
好きも嫌いも突き抜ける
「絶対的かっこよさ」
レッド・ツェッペリンがロンドンのO2アリーナで、
1晩だけの再結成ライヴを開いたのは2007年12月のこと。
ジミー・ペイジ(Gt)、ジョン・ポール・ジョーンズ(Ba)、ロバート・プラント(Vo)の3人に、
ドラムにジョン・ボーナムの息子、ジェイソン・ボーナムを加えた、
(ほぼ)オリジナルのメンバーが集まったこの夜のライヴは、
当然のことながら世界中の注目を集めました。
あれから5年、2012年11月になってようやくその公式映像がパッケージ化されました。
それがこの『Celebration Day/祭典の日(奇跡のライヴ)』。
当日演奏された全16曲のステージとリハーサル風景を収めた特典映像、
さらに、本番のステージをそのまま音源化した2枚組のライヴアルバムという、
4枚組で構成されているゴージャスなCD&DVDボックスです。
発売時にはメンバーがわざわざプロモーションで来日したり、
上映イベントが開かれたりとかなり盛り上がりました。
解散後30年近く経っても未だにムーブメントを起こすツェッペリンというバンドは、
やはり別格中の別格なんだなあと思った記憶があります。
しかし、なんでまた半年も前にリリースされたアイテムを、
わざわざ今になって紹介しているかというと、
実は僕、つい先週になってようやくこのDVDを見終えたんです。
いえ、ちゃんと予約までしてリリース初日に買ったんです。
ところが、冒頭だけ見たまま何かの拍子で途中で止めてしまい、
気づけば半年間も放置という…。
ここで懺悔しますが、正直に言うと僕、
レッド・ツェッペリンのこと、そこまで好きではないんです。
嫌いというわけではなく、
むしろ「好きになりたい」という気持ちは満々なのですが、
なかなか身体がついてこないというか、
気持ちにしっくりハマらないというか、
未だにツェッペリンはどこか遠いんですよねえ。
この「溝」を埋めたいと思っているから、
アルバムも持ってるし、ちゃんとiPhoneに入れて聴いてるし、
有名どころの曲はギターでコピーまでしてるし、
今回のDVDだってわざわざ予約までして買うんだけど、
結局半年も放置してしまうという矛盾。
かれこれ10年以上、僕はツェッペリンと、
「愛よりも義務感で連れ添っている夫婦」みたいな関係を送っているのです。
で、『Celebration Day』を全部見てみてどうだったのか。
結論から言うと……めちゃくちゃかっこよかったんですねえ。
再結成って基本的には「イベント」だから、
音楽的な部分に期待するのは野暮というか、
「みんなで当時を懐かしみましょう」というのが暗黙のルールですよね。
でも、この夜のツェッペリンは違いました。
なんなんですか、あのキレキレ感。
バリバリの現役バンドじゃないですか。
「もう一度みんなで集まりました」という牧歌的な雰囲気は露ほどもなく、
めっちゃくちゃ作りこんできたな!という、
4人の並々ならぬ気合いを感じました。
当日O2アリーナでステージを目撃したロッキンオンの社長・渋谷陽一氏は、
開幕前は「死に水を取りに来た…」と、
4人が無残な姿を晒すことを覚悟していたそうですが、
いざステージが始まると、「ん?これはひょっとしたらイイんじゃないか?」となり、
見終わってみると「すごいものを見たぞ」となったそうです。
確かに、これほど熱を持った再結成ライヴというのは、
そうそう他にはないと思います。
以下は僕の勝手な想像。
ツェッペリンは、かつて1985年のライヴ・エイドで、
ものすごくヒドい再結成ライヴをやったことがあります。
(多分YouTubeで見れます)
その時に散々バッシングされて、
メンバーは初めて「ツェッペリンであること」を自覚したんじゃないでしょうか。
つまり、自分たちが再び「レッド・ツェッペリン」を名乗る時は、
ハンパじゃない覚悟をもって、現役時に劣らぬプレイをしなければいけないんだ、と。
「レッド・ツェッペリン」という名前は、
メンバー自身でさえも軽い気持ちで扱えないほど重いものなのだ、と。
85年のステージが最初の再結成(←妙な言い方)ですから、
そこでいきなり大失敗したという「負の実績」が、
07年の夜につながったんじゃないかと思うんですね。
じゃないと、あの鬼気迫る完成度(だってみんなもうすぐ70歳ですよ?)は
説明できないんじゃないかと思います。
ジミー・ペイジの脳味噌が絞り上げられるようなギターリフ、
ジョンジーの分厚い土壁のようなベース&ピアノ、
ジェイソンの高速列車のような重量級ドラムと、
楽器はいずれも、音という名の重火器を浴びせてくるかのよう。
そして何より素晴らしかったのが、ロバート・プラントです。
バンド後期よりもさらにキーは下がったように思いますが、
それを補って余りあるほど、巧い!
ボーカルはバンドの中で最も「老い」が表に出やすいパートだと思いますが、
(特にツェッペリンのようにハードな音楽の場合はそれが目立ちそうです)
ロバートは失われたパワーと高音を「色気」というもので代替し、
観客に付け入るスキを与えていません。
ツェッペリン(ロバート)は元々、声すらも一つの楽器のように扱うのが特色でしたが、
今回の再結成ライヴでは初めて、ツェッペリンが「歌」に聞こえました。
(それ故に、もはや彼が「ツェッペリンのボーカリストではない」と言うことも可能ですが)
メンバーの中でただ一人、最後まで再結成に渋っていた(と言われる)ロバートですが、
他の3人のヘビー級の音を向こうに回し、見事に歌い倒しています。
で、結局のところ『Celebration Day』を見て、
僕はツェッペリンを好きになったのかというと、
…う〜ん、まだ微妙(笑)。
ラモーンズを敬愛する人間としては、
あの重厚長大さはやっぱりカロリー過多なんだよなあ。
ただ、間違いなく言えることは、
そんなネガティブな気持ちを差し引いても、
いえ、こちらがどんなモチベーションだろうがそんなこと関係ないくらい、
レッド・ツェッペリンというバンドは問答無用でかっこいいということです。
1億人が見たら1億人全員が「かっこいい」と思うんじゃないか、
そのくらい、絶対的なレベルでかっこいい。
「好きではないのに、めちゃくちゃかっこいい」。
そんな気持ちになったのは初めての体験でした。
<Black Dog>
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