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異色の顔合わせによる
アメリカ音楽の「再発見」


新しさや派手さはないものの、自分の部屋のような居心地の良さと親密さを味わえる、
「小品」と呼ぶべき良盤の紹介。
ノラ・ジョーンズと、グリーン・デイビリー・ジョー・アームストロングの2人が、
エヴァリー・ブラザーズの『Songs Our Daddy Taught Us』をカバーしたカントリーアルバム、
『Foreverly』です。(タイトルが素敵ですね)

まず、なんといってもノラとビリー・ジョーという意外すぎる組み合わせに触れないわけにはいきません。
片やジャズをはじめロック、ブルースまでを歌いこなす歌姫。
片や現代のパンク界を代表するアイコンとして、
20年近くもトップを走り続けてきたベテランシンガー(顔は相変わらず少年のようですが)。
この2人のデュエットを聴けるということ自体が、既にこの作品の価値といえます。

そもそもこの企画はビリー・ジョーの方からノラに話を持ちかけて始まったそうです。
元々エヴァリー・ブラザーズのファンだったビリー・ジョーが、
自分の手でアルバム『Songs Our Daddy Taught Us』をカバーしたいと考えていたところ、
女性ボーカルとのデュエットというスタイルを思いつき、ノラ・ジョーンズに声をかけたんだとか。
ノラ自身も、自分のライブでカバーを披露するほどエヴァリー・ブラザーズ好きだったことから、
話はトントン拍子に進み、この豪華で異色の顔合わせが実現しました。

もっとも、顔合わせは意外性だらけですが、
2人の歌の方は予想通りというか当たり前というか、めちゃくちゃ上手いです。
ノラ・ジョーンズの歌の上手さとジャンルの壁を軽々飛び越える汎用性の高さは相変わらず。
ビリー・ジョーも、グリーン・デイの時とはうって変わって、
ジワッと耳にしみわたる優しいボーカルを聴かせてくれます。

レコーディングはわずか9日間で行われたそうですが、短い期間で録りきったことで、
音源にはまだ、2人がお互いの呼吸を読もうとしている緊張感みたいなものが残っています。
エヴァリー・ブラザーズというとサイモン&ガーファンクルが影響を受け、
実際にカバーを何曲も残していることが知られていますが、
オリジナル以上に完成度の高いハーモニーを聴かせるサイモン&ガーファンクルとは対照的に、
ノラとビリー・ジョーのカバーは、初顔合わせの初々しさやお互いを気遣う親密さがあり、
歌い手2人の「体温」が直に感じられるような気がします。

しかし、この作品の何よりもすごいところは、
時代のトップを走る2人のボーカリストが、
エヴァリー・ブラザーズという半世紀以上前のアーティストをカバーしたという、
企画そのものかもしれません。
実は、元になった『Songs Our Daddy Taught Us』というアルバムもまた、カバー作品です。
エヴァリー兄弟がまだ幼い子供の頃、カントリー歌手である父が歌ってくれたアメリカの古いカントリーソング。
それをカバーすることで、エヴァリー・ブラザーズは「米音楽のルーツ」を、
アメリカのリスナーに再体験してもらおうとしました。
ノラとビリー・ジョーは、50年以上の時を超えて、再び同じことを試みているのだと見ることもできます。
わずか12曲、計30分強という手のひらサイズの小品ながら、
実はこの中には、連綿と続く米音楽の歴史と、
それを何度でもリバイバルさせるリスナーの懐の深さが詰まっているように感じます。

本作がリリースされたのは2013年11月。
そのわずか4か月後に、エヴァリー・ブラザーズの弟、
フィル・エヴァリーが74歳の生涯を閉じました(兄のドン・エヴァリーは今も健在)。
フィルは、この『Foreverly』を耳にする機会はあったのでしょうか。
偶然とはいえ、まるでバトンタッチのようなタイミングで彼がこの世を去ったことに、
何か象徴的なものを感じます。








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