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古い音源の「アーカイブ性」向上と
クレジット情報へのアクセスが課題


 Spotifyを使い始めて2年半が経ちました。Spotifyについてはこれまで、使い始めた直後、使って1年後と、2回記事を書きました。
#第1回 ついに「ストリーミング配信」に手を出した
#第2回 Spotifyを1年使ってあれこれ思うこと

 正直「もう書くことはないかなー」と思っていたのですが、最近、これまでとは少し違うことを考えるようになりました。今回は、そのことについて書いてみます。

 2016年の年末にサービスを利用し始めたとき、何よりも驚いたのは、どんな曲名/アーティスト名でも、検索したらほぼヒットする圧倒的な登録曲数でした。ひと月にたった1,000円払うだけで、世界のどのレコードショップよりも豊富なライブラリが手に入るということに、喜びを通り越してただただ呆然としました。

 ところが最近、それが錯覚だったと思うようになったのです。確かに、相変わらず「ど」がつくほどインディーなアーティストでもカバーされているし、それどころか新譜をサブスクリプションでしかリリースしないという流れは(特に若いアーティストのなかで)確実に強くなっているし、2年前は海外勢に比べて参入率が低かった国内勢も、ユーミンやYUKIなど大物の参入が続いたことで一気に加速しそうな気配があります。

 でもそれは、あくまで“最近の”アーティストの話。

 僕は年明けからずっと、1960年代以前のアメリカンポップスをたくさん聴いているのですが、その頃のアーティストの音源がSpotify上でヒットしない事態にたびたび出くわします。厳密にいうなら、音源は上がっていても、当時と同じカタログで聴けないケースが多いのです。

 例えば、以前紹介したエキサイターズの1stアルバム『Tell Him』。Spotifyにはシングル<Tell Him>が上がっているだけで、アルバムは上がっていません。19年3月現在、オリジナルと同じ形で聴ける彼女たちのアルバムはセルフタイトルの2ndだけです。

 過去にブログに書いたアーティストでいうと、さらに驚いたのはシャングリラス。全米1位を獲ったことのあるグループにもかかわらず、彼女たちのアルバムもオリジナルの形で上がっているのは1枚もありません。ベスト盤や編集盤がいくつか上がっているので、音源そのものはカバーされているのですが、当時Red Birdからリリースされたカタログ通りに年代に沿ってフォローしようとしても、少なくともSpotify上では無理なのです

 コニー・フランシスもダメ。以前紹介した『Rock’n’Roll Million Sellers』も『Country & Western Golden Hits』もありません。彼女の場合はカバー曲こそ素晴らしいのに、Spotifyで聴けるのはイタリアのカンツォーネなどごく一部だけという状況です。

 まあねー、当時はあくまでシングルが主流の時代だったので、アルバムというフォーマットは「ヒット曲が溜まったら出す」程度の認識の、アーティストよりもレーベル側の意図が強く反映されたものでした、そういう時代のアルバムについて、「オリジナルであること」をストイックに求めても、あまり意味はないのかもしれません。原盤権の保有者からしても、50〜60年代の古い音楽なんて、オリジナルカタログ通りにアップしたところで、そもそも聴く人がほとんどいないと見切りをつけている可能性もありそうです。

 いずれにせよ、圧倒的に見えたSpotifyのアーカイブ性も、古い時代の音源となると途端に精度が落ちてしまうことが徐々にわかってきました。ですが、個人的にSpotifyにもっとも期待していたのは、この「アーカイブ性」だったのです。

 CDを頻繁に買う人はわかると思うのですが、CDというのは放っておくとすぐに廃盤になる代物です。マイナーな作品に限った話ではなく、例えばニューオーダーなんていう超大物のアルバムでさえ、初期のころのアルバムをCDで手に入れようと思ったら中古しかありません。CD離れという世界的な潮流もあって、廃盤になるサイクルは昔よりも確実に加速しています。だからこそ、サブスクリプションのアーカイブ性は希望だったのですが、やはり完ぺきではなかったようです。なんでもそうですけど「100点」ってのはなかなかないものですね

 ということで、古い音楽に的を絞ってCDやレコードをまた買い始めたのですが、そこでもう一つ気づいたフィジカルのメリット(サブスクリプションのデメリット)があります。それは、作曲家やプロデューサー、演奏者、レーベルといった周辺情報に対するアクセスの良さ

「今更?」「そこかよ?」と言われそうですけど、やっぱりインナースリーブや裏ジャケからクレジット系の情報がその場でわかるのは非常に大きいですよ。もちろん、ネットで探すことはできるんですけど、断片的な情報しかなかったり、ヒットしてもWikipediaなど非オフィシャルな情報だったりと、目当ての情報を網羅的に入手するには、実はそこそこ高いリテラシーが要求されるんですよね。

 まあね、インナースリーブなんて見ないよって人が大半かもしれませんけど、僕も一度も目を通さないまま放置した経験ありますけど、でもね、見るか見ないかにかかわらず、「誰がこのアルバムを作ったか」という情報が、誰もが(少なくともその作品を聴いている人には)アクセスできる場所に保管されているということが重要なんです。だってクレジットってそういうものだから。

 映画は、映画館であれブルーレイであれネット配信であれ、必ず最後にクレジットが流れます。見る見ないは観客の自由だけど、クレジットも作品の一部として常に本編とセットで管理されています。音楽だけが今のところ、それら裏方情報の引っ越しに失敗しているんです。いつかフィジカルが完全になくなったとき、これらの情報は誰がどこで管理するんでしょうね。

 ということで、最後ちょっと脱線しちゃいましたが、Spotifyを使い始めて2年半経ち、重宝はしているものの、CDに完全に取って代わる手段にはまだなりえない…という話でした。前回の記事では「気持ち」の面でCDを完全には脱却できないという話を書きましたが、もうちょっと実際的というか、物理的な面からもCDへの評価が再燃しそう、という結論です

 最後にSpotifyのポジティブな面を取り上げてフォローしたいんですけど、カスタマーサービスのクオリティはめちゃくちゃ高いです。以前、DLした音源がUI上で再生できない事態になって困ってしまい、愚痴をTwitterで呟いたところ、そのツイートを見つけた公式アカウントがリプライをくれて、そのままDMでやりとりして小一時間で解決してくれた…ということがありました。対応のスピードと細やかさは素晴らしかったです




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