car10 - Best Space

「地方」「食えない」を
軽やかに飛び越えて


3ピースバンド、Car10(カーテン)を最初に聴いたとき、
「あ、イギリスのバンドだな」と思ったんだけど、
調べてみたら日本の、それも栃木県足利市を拠点に活動する地方のバンドで驚きました。
そのくらいこのバンドはスケールがデカく、日本的な匂いを感じさせません。

猛烈なスピード感と潰れたギターの音は最高にかっこよく、
英語と日本語がごくナチュラルに入り混じった歌詞のセンスも素敵。
何より、彼らの「声」が素晴らしいなあと感じます。
思わず笑ってしまうくらいに絶曲するコーラス(ギャングコーラスというらしい)と、
「お前やる気あんのか!」とユッサユッサしたくなるような、脱力しきった川田晋也のボーカル。

ぶっ壊れてるパンクバンドってたくさんいるけど、
Car10はすきま風がビュービュー吹くあばら家のように、かなり徹底的にボロボロです。
でも、逆にそこに昔のマッチョ系パンクバンドにはない繊細さや軽やかさを感じます。

2008年に結成して14年にレコードデビュー。
15年にリリースした2ndアルバム『Rush To The Funspot』からは、
銀杏BOYZ安孫子真哉が主宰するレーベル、KiliKiliVillaに所属しています。
そして今年6月、5曲入りで収録時間10分という(彼らの曲はほとんど2分以下なのです)、
暴風のような爆速EP『BEST SPACE』をリリースしました。

※2ndアルバムより<Bustard Blues>


いやしかし、こういうかっこいいバンドが、
栃木県足利市という「ド」がつくほどローカルな場所から出てきたことが、
一番素晴らしいことなのかも。

このブログでも地方出身のバンドってたくさん紹介してきたけど、
なんだかんだ言っても県庁所在地級の規模の都市だったり、
そうでない場合も拠点を大都市に移していたりするケースがほとんどでした。
ところが、Car10の場合は今でも活動拠点は足利のままです。
ちなみに栃木県足利市の人口はわずか15万人(2010年)。

インタビュー記事を読むと、彼らは地方で活動を続けることに、
決意や信念が特別あるわけではないようですが、
そういう気負ってないところが逆に頼もしく見えます。

気負ってないといえば、彼らは昼間は普通に働いてます
会社員なのかアルバイトなのかはわからないですけど、
とにかく昼間は音楽以外の仕事をしながらバンド活動を続けているようです。
そういえば、レーベルオーナーのあびちゃん(安孫子真哉)も、
こないだ地元の牛乳屋さんに就職したそうです。

全国流通盤をリリースして、大手レコード店にCDが置かれているようなバンドでも、
昼間はバンド以外の仕事をしているケースは、決して珍しいわけではありません。
ひと昔前なら、そういう「食えない」状態は「恥」と思われてたところがありました。
でも、Car10のように昼間働いてることを(本人たちの目標はあくまで「食う」ことかもしれませんが)
あっけらかんとオープンにすることは、僕としてはとても素敵だなと思う。


よく「プロとアマチュアの違いは『食える』か『食えない』か」
というような言い方をする人がいます。
僕も芝居をやっていたので、こういう言い方を何度か耳にしたことがあります。
芝居だろうが音楽だろうが、あくまで一つの「仕事」なんだから、
それ一本で生活できるかどうかをバロメーターにすべきだ。
こういう割り切り方は、一見クールでかっこいいかもしれません。

でも、じゃあCar10やあびちゃんは「アマチュア」なのでしょうか。
そして、TVに出てるあのクソみたいなバンドは「プロ」なのでしょうか。
1万人以上動員してるけど公演費用がかかるからバイトしてる食えない劇団員は「アマチュア」で、
芝居はロクに作らずカルチャースクールの講師だけで食える劇団員は「プロ」なのでしょうか。

以前、この記事でも似たようなことを書きましたが、
僕の結論としては「どうでもいい」です。
僕はCar10がプロだから聴いてるわけでもアマチュアだから聴いてるわけでもなく、
単純に彼らの音楽が好きだから聴いてるわけで、それ以上でもそれ以下でもありません。

たしかに、一度は日本のバンド界の頂点を極めたといっていいあびちゃんが、
今は音楽とは関係ない仕事をしているのは、少なからずショックではあります。
ですが、そんなことはそもそも他人の僕が心配するような問題ではなく、
僕は彼が送り出す音楽に興味があるからフォローするわけで、
彼が昼間何をしているのかは、本質的に関係のないことです。
あびちゃんが何をしてようが、彼が作る音楽が良ければ聴くし、そうでなければ聴かないだけ

だから、少なくとも僕には「食える食えない理論」はまったく本質を突いていないので、
それを口にする人とはなるべく関わり合いにならないようにしてきました。
まあ、「食える食えない理論」って大体、その世界でギリギリ食えてる人が、
食えてない人を威圧させて優越感を味わうために振りかざすケースが多いんですけど。

とはいえ、実は僕も偉そうなことはあんま言えません。
20代の頃は「本当に創作に打ち込むためには仕事なんかしてちゃダメだ!」
「他の人が仕事してる時間も創作をしないといいものなんて作れない!」
なんてことを大マジで議論してました。
Car10の爪の垢でも煎じて飲ませてそのまま蟹工船にでも押し込んでやりたくなります。

でも、だからこそ、地方で働きながら、かっこいい音楽を作り続けている彼らのような存在は、
本気でリスペクトするしめちゃくちゃ応援したいです。








sassybestcatをフォローしましょう
ランキング参加中!
↓↓よろしければクリックをお願いします

にほんブログ村 音楽ブログ CDレビューへ
にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ