
神様は僕らに
ロックンロールを与えてくれた
今年、結成50周年を迎えたビーチボーイズ。
思わず耳を疑った伝説のアルバム『スマイル』のリリースや、
大規模な世界ツアーの開催(8月に来日します)など、
精力的にアニバーサリーイベントを発表している彼らが、
なんと新作アルバムをリリースしました。
レコーディングアルバムとしては23年ぶり、
さらに全曲が新曲という条件で言えば35年ぶりという、
まさかまさかの展開です。
もちろん、結成50周年の「お祝い」的な意味合いを持っていることは言うまでもありません。
それに、あえて言えば彼らは既に「終わったバンド」です。
(上記のように、彼らは20年以上新作を発表していないわけですから)
そのようなバンドが、仮に再結成したところで、
いい作品など作れるわけがない。
だから、正直に言うと当初はあまりこの「新作」には期待していませんでした。
あくまで「記念」として買うためだけの作品になるだけだろうと。
しかし!
そんなことはありませんでした。
この『神の創りしラジオ』と名付けられたアルバムは、
60年代の、彼らのキャリア最盛期と比べても全く遜色のない、
素晴らしい作品になっていました。
ブライアン・ウィルソンのメロディは、69歳の老人が(失礼!)作ったとは思えないほど、
若さとポップネスに溢れています。
彼らの代名詞でもある美しいコーラスも、まるで当時のまま。
最初に聞いた時、僕は「ひょっとして当時の未発表音源をひっぱり出したのでは?」と
疑ってしまったほどです。
本音を言えば、僕はあの『スマイル』よりも、
この『神の創りしラジオ』の方が好きです。
そのくらい、僕はこのアルバムを推したい。
このブログでも過去に何度か書いたように、
ビーチボーイズの、とりわけブライアン・ウィルソンの歴史は、
暗く濃い影に満ちたものでした。
ブライアンが紡ぐメロディが狂気を感じるまでに美しいのは、
彼の抱えてきた苦悩や葛藤や怨恨の裏返しなのだと思います。
成功からくるプレッシャーや家族・メンバーとの間に抱えたストレス。
中でも特に彼を追い詰めたのが、
ライバルであるビートルズへの強烈な対抗心だったと言われています。
ビーチボーイズとブライアンにつきまとう「影」の色を濃くしているのは、
ビートルズという巨大な光の存在でした。
確かに、記録でも記憶でも、ビートルズは別格です。
でも、今回リリースされた『神の創りしラジオ』を聞いて、
僕はビーチボーイズに軍配を上げたくなりました。
なぜなら、彼らは30年以上の空白を経たこのタイミングで、
このような瑞々しいアルバムを作ったからです。
懐メロに安住するのでもなく、自己模倣に逃げるでもなく、
「新作アルバム」を作ったからです。
仮にジョンもジョージも生きていて、再結成してアルバムを作ったとしても
おそらく『ラバーソウル』にも『サージェント・ペパー』にも、
遥かに及ばないアルバムしか作れなかったんじゃないでしょうか。
(・・・と言いつつ、彼らはサラッとやってのけてしまうかもしれないという妄想も膨らみますが)
作品やバンドの優劣を語りたいわけではありません。
ただ、誰もが終わったと思っていたバンドが、
最後の最後に、あまりに素敵な作品を残してくれたことが、僕は嬉しい。
安っぽい言葉ですが、音楽の神様が、最後にビーチボーイズに微笑んで、
僕らファンにプレゼントを用意してくれたように感じるのです。
僕らは音楽と出会うことで、愛を知った。勇気を得た。人生を好きになれた。
そして、その音楽との出会いの場となったのが、ラジオだった。
だからこそ神様はラジオをお作りになったのだ――。
『神の創りしラジオ』という今作のタイトルには、こんな意味が込められています。
「音楽があるからこそ生きていける」なんて言葉を口にするのは、
本来はあまり好きじゃないんだけど、
それでもやっぱり音楽を聞いていると、
ふと「生きてるなあ」とか「毎日辛いけど、明日も頑張るか」とか、思うことがあります。
音楽によって生かされてる自分がいることは、否定できません。
表題曲の中に、こんな歌詞がありました。
「神様は手を振って ロックンロールを与えてくれた
恋に落ちる時の音みたいだ
だから神様はラジオを作ったんだ」
こういうメッセージ、あるいは感情というものを、
他でもないビーチボーイズというバンドが語ることに意味があると思います。
音楽が好きな方は、是非聞いてみてください。
「That’s Why God Made The Radio〜神の創りしラジオ」
この曲を70歳の爺さん達が歌ってると思うと、
「人生っていいなあ」とグッときます・・・。
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