昨年、『オオカミの護符』を読んでからというもの、
にわかに「御嶽(みたけ)神社」が気になるようになりました。

神社にはいろいろ種類があります。
八幡神社とか稲荷神社とかは全国各地にありますね。
東京だと、たとえば氷川神社なんかは数が多い。
それぞれ祀る神様だったりお詣りする目的なんかが異なっていて、
原則的にはどれも総本社(その神社の親分)からのれん分け(「勧請」といいます)をされて、
全国に散らばっていったものです。

御嶽神社というのは、修験道の神様、蔵王権現(ざおうごんげん)を祀る神社のこと。
修験道。つまり、山岳信仰ですね。
富士塚の紹介でも触れたとおり、
昔の日本人はいろいろな自然物に神様が宿ると考えていましたが、
なかでも「山」は、非常に神様との縁が深いと見られていました。

御嶽神社の総本社は奈良県にある金峯山寺(きんぷせんじ)ですが、
関東ではなんといっても東京青梅の御岳山にある武蔵御嶽神社がボス的な存在です。
かつては東京や神奈川、埼玉の多くの村々が、
一年に一度は必ず「講」というグループを作って御岳山に登り、
神社に豊作を祈願しに行きました。

「かつて」と書きましたが、
『オオカミの護符』によると、川崎市宮前区土橋では、
今でもこの「御嶽講」の伝統が続いているそうです。
車も電車もなかった時代は全部徒歩で往復していたわけですから、
御嶽信仰がいかに暮らしの中に強く根付いていたかがうかがえます。

さて、そんな御嶽神社は都内の意外なところにもあります。
今回はそのうちの2か所をご紹介。


その1:池袋御嶽神社

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境内の掲示によると、創建は天正年間(1573〜1592)といわれており、
現在の池袋・西池袋一帯の鎮守の社として歴史を刻んできました。
池袋駅からは少し離れてますが、
かつての池袋村の中心地は、この御嶽神社の周辺。
現在でいうと、池袋1丁目・2丁目の山手通り近くのエリアと、
首都高速5号線を挟んだ池袋本町近辺。
御嶽神社はちょうどその中心に位置しています。

境内には宮神輿が奉納されていました。
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毎年9月には例大祭が開かれ、丸井の近くまでお神輿が練り歩くそう。
今でも地元では「現役」バリバリの神社です。
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その2:宮益御嶽神社

「宮益」とは宮益坂のこと。
そう、渋谷駅のすぐ近くにも御嶽神社があるのです。

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本当に宮益坂のすぐ脇。
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今まで何度も通ってるのに、
こんなとこに神社があったことなんて、全く気づきませんでした。
でも、創建は元亀年間(1570〜1573)とあるのでかなり歴史のある神社です。

鳥居をくぐるとその先には階段が。
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オフィスビルの狭間に浮かぶように社があるという、
とてもユニークな佇まいの神社です。
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この宮益御嶽神社には、珍しいニホンオオカミの狛犬が鎮座しています。
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実は、御嶽神社とニホンオオカミの関わりには伝説があります。
日本武尊(やまとたけるのみこと)が関東東征の際に御岳山で道に迷ってしまいました。
するとそこへ白狼が現れて道案内を務めるのです。
日本武尊は白狼に「大口真神(おおくちまがみ)」の神称を与え、
御岳山で魔物を退治するように命じた、といわれています。
このことから、御嶽神社では特にニホンオオカミを信仰の対象として、
護符などにその姿を描いてきました。
(池袋御嶽神社の狛犬は獅子でしたが、まあ例外もあるということで…)

実際、御岳山をはじめとする関東西部の山岳地帯はニホンオオカミの生息地でした。
猛獣として恐れられる存在であると同時に、
畑を荒らす害獣などを食べてくれるありがたい存在でもあったニホンオオカミに対して、
豊作を願う関東一円の百姓たちが畏敬の念を抱くことは、
極めてナチュラルな感覚だったのでしょう。
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というわけで池袋&渋谷の御嶽神社でした。
地味でしょ(笑)。

どうでもいいけど、御嶽神社って字面がいいですね。
「御嶽」っていう字が、どこかまがまがしいというか、
神社なのに謎めいたアヤシい雰囲気を醸していて、なんかいい。
八幡神社が神社界のビートルズだとしたら、
御嶽神社はさしずめ神社界のオジー・オズボーン、
あるいはキング・クリムゾン的ポジションでしょう。




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