_SX466_

あえて今の時代に
「ギターロック」を選ぶ痛快さ


 先週に続いて今週も2017年の良かったアルバム(17年が終わってから紹介するのも間の抜けた話なのですが)。DYGLの1stアルバム『Say Goodbye To Memory Den』です。

 DYGLと書いて「デイグロー」と読みます。メンバーは4人。日本のバンドです。

 が、僕は最初、海外のバンドだと勘違いしました。元スーパーカーのナカコー(中村弘二)が以前、「最初の1音だけで日本のアーティストか海外のアーティストかわかる(それくらい明確な違いがある)」というようなことを呟いていましたが、僕はDYGLがロンドンのバンドと言われても信じちゃうと思う。そのくらい、サウンドにも英語の発音にも日本人ぽさが感じられません

 着古してあちこちほつれたり色が落ちたりした洋服なのに、その無造作感や自然さが新品の服よりもむしろ素敵に映ることがありますが、DYGLの音楽にもそれと同じような魅力を感じます。2本のギターの絡み方や、タイトなんだけど荒々しく聴こえるドラム、ボーカルとコーラスの重なり方。僕はかつてのリバティーンズを思い出しました。

 レコーディングの技なのかミックスの妙なのか僕にはわからないんですが、全体が1枚の薄皮に包まれてるようなデッド感のある音(イヤホンで聴くと強く感じます)もかっこいい。そう、このバンドに関してはとにかく「かっこいい」という言葉しか出てきません。こういうシンプルかつピュアな「これぞギターロック!」と呼びたいバンドが日本から出てきたことがめちゃくちゃ嬉しいです。

 実はDYGLのメンバー4人のうち、3人はYkiki Beatという別のバンドにも在籍していました(Ykikiは16年に活動休止)。Ykikiの結成が10年でDYGLが13年なので、丸3年は両方の活動が被ってたってことになります。

 ちなみに、ボーカル/ギターの秋山信樹とベースの加地洋太朗はどちらのバンドでも担当楽器は同じなのですが、嘉本康平はYkikiではギター、DYGLではドラムと担当が異なります。初期のDYGLではメンバーの担当楽器は流動的だったそうなので、その名残なんでしょうが、それにしても器用すぎてすげえ

 Ykiki Beatはどういうバンドだったかというと、シンセ担当のメンバーがいることに表れているように、カラフルで都会的でダンサブルで、一言でいえば「陽」な音楽を鳴らすバンドでした。僕はYkikiの方は前から知ってたのですが、DYGLはあまりにサウンドが違うので、まさか同じメンバーだとは思いませんでした。

 んで、僕が面白いなあと思うのは、地上波テレビのEDテーマに選ばれるほど「今風」なYkikiから、今や「古典的」といってもいいほどクラシックなスタイルとなった4ピースのギターロックまでカバーする、彼らの懐の深さ、レンジの広さです。偏見かもしれないですけど、今の時代ギターロックをやろうとする人間って、保守的で固陋なイメージないですか?

 個人的には、Ykikiのようなところから、オーソドックスなガレージやパンクの匂いを感じさせるDYGLへと、まるで時代と逆行するように変化した彼らの意志が頼もしく感じます。その一方で、Ykikiがなくなったことで「Ykiki的な何か」が今後DYGLにもフィードバックされてスタイルが変化するとしても、それはそれで楽しみ。

 彼らは日本と海外を行き来しながら活動を続けてるらしいので、そんな感じで国内シーンと適度に距離を取りながら、屹立した存在として今後も突っ走ってほしいですね。

 最後に、音楽とは全然関係ないんだけど、DYGLのボーカルの秋山信樹って、菅田将暉に似てません?『直虎』見ながらずっと頭にDYGLがちらついて仕方なかった…。







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