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華やかなだけが
クリスマスじゃない


 The Beatmasや昨年のSIAなど、これまでこのブログでは何枚かクリスマスアルバムを紹介してきました。徐々に量がたまってきたので、新しくクリスマスのカテゴリを追加しました。

 我が家のクリスマスアルバムコレクションには今年も続々と新しいカタログが増えています。今年出会ったなかで、もっともインパクトが大きかったのがこれ。米ダルース出身の3ピースバンド、Lowが1999年にリリースした『Chrismas』という8曲入りのミニアルバム。我が家のコレクションのなかでも特にユニークなクリスマスアルバムです。

 どこがそんなにユニークなのか。ポイントは二つあります。

 一つは、本作が「USオルタナ風アレンジのクリスマスアルバム」であること。ローファイでかさかさに乾いていて、重たい頭痛のような陰鬱さが漂うこのアルバムのサウンドは、今や懐かしくなってしまった90年代USオルタナのイメージとぴたりと重なります。

 ジャズ風だったりブルース風だったり、クリスマスソングをちょっと変わったアレンジに仕立てた作品はたくさんありますが、「USオルタナ風」なアルバムはなかなか見かけません。白眉は3曲目に収録された、鳴りっぱなしのノイズのなかで歌われる<Little Drummer Boy>。同曲の数あるカバーのなかでも屈指の名アレンジだと思います。

 ちなみに、Lowというバンド自体は、いわゆるUSオルタナとは距離をとったグループだと理解しています。Lowはもっとドラスティックというか、曲のテンポを極端に遅くしたり、メロディから抑揚を抜いたりと、かなりハードコアなバンドです。そんな彼らが珍しくポップネスに歩み寄った作品という意味でも、このアルバムは貴重です。



 もう一つのポイントは、個人的で主観的な話になります。一見レアで、文字通り亜流(オルタナ)な代物に見えるこのアルバム。ですが僕は、このアルバムこそ実は本来のクリスマスソングのフィーリングに近いのではないかと感じるのです。

 僕のクリスマス観は、子供の頃に過ごした米ボストンでの体験が基になっています。

 東京でも12月になると、表参道や六本木、新宿あたりでクリスマスのイルミネーションが飾り付けられます。これらの日本のクリスマスとボストンのクリスマスは、まるで違います。一番の違いは、ボストンのクリスマスの方がずっと地味であること。確かに街のいたるところにツリーや電飾が飾り付けられますが、光の量は控えめで、日本のような目が痛いほどのギラギラした感じはまったくありません。

 ボストンのクリスマスは、もっとずっと静かでアットホームです。イブの夜、街のメインストリートへ行ってみると、そこには住民全員が集まったのではないかと思うほど大勢の人たちが集まって、聖歌隊の歌やバンドの生演奏を聴きながらお祝いをしていました。僕も家族や同級生たちとその輪に入って音楽を聴いたり、サンタクロースからお菓子をもらったりしました。もう30年も前のことですが、僕は今でも昨日のことのようにそのときの光景を思い出せます。

 ボストンのクリスマスには、華やかさだけでなく、宗教イベントとしての厳粛さのようなものがあった気がします。飾り付けや人々の服装にいたるまで、はしゃぎつつも節度があり、クリスマスツリーや電飾で飾り付けられた郊外の家の庭にさえも、「お祝いをする」という宗教的な裏付けがありました。

 だから、クリスマスソングというと華やかで心が浮き立つようなアレンジのものだけをイメージしがちですが、実はそれははあくまでクリスマスというイベントの一面でしかなく、孤独の寒々しさを思わせる曲や、ある種の陰鬱さを感じさせる曲もまた、クリスマスには欠かせないと僕は思っているのです。

 前述の<Little Drummer Boy>にしても、ストイックな巡礼者のように重たい<Long Way Around the Sea>にしても、孤島の崖に立つ教会のような<If You Were Born Today>にしても、「いわゆるクリスマスソング」ではないかもしれません。でも僕は、このアルバムが単に風変わりなだけのアイテムだとは思いません。むしろ、「いわゆるクリスマスソング」よりもこの作品のほうが、30年前のボストンのクリスマスの記憶を鮮やかに蘇らせるのです。








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