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「オトコとオンナ」じゃない
男女混声ボーカル


前々回、前回と北欧ポップの話を書いてきましたが、
 #前回 Of Monsters And Men 『My Head Is An Animal』
 #前々回 Team Me 『To The Treetops』
ふと、日本で北欧ポップ的な音を鳴らすバンドはいないかなと考えたところ、
僕の知っている中で一組いました。
東京出身の5人組Czecho No Republic(チェコ・ノー・リパブリック)です。

結成は2010年で、当初は4人で活動していましたが、
2013年にメンバーチェンジがあり、現在の5人体制になりました。
『NEVERLAND』は5人になって最初のフルアルバムで、
バンドにとってはメジャーに移籍して初の音源になります。

表題曲の<NEVERLAND>

次から次へと異なる楽器の音が飛び出てくる感じや手拍子の音、
それから間奏で聞こえる「HEY!」という掛け声などは、北欧ポップの雰囲気です。

実はこのバンド、4人時代と5人時代とで大きく印象が異なります。
その理由は、5人組になる際に加入した唯一の女性メンバー、タカハシマイの存在です。
彼女はキーボードの担当なのですが、
同時にコーラス、ときにはメインボーカルも担当します。
スーパーカーのフルカワミキ的な立ち位置ですね)

それまでは武井優心(Ba)一人による男性ボーカルだったのが、
いきなり男女混声ボーカルになったわけですから、
とても大きなインパクトがある変化でした。
こういうキャリアのバンドってかなり珍しいと思うのですが、
彼らに関して言えば、この変化は非常に良い影響を生みました。

彼らは元々、優れたメロディセンスとアレンジセンスをもつバンドでしたが、
男女混声ボーカルになったことで、サウンドの色彩が何倍にも増しました。
彼らの資質に男女ボーカルというものがマッチしていたし、
さらに武井とタカハシの声の相性も良かったと思います。
何より、それまでは「インドア系サブカル男子のバンド」というような、
どちらかというとツウ好みな印象を与えるバンドだったのが、
北欧ポップ的なサウンドを体現できる「おしゃれなバンド」へと印象を大きく変えました。

4人時代の楽曲<レインボー>

非常にポップではあるのですが、いかにもインディー的な「尖り」も感じます。
どこか昔のOGRE YOU ASSHOLEみたいな雰囲気がありますね。
この曲は『NEVERLAND』でも5人で再録しています。

『NEVERLAND』2曲目に収録された<MUSIC>

タカハシのボーカルが活かされた曲の一つ。
上の<レインボー>と比べると、彼女の声が入ったことによる違いが分かると思います。
Bメロの、武井からタカハシへとボーカルが受け渡されていくあたりが素敵ですね。

音楽の歴史の中で男女デュエットというものは数限りないほどありますが、
いわゆる男女のデュエットソングとCzechoの2人が異なるのは、
前者の多くは歌い手の2人が「仮想恋人」を演じているのに対し、
後者にはそうした役割がないことです。
ある意味、単にフレーズを交代しながら歌っているだけ。
ただ、だからこそCzechoの歌には春の風のようなさやかさやゆるさがあります。
そしてそれは、Team MeやOf Monsters And Menの男女ボーカルのあり方にも通じています。

もちろん、Czecho本人たちは「北欧ポップ」を目指しているわけではないでしょう。
ただ、少なくとも日本のメジャーバンドで彼らのようなスタイルはあまり見当たらないので、
とても貴重だなあと思います。

彼らは今年の7月に2枚目のフルアルバム『MANTLE』をリリースしています。
僕はまだ一部しか聴いてないのですが、全曲が5人になってから作られた曲、
つまり武井とタカハシの混声ボーカルを前提に作られた曲ということで、
『NEVERLAND』よりもさらにスタイルが洗練されているのかもしれません。

2枚目『MANTLE』より<No Way>







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