週刊「歴史とロック」

歴史と音楽、たまに本やランニングのことなど。

■劇団のこと

【稽古場日記更新】通し稽古!

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今週も稽古場日記が更新されました。
先週末に行われた第1回の通し稽古について、
スタッフの神谷さや香がレポートしています。

コチラ

「通し稽古」というのは、
オープニングからエンディングまでを1度も止めずに演じてみる稽古のこと。
物語の骨格や、演じる上での力の入れどころ・抜きどころなど、
細切れに稽古しているだけでは分からないポイントを掴むことができる、
重要な稽古なのです。

衣装やメイク、小道具なども本番通りにやるので、
今回の稽古場日記はネタバレ写真だらけです!

さて、本番まで残り3週間。
早くも10/5(金)夜のステージは間もなく満席になりそうです。
他のステージも予約が埋まり始めていますので、
見に来ていただける方はお早めに!


theatre project BRIDGE vol.13
『スターマイン』
シアターグリーン BOX in BOX THEATER

10/5(金)19:30
10/6(土)14:00 / 19:00
10/7(日)14:00 / 19:00
10/8(月祝)14:00
※開場は開演の30分前です

チケット発売中!





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【お知らせ】公演情報ページオープン

チラシ表面・再校


BRIDGEのHPに、『スターマイン』の公演情報ページがオープンしました!

コチラ

今作の簡単なあらすじも載っていますよ。
チラシをまだ見てない方は是非コチラをご覧ください。

今回もね、名作です……。

今回の作品は、
家族にも友人にも嫌われ、
誰からも評価されず、
何の夢も叶えられず、
あっけなく死んじゃった男と、
その娘の物語です。

タイトルの響きといい、なんだかハートフルなお話っぽいですが、
ところがどっこい、
中身はゴリゴリのパンクです。
観終わった後、客席で「うおおお!」と叫んでもらえたら嬉しいな。

チケット予約、お待ちしています!


theatre project BRIDGE vol.13
『スターマイン』
シアターグリーン BOX in BOX THEATER

10/5(金)19:30
10/6(土)14:00 / 19:00
10/7(日)14:00 / 19:00
10/8(月祝)14:00
※開場は開演の30分前です

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【稽古場日記更新】残り1カ月!

theatre project BRIDGE2年ぶりの本公演『スターマイン』、
本番までいよいよ1カ月を切りました!
チケットもついに発売開始。
ご予約はお近くのBRIDGEメンバーか、チケットぴあまで!

旗揚げして10年間は(ほぼ)毎年1回は公演を打ってましたが、
これからは2〜3年に1度のペースに落ち着くと思います。
なので、今回の『スターマイン』を見逃すと、
3年間も待たなきゃいけない!
なので、皆さま是非劇場に見に来てね。

稽古もいよいよ後半戦です。
今週の稽古場日記は、役者のフジサワパンチ(元・福●貴之)が担当。→コチラ
掲載の写真を見ると、あまり緊迫感が伝わってきませんが、
役者もスタッフも、まさに「大回転」的状況。

今週末は冒頭シーンからラストまで全て本番通りにやってみる、
「通し稽古」をやる予定。
次週の稽古場日記でその手応えをご報告します!


theatre project BRIDGE vol.13
『スターマイン』
シアターグリーン BOX in BOX THEATER

10/5(金)19:30
10/6(土)14:00 / 19:00
10/7(日)14:00 / 19:00
10/8(月祝)14:00
※開場は開演の30分前です

チケット発売中!





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【稽古場日記更新】新人さん

2年ぶりの本公演『スターマイン』まで、間もなく残り1カ月。
9/1(土)からチケット発売開始です。
お求めはチケットぴあかお近くのBRIDGEメンバーまでご連絡ください。
幾多の有名劇団が立ってきたシアターグリーンの舞台に、
ついに我々theatre project BRIDGEも名を連ねます!

さて、今週の稽古場日記が更新されました。

コチラ

今回の担当は新人の河村恵実。
大半がアラサーの劇団にあって、彼女は若干21歳というぶっちぎりの若さ!
いや〜、若い。若いから、とっても頭が悪い(笑)!
頭が悪いからめちゃくちゃ怒られるんだけど、
一向にへこたれない!
ガンガン立ち向かってくる!
そんな、ガッツ溢れる新人ちゃんです。
今回の日記をご一読いただければ、彼女のキャラが伝わると思います。

ダンスが一向に上手くならない自分のことを、彼女はこう書いています。

「運動神経もリズム感覚も天国に置いてきた」

・・・いやあ、斬新な表現です。
天国に置いてきちゃったそうです。
天使にでもなったつもりでしょうか(笑)。
今度の稽古は、この表現について怒るところから始めたいと思います。


theatre project BRIDGE vol.13
『スターマイン』
シアターグリーン BOX in BOX THEATER

10/5(金)19:30
10/6(土)14:00 / 19:00
10/7(日)14:00 / 19:00
10/8(月祝)14:00
※開場は開演の30分前です

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君の歌は間違いなく「僕の歌」だった

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『LITTLE BUSTERS』



実は少し前に転職をしました。
これまでも何度か仕事を変わっているので、転職そのものには慣れているのですが、
それでもやっぱり緊張はします。
覚えなきゃいけない仕事の手順や新しい職場環境のことで頭がいっぱいになり、
なかなかオンとオフを切り替えられません。

そこで、月並みですが最近意識的に通勤時間には音楽を聞くようにしています。
緊張状態を解くためには、聞き慣れない音楽(例えば新譜)よりも、何度も聞いて耳に馴染んだものがいい。
それもなるべく日本語がいい。
ということで、自然と行き着いたのがピロウズでした。

このブログでも何度も紹介してきたピロウズですが、この1年くらいはほとんど聞いていませんでした。
しかしここにきて、上記のような実益的な(?)理由から、
生涯何度目かのピロウズブームが再燃しています。
ピロウズのアルバムは大体1枚30〜40分なので、片道で1枚聞けてしまうところも通勤向きです。

ただ、一つ困った点は、ピロウズを聞いていると、
確かに仕事のことは頭からキレイになくなっていくのですが、代わりに別のものが頭を占拠することです。
ピロウズが連れてくるもの、それはズバリ、僕の所属する劇団「theatre project BRIDGE」です。

BRIDGEでは、舞台で使う曲の全てを僕が選んでいます。
ちゃんと数えたわけではないのですが、これまで劇中曲として最も多く使っているのがビートルズ。
ピロウズは2番目でしょうか。
しかし、ビートルズはBGMとして使っているケースがほとんどなのに対し、
ピロウズはほぼ全曲、オープニングやエンディング、あるいはダンスなど、「キメ」の曲として使っています。
ピロウズの曲は常に、何らかのテーマを背負ったものとして使ってきました。
そのため、少なくともメンバー内では、ビートルズよりもピロウズの方が圧倒的にインパクトが強いのです。

なぜ、ピロウズの曲にそんなにも作品を託してきたのか。
それは単純に、僕が彼らの曲に強いシンパシーを感じてきたからです。
旗揚げしたばかりの劇団で、何とか自分が誇れるものを作ろうと悪戦苦闘していた20歳の頃、
孤独感やさみしさを慰めて、勇気をくれたのはピロウズの曲であり、山中さわおの姿勢でした。
僕は彼らの曲を聞きながら自らを奮い立たせ、台本を書いていました。
当時の僕にとって作品とピロウズという存在は、ほとんど不可分のものでした。
劇中で彼らの曲を使うことは、極めてナチュラルな判断だったのです。

しかし、当時は永遠に続くかと思っていた“ピロウズ熱”も、時間が経つにつれて徐々に醒めていき、
いつの間にか僕は彼らの曲がなくても、自分の作品を作れるようになっていました。
実際にはその後も舞台で曲は使い続けましたが、
2006年の『リボルバー』で使った<MY FOOT>という曲を最後に、
少なくとも作品のメインテーマを背負うことはなくなりました。

ただ、それは「飽きた」ということとはちょっと違います。
20歳の頃の気持ちというのは、たとえそのままの形ではないにせよ、
間違いなく今でも僕の胸の奥にあります。
だからこそ、今こうして久々にピロウズの曲をどっぷりと聞くと、当時の気持ちを思い出して、
何とも言えない、辛く苦しい気持ちになるのです。
ただ、当時に比べれば、僕はもうそこまで孤独じゃないし、さみしくもない。
あのヒリヒリとした数年間をじっと耐えたことで、僕は僕なりの幸せを見つけたのかもしれません。
だから、「飽きた」ではなく「卒業した」という表現が相応しいのかもしれません。

1998年にリリースされた『LITTLE BUSTERS』というアルバムは、
以前紹介したピロウズ最大の転機となった『Please Mr. Lostman』の次の作品にあたり、
ここからいよいよピロウズ独自の「オルタナロック&ポップ」な方向に進んでいきます。
BRIDGEで一番最初に使った曲である<ONE LIFE>と<Blues Drive Monster>、
後に同名タイトルの作品まで作ってしまった<PATRICIA>と、
個人的に思い入れの深い曲が多数収録されているアルバムなので、聞いていてとても辛くなります(笑)。











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僕の夢は、Explorer

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noodles
『Explorer』


2010年は劇団の結成10周年だったので、いつになく「続ける」ということを考えた一年だった。
作品を作り続けること。
人間関係を抱え続けること。
続けるということは、『続けてもいいのかな』という疑問を、絶えず自分自身に問いかけ続けることだ
―あるベテランのバンドマンがインタビューでそう語っていた。

方向性を迷ったり、モチベーションが低下したり、自分の才能に失望したり、
「物を作る」という道にはいくつもの起伏と曲がり角がある。
歩けば歩くほど、道は入り組んでいる。
もちろん、手ごたえを得たり、評価されたり、嬉しいこともたくさんある。
だがそういった出来事が行く先を正しく指し示してくれるとは限らない。
良い作品を作っても、それは次の作品の質を保証してはくれないのだ。
結局、作品を面白くできるのは過去の遺産ではなく、現在の自分の努力しかない。

そして、劇団やバンドといった集団での創作活動の場合、
さらに「人間関係」という全く別のタイプの命題がついて回る。
メンバー間のモチベーションが一致しないこともあるし、続けるうちに目指す方向がズレてくることもある。
途中で誰かが脱落することもあるかもしれない。
「最初は仲が良かったのに、次第に関係が冷え切って・・・」というような、
単純な(しかしシビアな)ケースだってある。

活動主体が個人であれば(小説家や写真家、画家、あるいはソロ歌手)、
創作にまつわる問題は基本的には全てその人の中で自己完結できる。
ダメなら本人が頑張ればいいだけの話だし、休むのも辞めるのも本人の責任だけで済む。
だが集団はそうはいかない。

そもそもクリエイティビティとは本質的にとてもパーソナルなものだから、
それを他人と一緒にやるという行為にはハナから無理があるのだ・・・
と言うとミもフタもないけれど、とにかく集団で創作活動を続けるということは、
絶え間ない緊張感を乗り越え続けていくことなのだ。
冒頭述べたバンドマンの言葉には、創作者として、ある集団の一員として、
ひたすら己と向き合ってきた者の苦渋が滲んでいる。

ところで、作品を作り続ける上で難しい問題の一つが「変わること」と「変わらないこと」である。
「進化」と「個性」と言い換えてもいい。
これまでと路線を変えたり、制作環境を大きく変えてみたり、変化を求めるチャレンジ精神は、
観客に飽きられないため、何より作り手自身が飽きないために必要なことだ。
だが同時に、いかに変化を起こそうが、その中心に頑としてブレない自分自身、
つまり個性を残したいと望むのも、作り手としては正直な思いだろう。
長く創作活動を続けるためには、反発し合うこの二つの思考をうまくなだめ、統御していかなくてはならない。

「変化とは、作者の自然な気持ちの移り変わりによって起こらなければならず、
『変えよう』と思って起こす作為的な変化は『変化』とは言えない。
それに、個性というものは自覚的に出したりひっこめたりできるものではなく、
それを意識している時点で『個性』とは呼べない」


そういう意見もあるだろう。確かに正論だ。
その自然体かつ無意識の境地に至ることができるなら、それがもちろん理想である。
でも・・・実際には理屈通りにはうまくいかないものである。集団作業ならなおのこと。
キャリアを積んだバンドでも「結局デビューアルバムが一番良い」と言われてしまう皮肉なケースは
現実として多く存在するのである。



昨年リリースされた新譜の中で、僕が特に印象的だったのはヌードルス『Explorer』である。
ヌードルスは2011年でキャリア20年にもなるベテランバンド。
以前紹介した『METROPOLIS』をはじめ、
これまでにもかっこいいアルバムをたくさん届けてきてくれた。

だが今回の『Explorer』は別格だ。
曲がいい、音もすごくいい・・・まあそういうことなのだが、今回はなんだろう、いつになく“熱い”。
若さがたぎっていて粗く、ドライブ感がものすごい。
ヌードルスというと、オルタナのひねりとガールズバンドとしての可愛らしさが組み合わさった
ちょっと変わった感じ」がウリで、ロックンロール的なものをそこまで期待するようなバンドではなかったはずだ。
なのに、である。

音楽性が変わったわけではない。
これまで築き上げてきたプロダクションがあくまでベースで、その上に熱さやドライブ感が乗っかっただけ。
結果、ベテランとしての成熟さと新人バンドのような粗さを併せ持った、聴き応えのある一枚に仕上がっている。
こういうアルバムを19年目で作ってしまうところがすごい。
19年というタイミングとこの内容で、『Explorer』というタイトル。かっこいい。

長く続けていれば当然それだけ知識も増えるし、技術も高くなる。
しかしヌードルスはずっと技巧的なものを避けてきたようなところがある。
感覚だけを頼りにしながら、それでいて自己模倣に陥ることなく、
こうして「変わる」と「変わらない」を同居させた作品を作ったヌードルスに、僕は去年ものすごく勇気をもらった。
劇団の10周年記念公演『バースデー』のOPにかかった曲は、このアルバムの8曲目<Galaxy Halo>である。








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THE LIBERTINES 『THE LIBERTINES』

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この人たちはどうしてこんなにも
僕の気持ちがわかるんだろう


 リバティーンズの活動期間は短い。デビューは2002年で04年には活動を休止している。その間発表されたアルバムは『up the bracket』(02)とこの『THE LIBERTINES』(04)のわずか2枚。にもかかわらず彼らの与えたインパクトは絶大で、00年代のロック史を語る上で欠かせない存在である。

 バンドの中心はピート・ドハーティとカール・バラー。共にギターを担当し、ボーカルも分け合っている。曲も2人が共同で書いている。英国バンドで、フロントマン同士がタッグを組んで作曲しているところから、このドハーティ/バラーは「21世紀のレノン/マッカートニー」などとも呼ばれている。多分に漏れず2人の仲の悪さも有名で、ステージ上での殴り合いは日常茶飯事。おまけにドラッグ問題なども絡んでゴシップ誌にも散々話題を振りまいた。ただ、時代錯誤的とも言える素行の悪さや暴力性が、歴史化してしまったロック本来のアンダーグラウンドさや猥雑さを感じさせ、00年代のリスナーには逆に新鮮に映ったのかもしれない。ロックの持つ凄みのようなものをリバティーンズは“地”で持っていたのである。

 実を言うと僕は初めから彼らの音楽が好きだったわけではない。00年代のギターロックバンドの代表格としてよくリバティーンズと共に並べられるのがストロークスだが、僕はストロークスの方が圧倒的に好きで、リバティーンズの方はピンとくるところが少なく、しばらく放置していた。彼らの音楽がようやく僕の耳の奥にまで届くようになった頃、リバティーンズというバンドはすでになく、「もったいない」という思いがした。

 僕とリバティーンズとの架け橋となったのは、パンクだった。僕は彼らの音楽を聴くようになる直前、パンクにどっぷりと浸かっていた。よくリバティーンズは伝統的なギターロックの復権を担ったバンドとして語られ、実際英米を中心としたガレージロックリバイバルの流れの中で登場しているのだが、彼らの本質はギターの音の強度ではなく、前述のような退廃性にある。ツインギターの雑然とした絡み合い方、投げやりなボーカルと勝手自儘なハーモニー、「おれはどこへも行けない」「もう音楽さえ聞こえない」といったどん詰まりの歌詞、そして暴力的なパーフォマンスからスキャンダラスなキャラクターまで含めて、リバティーンズの音楽には深い混沌と怒りに満ちている。いわゆる「パンクロック」のイメージからすると音楽的にはだいぶ垢抜けているが、彼らは紛れもなくパンクだ。

 以前、ある雑誌で、リバティーンズのファンの女の子が「私の人生なんて最低でクソみたいなものだけど、でも彼らの音楽を聴いているとそれが特別なものだって思えるようになるの」と話していたのを読んだことがある。僕は彼女ほど切羽詰って自分の人生を「クソ」だとは思っていないけど、それでもごくたまにどうしようもなく嫌な気持ちになる時がある。何もかもが嫌で、手元に爆弾でもあったら躊躇なくスイッチを入れてしまいたくなるような、矛先のない怒り。何も手につかなくて、湿ったシーツの上でただ無気力に身を委ねているしかない。そんな時にリバティーンズを聴くと、少しだけ慰められたような気持ちになる。それは、彼らの音楽があらゆる否定を重ねながらたった一つの肯定を描こうとしているからだ。街中を根こそぎ破壊した後で、一輪の花を植えるように。昔、甲本ヒロトが「パンクロックは優しい」と歌っていたけれど、リバティーンズを聴いているとよくわかる。

 そんなリバティーンズは今年まさかのリユニオンライブを行った。10月、イギリスのレディング・フェスティバル。演奏は若干カタさがあったものの、数万人のオーディエンス、とりわけ10~20代の若いファンたちが彼らの一曲一曲を愛しそうに大合唱している光景は感動的だった。



 ・・・というわけで、ずい分と長く空いてしまいましたが、またぼちぼちとブログを書いていこうと思います。

 5月に最後の更新をした後、僕はtheatre project BRIDGEの10周年パーティーの準備、メモリアルブック『MY FOOT』の編集、そして10周年記念公演『バースデー』と、バタバタした生活を送っていました。パーティーと『MY FOOT』の準備は去年の公演が終わってすぐに始まりましたから、久々に1年中劇団の仕事に携わっていました。

 僕らはこの5、6年、ずっと「結成10周年までは何が何でも続ける」を合言葉に頑張ってきました。キツかったフルマラソンのゴールテープを切った瞬間はきっとこんな気持ちなんだろうなあ、なんてことを今思っています。これからどういう形でBRIDGEを続けていくか、現在メンバー全員で模索中です。

 パーティーに来てくれた方、『MY FOOT』を読んでくれた方、そして『バースデー』を観てくれた方、どうもありがとうございました。本当にありがとうございました。

 旗揚げ以来ずっと、公演パンフレットに「終演後のごあいさつ」という文章を書いてきました。けれど今回の『バースデー』では、10年間で初めて、この「終演後のごあいさつ」を掲載できませんでした。「書こう、書こう」と、初日の朝まで机に向かっていたのですが、ただの一文字も書けなかったのです。

 ずっと前から、10周年の公演パンフレットに何を書こうかを考えていました。10年目という節目に僕は一体何を語るのか、僕自身が楽しみにしていました。けれど、いざその時を迎えると、頭が真っ白になって、一向に言葉は浮かんできませんでした。思いは溢れるほど詰まっているのに、そのどれもが「10年目を迎えた」というたった一つの事実の前には、取るに足らないことのように思えたのです。もう少し時間が経って、僕が思いを言葉に直す冷静さを取り戻せたら、その時は折にふれてこの場で書いていけたらいいなと考えています。

 旗揚げ当初は20歳前後の劇団だったのが、(当たり前ですが)今では30歳前後の劇団になりました。劇団を続けること――それ自体が僕らには試練になってきました。

 でも、辞めません。思うように稽古ができず、みっともない姿を舞台で晒すことになるかもしれません。お客さんが一人、また一人と離れていってしまうかもしれません。運良く続けられたところで結局先細りになり、「あの頃は良かった」などとぼやく瞬間が来るのかもしれません。でも、辞めません。辞める方が楽だからこそ、辞めません。

 ・・・なんてかっこいいこと言っても、終わる時は終わるものです。アマチュアだろうがプロだろうが、集団なんて驚くほどあっけなく、ささいなきっかけで終わるものです。この10年間だって、そういうギリギリな瞬間がなかったわけではありません。結局、そういう緊張感を抱えたまま、やっていくしかないだろうと思います。

 『バースデー』の開演前の劇場ではずっとリバティーンズを流していました。客席の後ろでリバティーンズを聴きながら、僕はずっと自らを奮い立たせていました。「ここからだ、ここからだぞ」と。


レディング・フェスティバルで行われたリユニオンライブより2曲紹介。どちらもリバティーンズの代名詞のような曲です
ファーストアルバム1曲目に収録されている<vertigo>


セカンドアルバムの1曲目<Can’t Stand Me Now>

The Beatles 『PLEASE PLEASE ME』

please please me






“ロック”を呼び覚ました
「1,2,3,ファッ!」


1963年3月発表のビートルズのデビュー・アルバム。
すでに4人は前年に<LOVE ME DO>と<PLEASE PLEASE ME>という
2枚のシングルをリリースしていて、そのヒットを受けて本作が制作された。

収録されたのは全部で14曲。
このうち、シングル2曲とそれぞれのB面
(<P.S. I LOVE YOU>と<ASK ME WHY>)の2曲を除いた10曲を、
ビートルズはなんとたった1日でレコーディングした。
しかも全てほぼ一発録り。
楽器ごとに分けるのではなく、全員で一斉に演奏して録音したのである。
要はスタジオでライヴをやっていた感覚に近い。しかも1日中。

無茶と言えば無茶だろう。
高校生バンドでさえこんなハードなことはしない。
だが、このアルバムの魅力はそんな無茶さである。
曲の尺がどれも短いということもあるが、
全体の凝縮感と疾走感、多少の“崩れ”も気にしない荒々しさは、以降のアルバムでは味わえないものだ。
確かに後期のアルバムの方が演奏も楽曲も質が高いのは事実だが、
このアルバムに込められた“若さ”は捨てがたい。
円熟味は年を経るごとに増すものだが、
輝くような若さは一度失えば永遠に取り戻すことはできないからだ。

このデビュー・アルバムはそんな、一瞬にしかない4人の煌きを、
一発録りという手法により冷凍保存したアルバムなのだ。
なので、このアルバムの響きは時に儚い。

ローリング・ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズは、
レコード・デビューを果たした時(63年6月)に気分が落ち込んだという。
当時のポップ・ミュージック界では、どのアーティストも人気は長くもって3年だと言われていた。
音楽が単なる退屈しのぎ、飽きたらすぐに代替できる消費財としてしか認識されていなかった当時は、
ある意味では現代以上に流行の新陳代謝が激しかった。
本来は泣いて喜ぶべきレコード・デビューも、
キースにとっては“カウントダウンが始まった瞬間”にしか思えなかったのだ。

ビートルズも同じだっただろう。
確かに人気の過熱ぶりはすさまじかったが、
当の4人は「この人気がいつまで続くと思いますか?」というインタビューに対して、
「さあね。そんなに長くは続かないと思ってるよ」と実にシニカルに答えている。

だが、そうはならなかった。
彼らの人気は衰えるどころかアメリカをはじめ世界中に飛び火する。
62年以前のアーティスト達が極端に劣っていたわけではないと思う。
ただ、ビートルズが全ての面で新しく、完璧すぎたのだ。
人気と質、そして何より“それ以前にはなかった”という革新性が高い次元で融合し、
やがて彼らの音楽はポップ・ミュージックのあり方そのものを変えてしまうことになる。
一つのファッションに過ぎなかったポップスが、
リスナーの人生に深く根を下ろし、心の内に絶えず息づくものへと進化したのだ。
“ロック”の誕生である。


theatre project BRIDGE『七人のロッカー』が終わってから、2週間が経とうとしています。
観に来ていただいたみなさま、本当にありがとうございました。

台本に着手した当初は、純粋な音楽としてのロックを真正面から描こうと考えていましたが、
あれこれ考えていくうちに目論見は変わり、
ご覧いただいたような「ロックと出会った人たち」が主人公の物語になりました。

ロック。
ビートルズがデビューしてから半世紀が経とうとする今日であっても、
未だにロックというと攻撃的で反抗的な、激しい音楽であるように一般的には思われがちです。

しかし、それはロックの持つほんの一側面に過ぎません。
ワイワイ楽しいロックもあるし、グッときて涙の出るロックもある。
興奮して身も心も火照るようなロックもあるし、逆にその火照りを醒ます静謐なロックもある。
ロックにはありとあらゆる感情が詰まっています。
僕はロックを聴くたびに感情が揺り動かされ、勇気が湧きました。

大袈裟に言えば、それは生きていくことへの勇気です。
この先、人生に何が起きるかわからないけれど、
それでも生きていれば素敵なことがあるんじゃないか。
ロックには、そう信じさせてくれるだけの何かがあるような気がします。
僕はずっと、ロックに夢を見てきました。

『七人のロッカー』はこれでおしまいです。
でも、僕らの毎日は何事もなかったかのように続いています。
僕はこれからもロックを聴き続けるでしょう。
物語に終わりはあっても、ロックに終わりはありません。

次回公演のタイトルは『バースデー』。
今回の『七人のロッカー』よりもさらに“ロック”な作品を作ろうと思います。
一年後になりますが、どうぞお楽しみに。
 

『PLEASE PLEASE ME』の1曲目<I SAW HER STANDING THERE>。出だしのポールのカウント「1,2,3,ファッ!」は、単にこの曲の幕開けを飾っているだけではなく、“ロック”そのものの始まりを高らかに宣言するもの。『七人のロッカー』では、カーテンコール後の1曲目に使用しました。
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