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傷つく人ではなく
傷つく人を見守る人になった


1曲目に置かれたのは<THEME FROM SALE OF BROKEN DREAMS>という、アルバムタイトルを冠した曲。
さぞかしド派手な曲かと思いきや、わずか2分弱の、ボーカルはハミングのみというインスト曲で、
この1曲目が終わると、その残響の中で2曲目のギターリフが静かに始まり、
まるで序章を終えていよいよ本編が始まると言わんばかりに、
畳野彩加のゾクゾクとした予感をはらんだ歌声が聴こえてくる――。

改めて過去の作品を思い返して見れば、
このバンドがアルバムを単なる曲の寄せ集めではなく、
「一つの作品」として、トータルに捉える傾向が強いことが分かります。
例えば2014年の暮れにリリースされた前作『Somehow, Somewhere』でも、
<I Want You Back>をはじめとする既存曲をわざわざレコーディングし直してまで、
アルバムを一つのトーン、一つのカラーに統一しようとしていました。

しかし、我が愛するHomecomingsが、まさか2枚目にして、
ここまでコンセプチュアルに作り込んだアルバムを持ってくるとは。

冒頭に、インストの1曲目と2曲目の関係を「序章と本編」と書いたのは、
丸っきりの比喩というわけではありません。
福富優樹(Gt.)がライナーノーツで語っているようにこのアルバムは、
先行シングル<Hurts>制作時に彼が思いついた
SALE OF BROKEN DREAMS」という一つのフレーズを基にして、
ある架空の街を舞台にした一種の短編小説のようなつくりをしています。

歌詞からひも解けば、この街には「野球の球場」があり、街灯は「オレンジのライト」をしていて、
公園とベンチ」があって…とまあ、どこにでもある街ではあるのですが、
じっくり歌詞を読んでいくと、それぞれの曲で登場人物は異なりながらも、
皆同じ空の下で、同じ空気を吸っていることがなんとなくイメージできます。
安心しなよ
何にもないように見えるこの街からだって
始まったことはたくさんあるんだよ

<DON’T WORRY BOYS>

ひとりぼっちに見える街灯は
誰にも気づかれないようにしているだけ

<BLINDFOLD RIDE>

あと何時間かしたら
すっかり明るくなってしまうとは到底思えないほど
夜はどこまでも真っ暗に見えた

<BUTTERSAND>

細かいディティールは分からなくても、なんとなく伝わってくるというか、
どの主人公も、決して幸せの絶頂!というわけではない。
むしろ、誰かと別れ一人になってしまった寂しさや、
眠れずに朝を迎えようとしているぼんやりとした不安といった感情が見えます。

以前、僕はホムカミの音楽を表すキーワードとして「喪失感」を挙げました。
今回、2枚目となるこのアルバムを聴いて、
(少なくとも僕の感じ方からすると)改めてこのキーワードを強く意識したのですが、
歌詞としても、音の質感の統一という点でも、
「喪失感」を物語として仕上げていく才能が、前作より一段と開花していると感じます。

確かに1曲1曲の強度(インパクト)という点では、
前作や『Homecoming with Me?』の方が上かもしれません。
しかし、一つの作品として見るなら、やはり今作『SALE OF BROKEN DREAMS』が優れていると思います。

実は、ちょうどこのアルバムのわずか1週間前にリリースされたのが、
先週紹介したスカートの『CALL』でした。
「ストーリーテラー」という性格の強い2つのアルバム(バンド)が続いたのは、面白い偶然でした。



最後にもう一度「喪失感」という話に戻ります。
1年半前の前作『Somehow, Somewhere』のときは、曲の主人公は僕自身でした。
歌詞やメロディに塗り込まれた喪失感を、自分自身のものとして、僕は感情移入していました。

ところが今回のアルバムでは、以前に比べてその感情と距離が生まれたことに気づきました。
もちろん感情移入はするんだけど、当事者という感覚ではなく、
主人公を応援したり、見守ったりする目線の方が近いのです。
改めて前作を聴き直してみても、やはり同じように距離を感じるので、
原因は作品ではなく、僕自身にあります。

この1年半の間に何があったんだろう…と考えて、あっさり答えが見つかりました。
子供ができたことでした。
自分に子供ができたことで、ちょっと大げさですが、僕は世界の主役から脇役へと移り、
そのことがホムカミの音楽に対する距離感や立ち位置を変化させたんだろうと思うのです。
スカートとホムカミを聴いて、一番ハッとしたのは、実はこのことでした。








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