The-Crotches

「ミサイルの下で書いた曲」は
どこまでもポップだった


 イスラエルの3ピース、The Crotches。出身はイスラエルだけど活動拠点は欧米、というパターンではなく、所属するGarzen Recordsもテルアビブのレーベルですし、Facebook見てると、実際現地で頻繁にイベントやったりライブしたりしてるので、正真正銘、イスラエルで活動中のバンドです。

「イスラエルにバンドがいる」ということ自体が正直驚きでした、でも、さらに驚いたのは、肝心の音楽を聴いたとき。彼らが4月にリリースした2ndアルバム『Ein Ahot La Mifsaot』だったのですが、これがめちゃくちゃかっこよかったのです。

 基本はグチャッとしたローファイなガレージロックなんだけど、メロディにしてもアレンジにしてもとにかく洗練されていて(正確に述べるなら「わざと洗練しない風」にしているところが洗練されている)、Burger Records好きにはたまらないクセや空気感をもっています。

 3曲目<Gan Ha Hashmal>や5曲目<1996>のように、ぼろぼろのトラックが暴走してるようなぶっ壊れた感じもあれば、2曲目<Kever Achim>のように、夏の日の午後のような心地よい気だるさを感じさせるメロウな曲もあり、非常に多彩なアイディアに満ちています。さらに、ヘブライ語(?)の独特な発音が乗っかるので、英語に馴染んだ耳には新鮮で、余計にかっこよく聴こえます。

 ちなみに、Garzen RecordsのBandcampを覗いてみたのですが、所属する他のイスラエルのアーティストも個性的でよかったです。僕はAbraoというソロアーティストが気になった。トロピカルなんだけどダークなサイケデリックという感じがして妙にクセになります。なんて熱い街なんだ、テルアビブ。

 でも、やはりさまざまな争いの火種を抱える国であることと無縁ではないようです。The Crotchesのプロフィールには、14年の戦争(ガザ侵攻のとき?)ミサイルが飛び交う中で曲を書き、廃墟のような場所でライブを続けてきた…というような内容が書かれています。歌詞には強い政治的メッセージが込められているそうなので、おそらく相当ラディカルなことを歌っているのでしょう。

 僕は残念ながら歌詞を理解することはできませんが、その分、純粋な「音」として聴けているはずです。そして、音として聴くThe Crotchesは、「政治的メッセージを歌うバンド」といわれて抱くイメージとはまるで無縁の、陽気でリラクシングで、ユーモラスな印象すら与えるバンドです。僕はそこに(想像ではありますが)過酷な状況だからこそポップであろうとする彼らの強い意志を感じます。

 Yellow FangManic Sheep、そしてThe Crotchesと、「母国語で歌う非英語圏バンド」が徐々に僕のライブラリに増えてきました。

 Yellow Fangのときに書きましたが、ロックという様式の、言語の違いを飛び越える伝播力の強さに驚く一方で、ロックのもう一つの側面である「自由さ」や「多様性」を考慮すると、日本人の僕がイスラエルのThe Crotchesを「かっけえ!」と感じるような、どの国でも共通のフィーリングを持つことは、手放しで喜べるものでもないんだよなあとも思います。もちろん、僕が単に「その文化でしか生まれえない音楽なんだけど、同時にポップミュージック足りえる音楽」をまだ知らないってだけかもしれませんが。

Sound Cloudで全曲聴けます↓







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