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黒澤明のデビュー作である『姿三四郎』の原作者、富田常雄は、
全日本選手権13年連続保持、天覧試合優勝、15年間不敗という伝説の柔道家、
木村政彦を評してこう言いました。
「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」

そして今、この言葉を借りて僕はこう言いたい。
ベビメタの前にベビメタなく、ベビメタの後にベビメタなし と。


BABYMETALが3月にリリースした2ndアルバム『Metal Resistance』
当初は思いつきのネタだったかもしれない「アイドルポップとメタルサウンドの融合」というコンセプトは、
このアルバムで完全に独自のジャンル、独自のエンターテインメントとして完成しました

<Road of Resistance>の多幸感たっぷりの幕開けに、
あの名曲<ギミチョコ!!>を遥か後ろに抜き去ってしまう超絶名曲<KARATE>

エモーショナルな<Amore - 蒼星 ->に、かつてないほどスケールの大きな<The One>
一方で、<ド・キ・ド・キ☆モーニング>直系ともいうべき<あわだまフィーバー>でさくら学院時代の匂いも残し、
「ざっけんじゃねーぞ」「ばかやろう」とひたすら罵倒する<Sis. Anger>で、
BLACK BABYMETALの2人の新たな可能性も示す。

そして、ともすると「答えなんてどこにもないんだ」と言いがちな世相の中で、
「進め 答えはここにある」<Road of Resistance>、
「絶望さえも光になる」<NO RAIN, NO RAINBOW>と、
このアルバムでは歌詞においても、道なき道を開いたフロンティアとしての覚悟が透けて見えます。


もちろん、彼女たちがイロモノの一発屋などではないことは、
これまでのパフォーマンスによって、彼女たち自身の力で証明してきたわけですが、
今回の2ndによって、それが音源としてハッキリと記録されました。

Perfumeは『Complete Best』という胎動期を経た後、
名盤『GAME』によってアイドル的立ち位置から一気に唯一無二な存在へと飛躍しましたが、
BABYMETALにとっての『Metal Resistance』もまさにそのような記念碑的作品でしょう。
このアルバムを聴いた後では、「アイドルなのか」「メタルなのか」という問いが、
もはや意味のないことだと分かります。



本作はアマゾンの米国総合アルバムチャートで一時、1位を記録。
iTunes Storeでも総合3位に入ったそうです。

全米・全英の総合チャートにAdeleやPet Shop Boysといった名前と共に、
日本人アーティストの名前が並ぶ。
そして、ローリング・ストーン誌の本誌で「最も期待できるメタルアルバム」にメタリカやKORNと共に名を連ね、
世界的メタル専門誌『METAL HAMMER』の表紙を何度も飾り、
海外で1万人超の会場をソールドアウトさせる。
そんな日本人アーティストが、それもまだ10代半ばのガールズユニットから出てくるなんて、
一体誰が想像できたでしょうか。

しかし、僕は彼女たちの存在を「クールジャパン」とは絶対に呼びたくない

一時期下火になってきたと思ったのに、オリンピックで再びゾンビのように復活してきた感のある、
この「クールジャパン」というイタい存在は、結局のところ、
アニメやマンガといった日本のカルチャーが好きな一部の外国人たちの間だけで、
局所的に盛り上がっていたカルト的コンテンツに過ぎませんでした。

確かにBABYMETALの衣装や振付、強烈にフックの利いた歌メロはいかにも日本ならではだし、
アイドルとメタルをくっつけちゃおうという発想も、例えば和洋折衷なんて言葉で表すような、
異質なもの同士を融合させるのが得意な日本の文化性とのつながりを指摘できるかもしれません。
メインストリームにはない「異物感」が目を引くという点は、彼女たちも従来の「クールジャパン」と同じです。

正直に言えば僕自身も、初めてBABYMETALのライブDVDを見たときは、
好奇心と物珍しさしかありませんでした。平たく言えば「舐めて」いました。

ところが、見始めて30分もするうちに、「おや?」と気づいたのです。

「ダンス、すごいかっこいいよな。それに、こんなに激しく踊ってるのに生歌だよ」と。

僕は、彼女たちが海外で受け入れられた一番の理由は、ここだと思う。
「アイドルとメタル」というアイデアが、単なる一発屋では終わらず、
見る者をさらに奥深くへと引き込んでしまう訴求力を発揮できたのは、
彼女たちが歌とダンス(そして神バンドの演奏力)という高いパフォーマンス技術を持っていたからです。
「ちゃんと歌える」「ちゃんと踊れる」というパフォーマンスの力は、
目に見えて誰にでも伝わるという点で、いわば「共通言語」のようなものです。
それを持っていないと異なる文化圏で共通の土俵に上がれないし、いくら面白いアイデアがあっても伝わらない。

所属する文化圏の中だけで活動するのであれば、
いくら歌が下手でもダンスがショボくても、客席が物語を共有してくれやすいし、
一種のコミュニティのような濃厚で閉じた関係を築くこともできます。
こういうドメスティックなあり方が全てダメとは思わないし、
それはそれでたまに面白かったりもします(その最たる例がSMAPだと思う)。
ただ、それを「世界に通用する日本ブランド!」みたいに勘違いして、
海外で生のまま持っていった挙句、壮大な内輪ネタにしか思われなかったというのが、
これまでの「クールジャパン」でした。

だから僕は、BABYMETALをクールジャパンとは呼びたくない。
だって、身体的なパフォーマンスというのは、一朝一夕で手に入れられるものではありません。
しかも、そういう職人性やプロフェッショナル性がどんどん軽視されていく傾向がある中で、
彼女たちは長い時間をかけて訓練をしてきたわけです。
そういう努力をしないまま海外でイタさをさらしてきたコンテンツと同じ呼び名で呼ぶのは、
彼女たちに対して失礼だと僕は思う。

全身タトゥーの熊みたいな外国のメタルファンが、
「ウキウキミッナーイ!!」と叫びながらモッシュする光景を見ていると、
ゾクゾクせずにはいられません。
それは、日本のアーティストが海外の人を魅了している快感とかそういうのではなくて、
自分はもしかしたら、全く新しいエンターテインメントの誕生を目撃しているのかもという期待です。

ボブ・ディランはギターソロを弾かない代わりに「言葉でロックする」と言われました。
BABYMETALの3人は確かに曲も書かないし楽器も弾かないけれど、
あの面白可愛いダンスと笑顔は間違いなく爆音ギターそのものだと思うのDEATH








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