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「春夏秋冬」で見る
前期アルバム4作品


 ここまですでに2回も書いてきたZARDの話ですが、まだ終わりません。

#第1回:ビーイングという名の「工場」
#第2回:カノン進行職人「織田哲郎」現る

 第3回の今回はタイトルの通り、アルバムアーティストとしてのZARDについて書いてみます。

 ZARDをアルバムアーティストとして見たことがある人って、ほとんどいないんじゃないでしょうか。シングルとベスト盤しか知らないっていう人の方が圧倒的に多いと思います。

 でも、実は1990年代の前半から中盤にかけて、ZARDは年に1枚のペースでオリジナルアルバムをリリースしていました。各作品にはシングルとは異なるカラーをもったアルバムオリジナル曲が数多く収録され、明らかにそこには一つひとつのアルバムを、あるコンセプトやトーンで統一しようというトータルアルバム的思想がありました。誰もが知ってるシングルのヒット曲は、あくまでZARDの一面でしかない!ということが今回の記事のテーマになります。

 ただ、ZARDはキャリアを通じて全部で11枚のアルバムをリリースしていますが、「アルバムアーティスト」としての全盛期は、先ほど書いたとおり90年代の前半から中盤にかけてです。具体的には3rd『HOLD ME』(’92)から6th『forever you』(’95)まで。7th『Today Is Another Day』以降は既発曲やストックの流用が収録曲の半分以上を占めるようになるため、純粋な意味での「オリジナルアルバム」からは遠ざかります。また1st『Good-bye My Loneliness』と2nd『もう探さない』(共に’91)は収録曲数・時間が少なく、僕が個人的に考えるアルバムの定義から外れるため除外しました。

 ということで『HOLD ME』、『揺れる想い』、『OH MY LOVE』、『forever you』の4枚ということになるのですが、シングルでいえば4th<眠れない夜を抱いて>から14th<Just believe in love>までになり、もっともZARDが売れていた全盛期と重なります。ZARDと言われて多くの人が名前を挙げるであろう代表曲を連発していたその裏で、作品ごとに異なるカラーをもったアルバムをコンスタントに作っていたというそのギャップがまずはすごい。

 では具体的にどう異なっていたのかという話ですが、この4枚のアルバムはちょうど「春夏秋冬」のイメージで説明することができます。

 まず”春”の3rd『HOLD ME』は、花があちこちで咲き始める季節のごとく、一言でいえば「カラフル」。背景には作曲家のバランスのよさがあり、織田哲郎、栗林誠一郎、川島だりあ、和泉一弥、望月衛介の5人ものクリエイターが参加しています。前回<眠れない夜を抱いて>の話で織田哲郎について書きましたが、実は彼がこのアルバムに提供したのはこの1曲しかありません。

 反対に存在感を発揮しているのが川島だりあ。栗林誠一郎と並んで11曲中4曲も提供していますが、川島だりあの4曲はすべてアルバムオリジナル曲です(栗林は内2曲がシングルB面)。

 織田、栗林、川島というZARD前期を代表する作曲家3人のなかでもっとも「洋楽ハードロックの匂い」を感じさせるのが川島だりあだと僕は思っているのですが、そういう彼女のトーンがそのままアルバムのカラーになっています。ラストの<So Together>なんていかにもって感じですね。第1回で「ZARDは元々メタルだった」と書きましたが、そのコンセプトがギリギリ残っているのがこのアルバムです。

 続いて4th『揺れる想い』。大ヒットした同名シングルをアルバムのタイトルにももってくる(しかも1曲目に)なんて、よほど自信があるんだなあと当時(中学生)から思っていましたが、ポカリスエットのCMソングだった表題曲のイメージどおり、スカッと突き抜けるようにポップな曲が連続する、まさに”夏”なアルバムです。おそらくZARDのパブリックイメージにもっとも近いのがこの作品

 次の『OH MY LOVE』は、タイトル通りラブソングが多いアルバムなのですが、『揺れる想い』に比べると別れや恋愛のしんどさを感じさせる歌詞が目立つ作品です。ポップさでは『揺れる想い』に比肩しますが、全体のトーンは淡いセピア色の雰囲気で、例える季節としては間違いなく”秋”です。

 最後の『forever you』は、再び前向きなラブソングに戻ってくるのですが、明らかに「1周回ってきた」感があります。

 それが端的に表れているのが、1曲目の<今すぐ会いに来て>と表題曲<Forever you>。<今すぐ〜>はシャッフルリズム、<Forever〜>はアコースティックと、どちらもZARDではかなり珍しいアレンジの楽曲です。ラストに収録されたDEENのセルフカバー<瞳そらさないで>もアコースティックアレンジで、全体的にオーガニックな温かさが目立つアルバムです。

 そういう意味で”冬”なのですが、ハードなギターサウンドが中心だったかつてを思えば、音楽的にも季節が一巡したことを感じさせます。この後7枚目から、既発曲が大半を占める実質的なベストアルバムへと変わっていくのは、自然な流れだったのかもしれません。

 ここまで4枚のアルバムをざっと紹介しました。「春夏秋冬」というのは僕の例えですが、少なくともそれぞれが異なった色をもっている、すなわち一つひとつのアルバムが異なるコンセプトによって作られていることがなんとなくわかってもらえたかと思います。特に『揺れる想い』からの3作は1枚ごとにガラリと変わるので、その変化自体が聴きどころであり、シングルだけではわからないZARDの一面を見ることができます。

 そして、このアルバムごとの変化の立役者となったのが織田哲郎と並ぶもう一人のメインコンポーザー、栗林誠一郎でした。

 前回、織田哲郎はシングル曲を多く作ったと書きましたが、実はアルバムオリジナル曲は栗林誠一郎の方が多いのです。実際、ここに挙げた4作品で栗林は常に提供曲数がもっとも多い作曲家であり、『揺れる想い』からの3作に関しては、どれも半数以上を彼の楽曲が占めています。シングルは織田、アルバムは栗林という意図的な役割分担があったのでしょう(したがってZARDに書いた曲数は栗林の方が多い)。必然的に、アルバムのカラーを演出する役割は彼が背負っていました。

 それを象徴するのが4th『揺れる想い』。前述の通り、このアルバムは表題曲のもつ「さわやか」「透明感」なイメージをそのまま拡大したアルバムなのですが、言い換えればそれは「織田哲郎っぽいアルバム」なわけです。しかし実際に収録された織田曲は3曲(しかも内2曲は既発シングル)のみで、一方の栗林曲は全体の半分に及ぶ5曲。

 本来この2人の作風は正反対と言っていいくらい違うのですが、それでもこのアルバムが「織田哲郎っぽい」と感じるのは、(実際そこまであからさまだったかは置いといて)栗林が織田哲郎の作風に寄せているということです。正直に言うと、僕は今回この記事を書くためにクレジットを確認するまで<Season>、<君がいない>、<あなたを好きだけど>の3曲は織田哲郎の曲だと思ってました。この僕の長年の勘違いこそ、栗林のアルバムへの貢献度合いを逆に証明しています。

 しかし、栗林誠一郎の本来の持ち味は、前回触れたとおり「マイナー調」。織田哲郎が心を湧き立たせるメジャー調の世界だとしたら、栗林は心をギュッと締め付ける淡く切ないモノトーンの世界です。

 そして、その魅力が大爆発しているアルバムが、5枚目のアルバム『OH MY LOVE』。僕はこのアルバムがZARDの最高傑作だと思います。思いますが、長くなってきたのでこのアルバムの話は次回。やべえ。マジで終わらねえ。








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