B000NA1Z1A

Amy Winehouse
『Back To Black』


 ジミ・ヘンドリックス、ジム・モリソン、ブライアン・ジョーンズジャニス・ジョプリン、そしてカート・コバーン。彼らには2つの共通点があります。1つは、独特且つ強烈な音楽的個性の持ち主であること。そしてもう1つは、全員27歳で亡くなっていること。先週、このメンバーの中に、不幸にも新たに加わってしまったミュージシャンがいます。イギリスの女性歌手、エイミー・ワインハウスです。

 彼女の死をニュースで知った時、僕が真っ先に思ったのは(他の多くの音楽ファンもおそらくそうであったように)、上記の「27歳のジンクス」でした。もちろん、彼らが揃って27歳で亡くなったのはただの偶然に過ぎません。しかし、もし他の凡百のミュージシャンが亡くなっても、僕はこのジンクスのことを考えはしなかったでしょう。エイミー・ワインハウスだからこそ、ジミヘンやジャニスら、早世のパイオニアたちとの相似を考えたのです。

 エイミー・ワインハウスという歌手は、ごく控えめに言っても天才でした。特に、数々の音楽賞を獲得した2枚目のアルバム『バック・トゥ・ブラック』は、文句なしの名盤でした。

 シンガーとして、あるいはソングライターとして優れていることはもちろんですが、彼女の存在を周囲から際立たせていたのは、その音楽性です。

 50年代のジャズや60年代のソウルという、古いレコードに閉じ込められていた音楽を、21世紀の感覚で蘇らせた功績は計り知れません。そして、「リズム」というものを非常に重視していたことから、従来のブラックミュージックファンよりも、ブラックミュージックに疎かったロックファンに対して強い訴求力がありました。僕自身も、普段は黒人音楽をあまり聞かないのですが、エイミー・ワインハウスの音楽に対しては何の違和感もなく、むしろ普段聞いているロックと地続きのものとして受け入れていた気がします。

 当時、エイミー・ワインハウスはまだ20代の前半でした。にもかかわらず、その音楽には圧倒的な素養と、古典に対する深い愛がありました。しかしその一方で、彼女自身の生活はドラッグとアルコールにまみれ、破滅的な匂いに満ちていました。彼女の歌声には、暗く湿った(まさにジム・モリソンのような)粘っこさがあります。その退廃的で切羽詰った感じは、まさにパンクであり、音楽が産業化していく中で、徐々に失われてしまったものです。

 スキャンダラスで、堕落的で、刹那的。しかし、そこからしか生まれない感動があるという事実を、エイミー・ワインハウスというアーティストはまざまざと見せつけました。自分の人生を食いつぶすようにして生きていたからこそ、彼女の歌には強烈なフックがあったのだと思います。

 新作が出たら間違いなく初日に買いに行っていたであろうほど、すごく好きでした。残念です。


アルバム1曲目<Rehab>


アルバム表題曲<Back To Black>


以前紹介したズートンズのカバー<Valerie>

にほんブログ村 音楽ブログ CDレビューへ
にほんブログ村

sassybestcatをフォローしましょう