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現代のオリジナルクリスマスソングは
「クラシックナンバー」たりうるか


 今年買ったクリスマスアルバムは3枚。

 1枚目はエルヴィス・プレスリー『Christmas With Elvis And The Royal Philharmonic Orchestra』。タイトルの通り、エルヴィスがクリスマススタンダードを歌い、そのバックをロンドンのロイヤルフィルが務めたアルバムです。

 実際に両者が共演したわけではなく、エルヴィスが50年代に作ったクリスマスアルバムのボーカルに、後からロイヤルフィルの演奏を重ねた、一種の企画アルバムです。エルヴィスのボーカルをステージで流しながら、それに合わせてロイヤルフィルが生で演奏をするという「ライブ」は既に00年代から行われていて、同じ趣旨でそれを音源化したのが今回のアルバム。

 残されたエルヴィスのボーカルに、ある意味では無理やりオーケストラが合わせているので、例えば1曲目に収録されたブルーステイストな<サンタが街に来る>など、「なぜこのボーカルトラックを選んだ?」みたいな曲もあったりします。

 ですが、エルヴィスの甘い声で歌われるクリスマススタンダードは問答無用に素晴らしく、特に後半の<アデステ・フィデレス>、<ファースト・ノエル>という2曲のクラシックにおけるエルヴィスのボーカルは、ただただ圧倒的です。


 2枚目はビーチボーイズ『Ultimate Christmas』。1964年にリリースされた『The Beach Boys Christmas Album』に、70年代半ばにお蔵入りになった幻のアルバム『Merry Christmas From The Beach Boys』の収録曲やシングル版の<Little Saint Nick>など、ビーチボーイズのクリスマス関連トラックのほぼ全てをまとめた企画盤です。

 64年の『Christmas Album』はクリスマスソングをただ集めた総花的なアルバムではなく、一貫した意思のもと、あくまで「ビーチボーイズのアルバム」として作られているのがわかります。ブライアンは明らかに、この前年にリリースされたフィル・スペクターの『A Christmas Gift For You From Phil Spector』を意識していたと思います。

 ただ、ブライアンがフィル・スペクターよりもさらにチャレンジングなのは、アルバムの半分をオリジナル曲にしたことでした。前半がオリジナル、後半がカバーという構成なのですが、うっかりすると前半も既存のスタンダードナンバーだと勘違いするくらい、ブライアンのオリジナル曲は「クリスマスソングらしさ」をもっています。

 後半の『Merry Christmas From』の方は、70年代の「ポスト・ブライアン期」の、ある意味百花繚乱的な雰囲気がそのまま反映されています。その中ではデニスが作曲した<Morning Christmas>が素晴らしい。ほぼアカペラのスローな曲で、他の収録曲の中でこれだけ異質です。しかし、こうした敬虔な気持ちになる静かな曲こそクリスマスアルバムには不可欠だと個人的には考えているので、実はアルバムを通じてもっとも印象に残ったのは、この<Morning Christmas>でした。


 そして最後の1枚が、オーストラリア出身の女性SSW、Sia『Everyday Is Christmas』。このアルバムは本当に素晴らしかった。今年のクリスマスは結局このアルバムばかり聴いてる気がします。

 まず驚かされるのが、11曲すべてがオリジナルという点です。クリスマスアルバムは世の中に数多くあれど、全曲オリジナルというのはかなり珍しいのではないでしょうか。前述の通り、少なくともブライアン・ウィルソンでさえ半分はカバーだったのですから。

 そして何より素晴らしいのは、オリジナルにもかかわらず、どの曲も昔からあるスタンダードナンバーのような輝きと風格を持っていることです。


 さまざまなベルの音色や鍵盤主体(ギターが非主体)の楽器構成、そしてシャッフルリズム。このアルバムを聴いていると、クリスマスソングには「お作法」があるんだなあということがよくわかります。

 上に挙げた<Candy Cane Lane>や<Sunshine>は、王道のシャッフルソングだし、<Snowman>の3連符のピアノのアルペジオもクラシックの<O Holy Night>を彷彿とさせます。一方で<Underneath The Mistletoe>や<Underneath The Christmas Lights>のような聖歌的でトラッドな雰囲気をもつ曲もあり、単なるパーティーアルバムではなく、静謐で宗教的な部分も含めた、トータルなクリスマスアルバムに仕上がっています。


 現代のポップソングから世界的なスタンダード曲になった例って、マライア・キャリーの<All I Want For Christmas Is You>以降出てきてないと思うのですが、あれももう20年以上前です(1994年)。そろそろ「リリース即クラシック」なナンバーが出てきてもいい頃かもしれません。

 何度も書いちゃいますが、僕はクリスマスというのは楽しいパーティーというだけでなく、暖炉の中で薪がはぜる音とか、教会のろうそくのきらめきとか、朝カーテンを開けると灰色の空から静かに雪が舞い落ちてくる光景とか、人を謙虚な気持ちにさせる、パーティーとは真逆の側面もあると思っているので、マライアのオラついたノリよりも、Siaの粘っこくてどこか陰のある曲の方が僕が描くクリスマスにはフィットします。<Ho Ho Ho>のシャッフルなんだけどちょっと悲し切ない感じとか最高なんだけどな。







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