
夜の闇の中に
「落ちていく」快感
柔らかく、フワフワとしていて、聴いていると肩の力が抜けていくような音楽を、
よく「浮遊感」という言葉で表現することがあります。
しかし、このバンドの場合、同じように柔らかでフワフワとしていながらも、
浮いていく感覚というよりも、「落ちていく」感じ。
そんな、「転落感」とでも呼ぶべき不思議な快感を味わせてくれるバンド、
Tempalay(テンパレイ)のデビューアルバム『from JAPAN』がリリースされました。
東京・埼玉を中心に活動する3ピースバンドで、
2015年のフジロックでは、選ばれた若手アーティストだけが上がれるステージ、
「ROOKIE A GO GO」に、結成わずか1年目で出演を果たしました。
僕は15年9月にリリースされた1stEP『Instant Hawaii』で知りました。
最初は確かYouTubeだったんですけど、もうね、1曲目のド頭から惚れました。
最高。大好き。
即ネットで買おうとしたのですが、プレス枚数が少なかったせいで既に売り切れ。
諦めきれずに都内のタワレコ全店の在庫を調べてGETしました。
一体、彼らのどこにそんなに惹かれたんだろうか。
それは多分、冒頭に述べた「転落感」だと思います。
ボーカル小原綾斗の、明後日方向から届くファルセットヴォイスや、
必ずと言っていいほど曲の中盤でリズムを変えてくる、一つどころに留まらない流転性。
そして、ポップと非ポップの境界線ギリギリを攻めるような、怪しくヘンテコなメロディ。
彼らのもつキャラクターはどれも強烈なのですが、
それらを組み合わせた結果、浮いていくんじゃなくて、沈んでいく感じが生まれるところが、
このバンドのユニークさだと思います。
「沈む」といっても、暗いとか閉塞的とかそういうネガティブなものではありません。
むしろ、快感。
例えて言うなら、眠りに落ちていくときの、意識がぼんやりしていく感覚でしょうか。
だからなのか、彼らの音楽は圧倒的に「夜」が似合います。
音の肌触りがどことなく艶っぽい。
そういえば、「70年代西海岸風」と評されることの多いTempalayですが、
聴きようによっては昭和のムード歌謡っぽい雰囲気も僕は感じます。
こういう強烈で多彩なキャラクターを前面に出した、名刺代わりとなる最初のフルアルバムに、
「from JAPAN」というタイトルをつけた彼らの気概のようなものに、僕は好感を覚えます。
Tempalayは今年、米国で開かれる世界の音楽見本市的フェス「SXSW」に、
Alexandrosらと共に日本代表(まさにfrom JAPAN)として出演することが決定しています。
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