
こんなかっこいいバンドが
40年前の日本にもいたんだ
ステージにメンバーが登場し、観客はそれを拍手で出迎える。
ライブ前のざわざわとした喧騒。
と、そこへいきなり客席から怒号が飛び、女性の悲鳴が響く。
それに対し、メンバーの誰かがマイクで「うるせえ!!」と怒鳴る。
続いてボーカルが「文句があるんだったらここ来たら?」と挑発する。
白けた雰囲気が広がる客席。
そんな中で、つんざくようなギターのリフがイントロを刻み始める――。
なんとも剣呑な雰囲気で始まるこのライブアルバムが、
村八分の『ライブ+1』です。
1960年代の終わりから70年代前半にかけて活動した、
日本のロックバンドの中でおそらく最古の部類に入るであろう伝説のバンド、村八分。
その短い活動期間で残した公式盤は、
1973年に京都大学で行われたライブを収録した、『ライブ』というライブ盤1枚のみ。
2001年、この『ライブ』がリマスターされ、
さらに未発表音源を1曲加えた『ライブ+1』として再リリースされました。
「村八分」。もうバンド名からしてたまりません。
アンダーグラウンド感がたっぷりの、
これ以上ないというくらい「ロック!」なバンド名です。
前述のように、村八分はほとんどスタジオ音源を残しませんでした。
彼らはひたすらライブで演奏することを重視していたのです。
音はパッケージするものではなく、体験するものだと考えていたのでしょうか。
そうした刹那的で熱情的なメンタリティを持っていたからこそ、
バンドが短命で終わるのは、ある意味必然だったのかもしれません。
しかし、だからこそ彼らの残した音楽には、
「ながら聴き」など許さない、圧倒的な迫力があります。
バンドの中心は、柴田和志(ボーカル)と山口冨士夫(ギター)。
この2人が大ファンだったというストーンズの影響を強く受けつつも、
村八分はさらに荒々しく乱雑で、
数年後のパンクロックの登場を予言しているかのようです。
特に柴田和志(通称チャー坊)の、まるで呪詛のようなシャウトは強烈です。
ジョン・ライドンはチャー坊の歌い方を真似してるのではないかと勘ぐりたくなります。
しかもチャー坊は、その「歌」というよりも「叫び」に近い声で、
「かたわ」「めくら」「びっこ」といった言葉を矢継ぎ早に畳みかけます。
山口冨士夫の、力でねじ伏せるようなソリッドなギターリフと、
それにねっとりと絡みつく、切羽詰ったチャー坊の「叫び」。
まるで、巨大な蛇が地面を激しくのたうち回っているかのような怨嗟的サウンドは、
聴く者の心を強烈な緊迫感の渦に叩き込みます。
さまざまなアーティストが村八分をカバーしましたが、
そのどれもがオリジナルに決定的に及ばないのは、
この「何かに取り憑かれたような切迫感」が、
彼ら以外には作り出せないからでしょう。
いえ、仮にオリジナルメンバーが再結成をしたとしても、
この『ライブ+1』の空気は再現不能かもしれません。
「今、この瞬間」を切り取っているという意味では、
これ以上の「ライブアルバム」はなかなか見つからないと思います。
こんなかっこいいバンドが、
40年も前の日本にいたなんて。
そんな、なんとも誇らしい気分にしてくれる1枚です。
<夢うつつ>
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