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彼らの播いた種が
「バンド王国」という花を咲かせた


数多くのユニークなミュージシャン、バンドを輩出し、
1970〜80年代にかけて日本のロック/ポップシーンの一大震源地となった福岡(博多)。
パッと思いつくだけでもザ・ルースターズや、陣内孝則率いるロッカーズ、
ザ・モッズ(高校の先輩で大好きな人がいたなあ)、
最近だとスピッツの草野マサムネとか椎名林檎なんかも福岡出身ですね。
あ、あと大好きなバンド忘れてた。「天井裏から愛を込めて」のアンジー!

とにかく、ババッと挙げてくだけでも、
なんとなく独特の「濃さ」みたいなものを感じる顔ぶれが揃います。
そんな、日本におけるアイルランド的存在感を示す福岡博多。
80年代には、博多出身のロックバンドを指して「めんたいロック」なんて呼ばれた時期もありました。

そんな「めんたいロック」の源流・始祖にあたるバンドが、サンハウスです。
ギタリストの鮎川誠が、シーナ&ロケッツを結成する前に組んでいたバンド、といえば、
歴史の古さが想像できるのではないでしょうか。

結成は1970年。
当時、バンドといえばダンスホール専属のいわゆる「ハコバン」が主流だった中で、
サンハウスは「自分たちのブルースを追求する」ことを標榜し、
単に客の知ってる曲を演奏するだけじゃない、
オリジナルの日本語ロックを演奏するバンドとして注目を集めました。

同時期のバンドというと、僕はパッと村八分が浮かぶのですが、
どちらも米英のロックンロールやブルースを基調としている点は共通していますが、
サンハウスの方がよりサウンドが「陽気」です。
(村八分に比べればどんなバンドも陽気に聞こえますけどね…)
サンハウスの曲は、リフにしてもメロディにしても、
海外のブルースやロックのエッセンスを、さらにわかりやすく噛み砕いてくれるようなところがあります。
だからものすごくノリやすいし、定番曲が当たり前だった当時のダンスホールにおいて、
彼らがオリジナル曲にもかかわらず人気を獲得できたのが納得できる気がします。
このあたりはロックインテリ・鮎川誠の手際の良さかもしれません。

しかし僕は、サンハウスの最大の特徴は、ボーカル柴山俊之の書く詞にあると思います。
彼の詞はとにかくエロい!
例えば<レモンティー>という曲の詞の一部。

絞って僕のレモンを あなたの好きなだけ
たっぷり僕のレモンを あなたの紅茶の中に


「あなたの紅茶の中に僕のレモンを絞る」という、ただそれだけなのに、
なんなんでしょうか、このムワッと立ち上るミダラでヒワイな感じは。
いきなりの「絞って!」というフレーズもたまりません。

続いて<ミルクのみ人形>という曲の詞。

俺のミルクのみ人形は 大事な秘密の宝物
一滴も残さずミルクを 飲み干してくれるんだ


タイトルからしてそのものズバリ!という感じなんですけど、
もうなんかここまでいくと「爽やか!」とすら感じます。

柴山の書く突き抜けるようなエロい歌詞と、鮎川誠の作る陽性のサウンド。
この二つが組み合わさることで、サンハウスの曲は、
単に「ノリが良い」というだけでなく、官能的な部分にまで響く中毒性を獲得しました。
音だけではなく歌詞も一体となってグルーヴを生むという、
まさに「日本語によるロック」の好例といっていいと思います。

サンハウスは71年にアルバム『有頂天』でレコードデビューを果たします。
しかし、その後も一貫して活動拠点は福岡でした。
他の地域では海外のバンドに憧れてバンドを始める人が多かった中で、
福岡ではサンハウスに憧れてバンドを始める人が多かったそうです。

日本のロックの歴史がまだ浅かった当時、
自分たちの言葉でロックをする先輩が身近にお手本と存在していたことは、
地元福岡の後進たちにとってとても影響が大きかったんじゃないかと思います。
多分、海外バンドに憧れていた他地域に比べれば、
「自分たちにもできるんじゃないか」と焚きつけられた若きバンドマンも多かっただろうし、
「自分だったらこうやるのに」という刺激も、はるかに伝播しやすかったんじゃないでしょうか。
福岡という「ロック王国」が築かれる、その最初の種を播いたという点で、
サンハウスの果たした役割は極めて大きかったといえます。

少し話は変わるのですが、
ロックを「物語」として楽しむ上で、
「バンドと地域性」というのは、とても面白いコンテキストになると思います。
例えば大阪は、以前このブログでも紹介したミドリザ・50回転ズウルフルズなど、
やたらと濃厚なバンドが生まれてきます。
ブッチャーズやイースタン・ユース、怒髪天などを生んだ札幌も、
これまた一大バンド生産地です。
東京にしても一口で括れるわけではなく、
下北沢地盤のバンドとか、中央線沿線地盤のバンドとか、微妙に風合いが異なる。
(同じNYでもマンハッタン出身バンドとブルックリン出身バンドで異なるみたいに)
それと、出身バンドはパッと思い浮かばないんですが、
熊本って確か日本有数のライヴハウス集積地なんですよね。

その土地の地域性と出身バンドの音楽性との間に、
何らかのリンクがあるんじゃないかと想像するのって、けっこう面白いです。
ブッチャーズのあのスケール感は北海道の大自然が育てたものなのか…とか、
andymoriに漂うレトロっぽさはいかにも高円寺や阿佐ヶ谷あたりの雰囲気だよな…とか。

まあ、ただのこじつけと見るか、それとも実際に因果関係があるのか、真偽のほどは脇に置くとしても、
このようにバンド(アーティスト)を出身地別に見て系譜を辿ったり音楽を比較したりして、
人文地理学ならぬ「ロック地理学」を究めることは、音楽の楽しみ方の一つではあります。
「UKマンチェスター出身」と紹介されると、聴く前から「おお、じゃあUKロックの王道なんだな」と期待してしまう。
そういう色眼鏡やバイアス自体を、僕なんかはけっこう楽しんでしまいます。


これが伝説の<ミルクのみ人形>。


ライブ映像。<ロックンロールの真っ最中>の途中から<レモンティー>







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