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懐かしの「憧れ」の10代

2014年も間もなく終わり。
今年もたくさんの素敵なバンド(アーティスト)に出会えました。

あえて順位をつけるわけではないのですが、
中でもとりわけインパクトがあったのが、
HAPPYhomecomings、そしてFor Tracy Hydeの3組です。
今年の通勤中の音楽は、半分以上を彼らが占めていたんじゃなかろうか。
3組ともまだ聴ける音源がそんなに多くないから、
骨までしゃぶりつくすようにして1曲1曲を繰り返し聴きました。

For Tracy Hyde(「フォトハイ」と略すそうです)は2012年に結成された東京のバンド。
メンバーが知り合ったきっかけはtwitterで、
結成後もSoundCloudやBandcampといったネットの音楽メディアを中心に活動しているという、
なんだか自分が急におじさんになってしまったような哀しい気持ちにさせられる若いバンドです。

結成当初は夏bot(Gt)、U-1(Gt)、Mav(Ba)、まーしーさん(Dr)という
男性4人組で活動していましたが、2014年になって、
新たにボーカルとしてラブリーサマーちゃん(女性)が加入。
既にソロアーティストとしてネットで人気を広げていたラブリーサマーちゃんの参加によって、
フォトハイはにわかに「ネット発のドリームバンド」といった装いになりました。
ちなみに僕はラブリーサマーちゃんの方を先にフォローしていて、
彼女をきっかけにしてフォトハイと出会いました。

ラブリーサマーちゃん加入後最初の音源


彼らの音楽はよくシューゲイザーと評されるそうですが、
僕はどちらかというと(むしろ真逆と言ってもいい)アコースティックという第一印象をもちました。
確かにシューゲイザー的な官能的なノイジーさも感じますが、
ギターのアルペジオや、メロディと歌詞のセンチメンタルな世界観には、
良い意味で洗練されていない、レトロな雰囲気があります。

ラブリーサマーちゃんの声質も、彼らのサウンドにすごく合っていたと思います。
僕は正直に言うと、彼女のソロの曲よりも、
フォトハイのボーカルとしての彼女の歌の方が好き。
彼女の儚く消え入りそうな歌声が加わったことで、
まるで10代のような(実際ラブリーサマーちゃんはまだ10代なのですが)脆さやナイーブさ、
そして何よりもまばゆさが、フォトハイのサウンドにもたらされました。

なんなんでしょう。
彼女の声で「初めての後悔を君に捧げよう」というフレーズを耳にしたときに感じる、
この胸のヅーンとした苦しさは。
そして、前頭葉に映写される無数の「10代」のイメージは。

ワイシャツの袖の感触。
放課後のブラスバンドの音。
すれ違ったときにかすかに鼻をくすぐった、シャンプーの匂い。
なんかもうね、膝から崩れ落ちそうになります。

ただ、彼らの曲を聴いて走馬灯のように頭を駆け巡るイメージはどれも、
実際に経験した10代の風景ではなく、記憶の中で美化されている10代、
あるいは、僕が空想する「ありえたかもしれない」10代であることに気づきます。
だって、僕が女の子のシャンプーの匂いを嗅いだことがあるのは、
夢と妄想の中だけですから。

「青春」を想起させる音楽というと、以前カナダのAlvvaysを紹介しましたが、
フォトハイの面白いところは、想起されるイメージがどれもフィクショナル(虚構的)という点です。
以前ネットでギターの夏botのインタビューを読んだところ、
彼らの曲の背景となるキーワードの一つとして「アニメ」を挙げていました。
彼自身の視点ではなく、好きなアニメのシチュエーションや登場人物の視点から曲が生まれる、
というような意味のことを語っていたのです。
僕が曲を聴いてリアルな10代の記憶ではなく「空想の10代」を思い描いたのは、
ある意味では当然だったのかもしれません。

ここまで書いてきて、なんだか相対性理論に似ているなあと思いました。
彼らもやっぱり虚構性を感じさせるバンドでした。
しかし、フォトハイの描こうとしている(というか僕が感じた)フィクションは「10代」という、
相対性理論よりもある意味ではもっと生々しいもので、
だからこそ僕にとって彼らの音楽は(「リアル」ではなくても)リアリティを感じます。



※『Born To Be Breathtaken』はiTunesで販売されています。→こちら




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