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僕が作れなかった歌は
永遠に僕のもの


東京出身のシンガーソングライター、澤部渡によるバンド、スカート
元々は彼のソロ企画的なアーティストネームでしたが、
最近はカメラ=万年筆の佐藤優介や昆虫キッズの佐久間裕太らがほぼ固定でサポートに入っていて、
邦インディーズ界のスーパーバンドとして認知されています。

澤部さんは1987年生まれなのでまだ20代で、僕よりひと世代下。
でも10代の頃からスカートとして活動しているからキャリアは長いし、
ギターやベースだけでなく、ドラムやサックスまで演奏できるマルチプレイヤーだし、
(先日はMステでスピッツのバックでタンバリンと口笛を担当していましたね→まとめ記事になってた!
なんとなく僕は「澤部さん」とさん付けで呼んでしまう(彼の風貌から来る貫禄、というわけじゃない)。

ちょっとマニアックだけど、僕が「澤部さんかっこいいな!」と感心したのは、
いつだったかココナッツディスク池袋店で期間限定で配布されていた、
澤部さんミックスのCD-R「’86-’90 CHAGE&ASKA」。
いきなり<WALK>から始まるという、うおおお!な選曲に興奮してたんだけど、
何よりすげーなと思ったのは、確かこれ、ASKAが覚せい剤で捕まった直後だったんですよね。
このタイミングでチャゲアスを選んでくる澤部さんのスピリット(音楽に罪はない)にシビレました。

んで、前置きがだいぶ長くなってしまったのですが、
そんなスカートの3枚目となるフルアルバム『CALL』が4月にリリースされました。

幕開けに置くにはあまりに情感たっぷりな<ワルツがきこえる>
夏の日の夜明けを思わせる、静かな中にも始まりを予感させるタイトル曲<CALL>と、
その姉妹編のような<どうしてこんなに晴れているのに>の甘く美しい展開。
反対に、夜の街の光に溶けていくようなファンキーなチューン<暗礁><回想>



元々ソングライティングについて高く評価されていたスカートですが、
それを踏まえても今回の作品はこれまで以上にカラフルでドラマチックです。
初めてレーベルに(それもインディーの雄、カクバリズムに)所属して制作したことで、
いろいろな面で自由度が上がったのかもしれませんが、
これまでは美しいメロディを歌っていても、その歌声にはどこか焦燥感や不安が滲んでいたのが、
今作では歌の中身に寄り添った、純粋な「語り手」に、
収録曲のタイトルを借りれば、ストーリーテラーに徹しきれている感じがします。

そういう意味では、『ストーリー』(2011年)のような前のめり感を期待すると、
バランスのとれた今作は物足りないかもしれません。
でも、決定的に変わらないのは、歌詞の紡ぐ世界観です。

どうしてこの人の書く歌詞はこんなにも悲しいんだろう
具体的なディティールは分からなくても、どの曲の主人公も間違いなく、
大切な誰かと別れた、あるいは大切な何かを失ってしまったことがうかがえるのです。
針のような痛みを見せたい
あなたにも
たとえ季節に見放されても

<アンダーカレント>

手放した日々の先を
たおやかな祈りの その先を
照らしてほしいよ
でももう遅い

<はじまるならば>

なんか「そんなにさらけ出すの止めて!」という気になっちゃう。
「そういうのいいから!もういいから!」みたいな。

でも、澤部さんは悲しさそのものを歌いたいんじゃなくて、
そこからどうしたら再生できるかを音楽を通して探っている気がします。
その方法は歌詞として書かれる場合もあるし、メロディで表現されている場合もあるけど、
とにかく、漠然としながらも強い意志の力があります。

僕が好きなのはこの歌詞。
君が作れなかった歌は
いつまでも
君のものだよ 君のものさ!

<いい夜>

これ、最初に聴いたときは耳に引っ掛かってくれなかったんだけど、
歌詞カード読んで「ああ…」と崩れ落ちそうになりました。








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