naotora

僕の知ってる大河ドラマは死んだ
でも、きっとこれでいいんだ


今年のNHK大河『おんな城主 直虎』
正直、僕はまったく期待してなかったんだけど、
始まってみると意外や意外、けっこう面白いです

いろいろな事件が起こるのに台本がとてもよく整理されているし、
キャラクターもきっぱりはっきりしている。
子役の3人もめちゃくちゃ上手ですね。
おとわ役の新井美羽ちゃんは出演者クレジットで堂々の先頭を飾っていましたが、
これってもしかしたら『義経』(05年)の神木隆之介くん以来じゃないでしょうか。
あと、井伊谷のロケーションも素晴らしいですね。
毎日家からあんな景色が見られるなら僕も住んでみたい。
あんな場所よく見つけてきたなあ。

でも、今挙げたことはどれも、
僕の知ってる大河ドラマとは正反対の要素ばかりです。

僕にとっての大河ドラマとは、
まさに「大河」という名の通り、
重厚で骨太なものでした。

それは単に、作り込まれた衣装やセット、
大規模な野外ロケによる迫力ある合戦シーンといった、
「スケールの大きな時代劇」という意味ではありません。
むしろ、1年もの時間をかけて一人の主人公を追うことで見えてくるのは、
子供が生まれる喜びや愛する人と別れる悲しさ、
敵への激しい憎しみや時には肉親とも争ってしまう愚かしさといった、
時代の表層がいくら移ろっても変わらない普遍的な「人間」の姿でした。

僕はまるで、日曜8時からの45分間は、
そこだけ現代とは切り離された時間が流れているように感じていました。
TVの前で思わず背筋がピンと伸びるような、
見ている間は息をするのも憚られるような、
そんな緊張感こそが僕にとって大河ドラマの醍醐味でした。

それを思うと、『直虎』は(今のところ)驚くほどほのぼのしてます。
いえ、物語の中ではそれなりにハードな場面は出てくるのですが、
それでも最終的にはハッピーエンドになるんだろうという予感というか、
最低限の安心は保障されているような感覚があります。

それは例えば、元気いっぱいのおとわとそれを見守る気弱な直盛と厳しい千賀、優しい直平という
「絵に描いたようないい家族」の構図のせいかもしれませんし、
おとわと亀之丞、鶴丸の3人の関係とそれぞれのキャラクターが、
この先の展開が容易に想像できるほどわかりやすいせいかもしれません。
いずれにせよ、「この先どうなるんだろう」というハラハラドキドキよりも、
ある程度着地点を予想させたうえで、そこに向けてどうやって進むのかを、
いわば確認するためにドラマを見ているような気持ちになるのです。

元々大河ドラマは21世紀に入って以降、
こうした傾向が顕著でした。
現代劇と変わらない台詞回しや、「主人公は善、敵方は悪」という類型化されたドラマ、
その人自身の人生よりも主人公との関係性によって決まる「役割」重視の人物造形など、
かつての大河のようなリアルさやカオスさよりも、
見やすさや安心感の方に重点が置かれてきました。

こうした変化を、僕は大河ドラマがアニメ化していくようだと感じていたのですが、
『直虎』がもたらす安心感は、もはやアニメ化とかそんなレベルを突き抜けて、
「朝ドラ化」という段階にまで到達したような気がします。

そう考えると、花をシンボリックに使った「みんなの歌」のようなオープニングも、
時代設定を無視した色艶のいい役者の肌も、
丁寧にキャラクターを説明してくれる衣装のデザインも、
なんだかすべて納得してしまいました。
ここまで振り切ってくれるなら、アニメ化大河ドラマを苦々しく感じていた保守派の僕としても、
むしろ清々しいくらいです

『直虎』の第1回を見終わった時に感じたのは、
「ああ、大河ドラマはもう本当に別のものになったんだな」という感慨でした。
本当はとっくの昔に変わってたんだろうけど、
僕はこの作品でようやく諦めがついた気がします。

もちろん、だからといって、
「昔の大河ドラマの方が圧倒的に面白い」という考えは揺るぎません。
ただ、これからは未来の作品にかつてと同じ面白さを期待するのではなく、
一人で静かに『武田信玄』(88年)の再放送や、
『太平記』(91年)の完全版DVDを見ていようと思います。




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