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「ペインズ」という名の
夢の続き


 当初は、昨年の秋に出ると言われていた1stアルバムですが、2度ほどの発売延期を経て、ようやくこの1月にリリースされました。東京出身の5ピース、Luby Sparks。2016年に、現役の大学生男女5人で結成されたバンドで、僕にとってはフルアルバムのリリースをもっとも心待ちにしていたアーティストの一組でした。

 最初に聴いたのは、確かSoundCloudにアップされた<Hateful Summer>だったと思います。

 光の乱反射のようにキラキラしたギターのノイズ、細い糸を縫うような繊細なメロディ、遠くから聴こえてくる蜃気楼のような男女混声ボーカル。全ての要素が僕のハートを鷲掴みにして完璧なキムラロックを決めたのでした。そしてこの完璧ぶりに対して、僕は心の中でこう呟きました。「ペインズはここにいたのか」と。

 NYブルックリン出身のバンド、The Pains Of Being Pure At Heart。09年に出たセルフタイトルのデビューアルバムは、ひと言でいうなら「100点満点」のアルバムでした。この10年でもっとも影響を受けたアルバムを1枚選べと言われたら、僕はおそらくペインズの1stを選ぶと思います。特にここ数年は、自分が音楽を選ぶ基準に対し、ペインズの影響がいかに大きかったかを自覚する機会が増えました。And Summer ClubHomecomingsも、AlvvaysThe History Of Apple Pieも、ペインズがいなきゃ聴いてなかったと思います。

 ただし、ここでいうペインズは、あくまで2nd『Belong』まで。僕は何よりもバンドとしてのペインズのサウンドが好きだったので、フロントマンであるキップ・バーマンの実質ソロプロジェクトになった3rd『Days Of Abandon』以降は、少し距離を置いて眺めていました。(今思うと3rdがリリースされたのと同じ14年に、ホムカミ『Homecoming With Me?』とAlvvaysの1stと出会っているのは象徴的だなあ)

 僕はある意味では、ペインズ(の1stと2nd)という名の夢の続きをずっと探していたのだと思います。そして、1stから10年近く経ってようやく見つけた「夢の続き」が、Luby Sparksだったのです(他のアーティストに重ねあわせられるのは、本人たちにとっては不本意なことかもしれませんが、僕にとっては最大級の賛辞のつもり)。

 今回リリースされた1stは、想像に反してとてもフレッシュな印象のアルバムでした。というのも、これまでの音源から、僕は彼らに対してセピア色で、晴れよりも曇り空が似合うようなイメージを持っていたからです(Camera Obscureをカバーしてたのも理由の一つ)。ところが今回のアルバムは瑞々しい躍動感があってバンドの印象が変わりました。

 1曲だけ挙げるなら、10曲目の<Teenage Squash>。ガラス細工のようなヴァースと一気に加速するコーラスとを繰り返す激しい二面性を持つこの曲は、その構成自体が若い頃の気持ちのありようを表しているようです。世界の美しさに涙する心と、その美しさの前で自分はなんて醜いんだという激しい怒り。聴いていると、胸が引き裂かれそうな気持ちになります。

 実はこの曲、最初に聴いたのはアルバムではなく、ライブでした。そのライブというのは、1月末に行われた、他ならぬペインズの来日公演。Luby Sparksは東京のステージでサポートアクトに選ばれたのです。サポートアクトはチケット発売時には発表されてなかったので「Luby Sparksだといいなあ」とは思っていたんですが、まさか本当に実現するとは。

 ペインズということで元々チケットを押さえてはいたものの、そこにLuby Sparksが登場したことで、僕の中ではこの日のステージが世代交代の象徴になるのではという予感が湧いてきました。事実、当日のLuby Sparksのステージは「09年の頃のペインズはきっとこうだったんじゃないか」と思わせる繊細さと緊張感がありました。「貴重なバトンタッチの儀式を見たなあ」と、ペインズが登場する前の時点ですでに僕は何かを見終えたような気分になっていたのです。

…ところが、その10分後、実際にはまったく「世代交代」でも「バトンタッチ」でもなかったことを僕は目撃するのですが、その話は次回。








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