
未発表曲が2曲収録
正真正銘の「新作」だ
ビートルズが1960年代前半に英BBCラジオで収録した大量のライヴ音源を厳選し、
2枚組にまとめてアルバム『Live at the BBC』としてリリースしたのは、1994年のこと。
あれから約20年、なんとその続編がリリースされました。
タイトルは『On Air - Live at the BBC Volume 2』。
最初にニュースを聞いた時は、前作『Live at the BBC』の再編集盤になるのかと思っていましたが、
蓋を開けてみれば、番組司会者との会話やインタビューを除く全40トラックのうち、
既発表音源はわずか3曲。
つまりほとんどが、未発表音源で占められています。
しかも、うち2曲が全くの未発表曲(カバー)である、
<I'M TALKING ABOUT YOU>と<BEAUTIFUL DREAMER>。
いやあ、素晴らしいです。
正真正銘、ビートルズの「新作」と呼んでいい内容だと思います。
この『On Air』がリリースされたことの意義は大きく二つあります。
一つは、ビートルズの希少な「ライヴアルバム」が増えたこと。
ビートルズは活動初期のほとんどをライヴに費やしましたが、
録音技術などの関係で、当時の演奏はほとんど音源化されませんでした。
その点、放送局のスタジオという絶好の環境で収録されたBBC音源は、
現在聴くことのできる数少ないビートルズのライヴ音源として価値が高かったのです。
これまでは前作『Live at the BBC』しかありませんでしたが、
(といってもこの作品は2枚組で69トラックもあるのですが)
今回『On Air』がリリースされたことで、例えば<Money>や<Twist And Shout>など、
前作には収録されなかった楽曲が加わり、
「ビートルズのライヴ音源」のバラエティが一気に広がりました。
ちなみに、スタジオでありながら「ライヴ」であるという根拠は、
ほぼ全ての楽曲がオーヴァーダブなしの一発録りだったという点にあります。
「観客がいない」ということ以外は、まるきりステージそのものだったのです。
それに、メンバー4人にとって観客は「いた」のです。
それは、ラジオに耳を澄ませているリスナーでした。
ビートルズがBBCに最初に出演したのは1962年の3月。
<Love Me Do>でレコードデビューする半年以上前のことです。
全国放送の電波で自分たちの曲を流すことは、
当時の彼らにとってまたとないチャンスでした。
ポールは当時を振り返り、
「僕らは何の手加減もせず、一世一代の演奏をしようと懸命に頑張った」
と語っています。
実際、このアルバムの楽曲には、
スタジオ盤よりもはるかに速いリズムで演奏したり、
多少失敗してもシャウトでごまかしてそのまま突き進んだりといった、
狂暴とさえ言えるほどの荒々しいエネルギーに満ちていて、
オリジナルアルバムとは印象の異なるビートルズを感じることができます。
『On Air』がリリースされた意義の二つめは、
カバー楽曲のバリエーションが増えたことです。
ビートルズがBBCで演奏した楽曲は、のべ275曲にものぼりますが、
その中にはチャック・ベリーやリトル・リチャードをはじめとする、
彼らがデビュー前から演奏してきたものの公式音源化はされてこなかった、
カバー楽曲が大量に含まれていました。
例えば『Live at the BBC』には<Johnny B. Goode>や<Keep Your Hands off My Baby>といった、
スタジオ盤では聴くことのできないカバーが多数収録されています。
『On Air』では前述のように未発表の2曲が収録されました。
特にチャック・ベリーの<I'M TALKING ABOUT YOU>は、
音質の悪さが逆にジョンのワイルドなボーカルを際立たせていて非常にかっこいいです。
カバーの面白さは、他人の楽曲を演奏することで、
逆にそのバンドのオリジナリティが浮き彫りになる、というところにあります。
ビートルズのカバーを聴いて感じるのは、なんといってもジョンとポールの「声」の魅力です。
特にジョンは、それが誰の曲だろうが、歌っているのが男性だろうが女性だろうが、
歌った途端に「自分の歌」にしてしまう、強烈な個性があります。
その個性を感じられる機会が増えたという点で、
カバー曲の新収録は、単なる未発表音源という以上の価値があるのです。
ちなみに、前作『Live at the BBC』は、ややマニアックな存在ではあるものの、
個人的にはビートルズのアルバムの中で1、2を争うくらいにお気に入りの作品でした。
ライヴ音源ということで、スピーカーのすぐ向こうに4人の息遣いを感じられるところがたまりません。
音質が悪いトラックもありますが、臨場感があってむしろ煽られます。
だから、そういう思い入れの点でも、今回の『On Air』のリリースは、かなり嬉しい出来事でした。
10月のポールのソロ新作『NEW』のリリース、
11月のポール来日(来週ライヴレポート書きます!)、
そしてこの『On Air』のリリースと、にわかにビートルズ周辺が騒がしくなっています。
解散後40年経ってもまだ未発表曲が出てくるんだから、
いずれ「214番目のオリジナル曲」も発掘されるんじゃないかと期待してます。
きっと他のファンのみんなもそうでしょう?
『On Air』のトレーラー映像
1分40秒あたりに<I'M TALKING ABOUT YOU>が流れます
アルバム1曲目を飾る<Words Of Love>のPVが、
『On Air』発売を記念して公開。
この曲を頭にもってくるセンスがニクイ!!
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