パックされています。
できればCDではなくアナログレコードの音圧で聴いてみたい。そんな濃厚なサウンドです。

ただ、テンプルズの音楽は、そうしたレトロな空気を持ちながらも、
単なる懐古主義一辺倒ではない、「現代版サイケデリック」と呼ぶべき新しさも兼ね備えています。

サイケ・ロックの名盤に、ピンク・フロイド『夜明けの口笛吹き』(1967年)という作品があります。
※プログレッシブ・ロックの代名詞ともいえるフロイドですが、
 初代リーダーのシド・バレットが主導したこのデビュー盤だけはサイケアルバムとして知られています

Pink Floyd<Astronomy Domine>


ポップさや作品を覆う気だるく淫靡な空気感、さらに言えばメンバーのファッションまで、
僕は『夜明けの口笛吹き』のフロイドとテンプルズとは共通点が多いように思えるのですが、
しかし、決定的に両者が異なっている点があります。
それは、楽曲が「」になっているかどうかです。

元々サイケデリック・ミュージックは、LSDをはじめとするドラッグを体験したミュージシャンたちが、
自分の見た幻覚世界を音楽で再現しようとして生まれた、とても前衛的な音楽でした。
ある意味では「感覚」というものだけを追求する音楽であり、
そのため、メロディが溶けたり異様な和音が使われたりといった、
従来のポップソングからの「逸脱」が多く見られました。

しかしテンプルズにはそうした逸脱はありません。
むしろ、誰もが口ずさめるほどにメロディがはっきりしている。
つまり「歌」になっているのです。
これはテンプルズが、ドラッグによる混乱ではなく、
あくまで理性によって曲を作っていることを示しています。
テンプルズを「現代版サイケデリック」と呼ぶ根拠は、
彼らが(少なくとも作品上は)ドラッグという人為的な力を借りずに、
メロディとアレンジという純粋な音楽の力だけで、幻想的な世界を表現している点にあります。

見方によっては、ドラッグの影が感じられないテンプルズの音楽を、
「去勢されたサイケ」という風に捉えることもできるのかもしれません。
しかし僕は、むしろそれは「洗練」と呼ぶべきだし、
アップデートであると考えるべきなんじゃないかと思います。

デビュー盤としては申し分ないくらい、
バンドの魅力やコンセプトが感じられる作品であるだけに、
2枚目以降に彼らがどう変化するのか(あるいはしないのか)、注目したいと思います。

<Keep In The Dark>







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