
「主流」と「亜流」の間を
自在に行き交うポップネス
例えば2009年のThe Pains Of Being Pure At Heart。
例えば2012年のJake Bugg。
どんな年にも、彗星の如くロック界に現れて話題をさらい、
その年の「顔」となるような新人アーティストがいます。
今から4年前、2011年の「顔」は、間違いなく彼らでした。
英国ロンドンで結成された4人組、ザ・ヴァクシーンズです。
「ツボにハマる」という言い方がありますが、
この表現を使うなら、彼らはまさに僕の「どツボ」に大ハマりしたバンドです。
最初に耳にした曲の(確か<If You Wanna>だったと思います)、
頭の1コーラスだけでストライクゾーンのど真ん中を射抜かれた僕は、
心の中で喝采を上げました。
「こういうバンドを待ってたんだ!」と。
彼らの一体どこがいいのか。
僕は「ポップネス」を第一に挙げたいと思います。
一度聴けばすぐに鼻歌を口ずさめるほど、インパクトのあるメロディライン。
その垢抜け具合、洗練され具合は、
デビュー盤である本作の時点で、既に当代随一といってもいい巨大な輝きを見せています。
「ポップさ」は、ちょっとでも力の入れ具合を間違えると、
途端に「下品さ」に転げ落ちてしまうものですが、
彼らは決してそのラインを踏み越えません。
むしろ、あくまでギターを主体とした勢いのあるアレンジで、
ガレージやパンクにも通じる勢いや猥雑さを感じさせる、
純然たる「ロック」として聞かせてくれます。
デビュー作にもかかわらず、一体なぜこんなにも円熟味を見せられるのか。
メンバーの4人とも、バンド結成以前にもミュージシャンとしてのキャリアを積んでおり、
そうした経験の蓄積が一つの支えになっているのかもしれません。
しれませんが、それにしたって限度というものがあるでしょう。
これが才能というものなのでしょうか。すごいですねえ。
デビュー盤 『What Did You Expect From The Vaccines?』は、全部で11曲。
全ての曲が、極めて質の高いポップ性を誇っているだけでなく、
そのバラエティの広さにおいても、
彼らの才能という水量の豊かさを感じます。
全曲シングルカットできるんじゃないか、と思わせる点では、
オアシスの『Morning Glory』を彷彿とさせます。
ちなみに彼らは12年、
デビュー盤から1年しか空けずに早くも2枚目のアルバム『Come Of Age』をリリースしました。
この2枚目でも、無類のポップネスとガレージ、パンクの爆発力は健在です。
しかし、アレンジ面ではデビュー盤よりも凝ったつくりを見せています。
よくよく聴いてみると、例えば変な音色が混ざっていたり、
ギターのリフのラインが妙に角ばっていたりと、
随所に作為性が見られるようになりました。
こういう「わざとっぽい」感じはイギリスバンドの一つの典型とも言えますが、
彼らの場合は、わざと崩すにしても外すにしても、「わざと」とは感じさせないように、
あくまでポップネスに紐づく形でやっているように思います。
デビュー盤では、その勢いの良さからオアシスやアークティック・モンキーズといった、
スタジアムバンドの直系という印象をもっていましたが、
本当はXTCあたりの「亜流派頭脳系ポップバンド」の直系なのかもしれません。
そんなヴァクシーンズですが、前作から3年のブランクを経て、
ついに来週、3枚目となるアルバム『English Graffiti』をリリースします。
YouTubeなどで既に試聴可能になっている先行曲を聴くと、
シンセを使った、80年代がかったダンサブルな曲なんかがあったりして、
2枚目からさらにまた変化を起こしている予感を感じさせます。
デビュー作の代表曲はこれでしょう
2枚目のリードトラック。少し「手の込んだ」感じがうかがえます
そしてこれが来週出る3枚目から。
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