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冬の朝の憂鬱さを
忘れさせておくれ


なんか……毎日寒いです。
それが冬だろ」と言われればそりゃそうなのですが、
いくら頭で分かっていても、寒いものは寒い。
こないだ、朝6時前(今の時期はまだ日も出ていない)にランニングに出たら、
あまりの寒さに速攻で気持ちがくじけて、家に引き返してそのまま風呂に飛び込みました
走ってる時間よりも湯船に浸かっている時間の方が長かった。

僕、毎朝通勤時には必ず音楽を聴くんですけど、
冬の寒さは、この長年の習慣にも微妙な影響を与えています。
(冷凍庫並みに冷えたイヤホンを耳に突っ込むのがそもそも辛い)
本当なら駅のホームで電車を待ちつつ、
その日の気分に合わせて聴きたい音楽をじっくり選びたいのに、
寒空の下で素手をさらしながらiPhoneの画面を延々スワイプするのが億劫なので、
最近は予め「寒い朝用プレイリスト」を作って、それを日替わりで流すようになりました。

その「寒い朝用プレイリスト」には何が入っているかというと、
例えばBECKが昨年リリースした『Morning Phase』(←本当に素晴らしい名盤ですね)、
京都のフォークデュオ、Hi, How Are Youの1stアルバム『?LDK』
東京のインディーバンドBoyishの『Sketch For 8000 Days of Moratorium』
といった面々なのですが、そんな中で最近特に繰り返し聴いているのが、
米国ウィスコンシンのバンド、Phoxです。

Phoxは2011年に結成された6人組のバンドで、
14年8月にセルフタイトルの1stアルバムをリリースしました。
6人組という大所帯バンドであるところからも想像できる通り、
とても多彩な音色をもつバンドです。
ギターやピアノはもちろん、バンジョーシンセまで、
使っている楽器はバラエティに富んでいます。
しかも、ライブ映像などを見ると、曲によって担当楽器をコロコロ変えていたりして、
マルチプレイヤー揃いのバンドのようです。

オーガニックからエレクトリックまで、多彩な音色とその融合具合、
そしてアフロビートを感じさせる独特のリズム感。
どことなく初期のVampire Weekendを彷彿とさせます。

しかし、実はPhoxの一番の特徴は、ボーカルにあります。
ボーカルを務めるのは、唯一の女性メンバーであるモニカ・マーティン
黒人の血が流れていると思われるモニカのソウルフルな歌声は、
いわゆる「インディーポップバンド」という括りとは、だいぶ毛色の異なるものです。

面白いのは、他の5人がバックで鳴らすサウンドとモニカのボーカルとの間の、
付かず離れずの不思議な距離感です。

自然な組み合わせのようでありながら、どこか異物感もある。
馴染んでいるようでもあり、浮いているようでもある。
「カオス」というほど開き直ってもいないし、
かといって強引にまとめ上げているわけでもない。
両者は、いってみれば「ゆるく」つながっているのです。

異人種同士が暮らすシェアハウスのよう、といえばいいのでしょうか。
5人が鳴らすハイブリッドサウンドと、モニカの人間臭いボーカルという、
異質な者同士が適度な緊張感をはらみながらも居心地良く同居しているという有り方自体に、
僕は都会の洗練されたまぶしさのようなものを感じます。

モニカのボーカル、すごく素敵です。
素朴な声なんだけど、電車の車窓から見える都市風景にも不思議とマッチします。
新宿の大ガード下や渋谷のスクランブル交差点が車窓から見えて、
ちょうどそこに彼女の声がイヤホンから流れてきたりすると、
鉛の色をした町並みにじんわりと色が射してくるようで、
寒い朝の憂鬱さを束の間、忘れさせてくれる気がします。










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