ビートルズの故郷、英国リバプールを訪ねた記録の4回目。
今回は伝説のライヴハウス「キャヴァーン・クラブ」について。
ビートルズ旅行でリバプールを訪ねたなら、絶対に外せないのがこの場所です。
第1回のマシュー・ストリート編では前を通り過ぎただけだったので、
ついに今回は中に足を踏み入れます。
---------------------------------------------------
#第1回「マシュー・ストリート」はこちら
#第2回「ジョンとスチュと学生街」はこちら
#第3回「マジカルミステリーツアー」はこちら
---------------------------------------------------
■再建された「2代目キャヴァーン」
ノース・ジョン・ストリート側からマシュー・ストリートに入ると、
すぐに目に飛び込んでくるのがこの看板。

この場所こそが、ビートルズが1961年から63年にかけて、
計272回もステージに立ったライヴハウス「キャヴァーン・クラブ」です。
レコードデビュー前のホームグラウンドとして彼らの人気を支えたのも、
ブライアン・エプスタインとの出会いの場になったのも、全てはこの場所でした。
リバプール時代のビートルズの象徴と言ってもいい、まさに「聖地」です。

キャヴァーン・クラブは1957年、元は地下の果物倉庫だった場所にオープンしました。
当初はジャズクラブとしてスタートしましたが、
その後ロックンロールを演奏するバンドにも門戸を開くようになり、
やがてリバプール中のバンドがこぞって出演するようになります。
(その中にはリンゴがビートルズ加入前に在籍していたロリー・ストーム&ザ・ハリケーンズもいました)
そして、ビートルズが有名になると、
キャヴァーン・クラブは世界中のロックバンドにとって憧れの場所となったのです。

第1回でも書いたように、これまで1800組以上のバンドがキャヴァーンのステージに立ちました。
入り口へと降りる階段の壁のあちこちには、
過去にキャヴァーンに出演したバンドの写真が貼られています。

実は現在のキャヴァーンは、再建された2代目。
ビートルズが出演していたオリジナルのキャヴァーンは、
1973年に地下に換気口を建設するために取り壊されてしまいました。
その後、83年にかつてのキャヴァーンがあった場所の隣に、
当時と全く同じ設計で再建されたのが、現在の2代目キャヴァーン・クラブなのです。
■ビートルズの「音」を吸ったレンガ
いよいよ中に足を踏み入れます。

思っていたよりも狭い!
ステージもものすごく小さいです。4人も乗ったらかなりギュウギュウになりそう。
ちゃんとVOX社のアンプが置いてある!

キャヴァーンの狭さというと思い出すのが、まだ僕が小学生の頃(だったと思うのですが)に、
たまたまテレビで見たビートルズのドキュメンタリー番組。
その中で、レンガ造りの暗くて狭い空間で演奏するビートルズの映像が流れました。
モノクロの粗い映像と相まって、「有名なバンドのくせにずいぶん汚いところで演奏するんだなあ」と
やけに印象に残ったのを覚えています。
「キャヴァーン」という名前は、僕のビートルズ体験の中でも最も初期に脳裏に刻まれたキーワードになりました。
店内にはビートルズが使ってた楽器一式が飾ってありました。

本当ならば震えるように感激するべき物のはずですが、
「キャヴァーンにいる」という事実自体がすごすぎて、ほとんどスルーしました。

天井が低く、アーチ型になっているのは、かつて倉庫だったことの名残でしょう。
前述のように、2代目キャヴァーンが再建される際には、
初代キャヴァーンの設計が忠実に再現されたと書きました。
実はその際、壁のレンガには初代キャヴァーンの壁に使われていたものが再利用されたのです。
(土の中に眠っていたのを掘り起こしたそうです)
つまり、店内のレンガの一つひとつは、かつて本物のビートルズの音を吸い込んだものなのです。
僕がひたすら撫でまわしたのは言うまでもありません。
ちょっと面白かったので撮っておいたのが、この画像。

キャヴァーン内はフリーのWi-Fiが利用できるので(!)、試しにiPhoneで接続したところ。
こんなレアなWi-Fiに接続できるチャンスなんて滅多にないだろうと、
記念に画面を撮影しちゃいました。
■ビートルズと子供たち
ここで、この日僕が見た、ある感動的な光景について書きたいと思います。
2代目となったキャヴァーンですが、
今でも週末の夜になるとライヴが行われています。
ジェイク・バグやアークティック・モンキーズら、
10〜20代の若いアーティストによって、かつての熱狂が今も受け継がれているようです。
また、昼間は地元のコピーバンド(アーティスト)によるステージが行われています。
出演者は日替わりで、僕は2日間通ったので2人のステージを見たのですが、
2人ともギター1本の弾き語りにもかかわらずめちゃくちゃ上手かったです。
僕が最初にキャヴァーンを訪れた日は、
ジョン・レノンのそっくりさん(?)のステージでした。

昼間からビール飲みながら、あのキャヴァーンでビートルズの歌を聴くだなんて、
なんていうかもう夢のような時間です。
ただ、僕が見た「感動的な光景」というのは、このことではないのです。
ジョンさんのステージが始まって2〜3曲歌い終わった頃でしょうか。
突如店内に、大勢の小学生が入ってきたのです。

先生らしき大人が引率し、「RESERVED」の札がある席についたところを見ると、
どうやら日本で言うところの遠足、もしくは社会科見学のようです。
まだ陽のある時間ではあるものの、仮にもここはアルコールを出す店ですから、
そんな場所に小学生を連れてくるなんて、学校もずい分度量が広いなあと感心していました。
どうやらジョンさんも今日は小学生が見に来ることを承知していたようで、
「ステージの前に来なよ!」と子供たちに呼びかけます。

こういうときに女の子の方が積極的なのは日本もイギリスも変わらないようです。
しかしやがて、壁の方でモジモジしていた男の子たちも集まってきました。
んで、何に感動したかというと、みんなビートルズの歌を歌えるんです、普通に。
<Please Please Me>ではちゃんとサビの「カモン!」で掛け合いをするし、
<Strawberry Fields Forever>なんていう難しい歌までちゃんと歌える。
みんな10歳とかそこらですよ?
どの歌も自分が生まれる半世紀近くも前のものなのに、
みんな当然のように歌詞を知っていて、演奏に合わせて楽しそうに歌っている。
「音楽ってすげえ!」とか、「ちゃんと下の世代に受け継がせようとするイギリスの大人すげえ!」とか、
とにかくいろんな思いが涙と一緒にこみ上げました。
ちなみに、子供たちが一番盛り上がったのは、この曲でした。
動画を撮影しておいたので、現場の雰囲気が伝わるといいな。
なお、この日のラストの1曲が秀逸でした。
ジョンさんが子どもたちへのステージの締めに選んだのは、<Money>。
「僕が欲しいのはお金だけ」と連呼するという曲をあえて子どもたちに向けて歌うあたり、
やはり彼は「ジョン」さんでした。
■キャヴァーン・パブへ
キャヴァーン・クラブの向かいにある「キャヴァーン・パブ」にも足を運んでみました。

キャヴァーン・クラブが1994年にオープンした姉妹店で、
こちらはクラブの方とは異なり食事をすることができます。

この店の特徴は、過去にキャヴァーンに出演したアーティストの楽器やサインが豊富に展示されている点です。
下の写真の右側に見えるのは、ドノヴァンのギターとアークティック・モンキーズのギター。
そして左側のディスプレイに飾ってあるのは、なんとマイケル・ジャクソンのジャケット。

店内にはステージもあり、生演奏を聴くこともできるようです。

店内には延々とロックが流れています。
僕がいたときは、リバティーンズやオアシス、ストーン・ローゼズといった、
イギリスのロックが爆音でかかっていました。
ビールとロック。
これほど幸せなシチュエーションが他にあるのでしょうか。

---------------------------------------------------
※次回は、ロビーもレストランも客室も全てがビートルズという夢のようなホテル、
「ハードデイズナイト・ホテル」について書きます。
(参考文献)
『ビートルズ 心の旅』ザ・ビートルズ・クラブ(光文社)
『Somewhere In The Beatles』福岡耕造(ピエ・ブックス)
※本記事に掲載された内容は2014年1月現在の情報です。
また、できる限り調べて執筆していますが、個人で調べた範囲のものですので、
詳細な場所等には誤りがある可能性があります。ご了承ください。
ツイート

ランキング参加中!
↓↓よろしければクリックをお願いします


今回は伝説のライヴハウス「キャヴァーン・クラブ」について。
ビートルズ旅行でリバプールを訪ねたなら、絶対に外せないのがこの場所です。
第1回のマシュー・ストリート編では前を通り過ぎただけだったので、
ついに今回は中に足を踏み入れます。
---------------------------------------------------
#第1回「マシュー・ストリート」はこちら
#第2回「ジョンとスチュと学生街」はこちら
#第3回「マジカルミステリーツアー」はこちら
---------------------------------------------------
■再建された「2代目キャヴァーン」
ノース・ジョン・ストリート側からマシュー・ストリートに入ると、
すぐに目に飛び込んでくるのがこの看板。

この場所こそが、ビートルズが1961年から63年にかけて、
計272回もステージに立ったライヴハウス「キャヴァーン・クラブ」です。
レコードデビュー前のホームグラウンドとして彼らの人気を支えたのも、
ブライアン・エプスタインとの出会いの場になったのも、全てはこの場所でした。
リバプール時代のビートルズの象徴と言ってもいい、まさに「聖地」です。

キャヴァーン・クラブは1957年、元は地下の果物倉庫だった場所にオープンしました。
当初はジャズクラブとしてスタートしましたが、
その後ロックンロールを演奏するバンドにも門戸を開くようになり、
やがてリバプール中のバンドがこぞって出演するようになります。
(その中にはリンゴがビートルズ加入前に在籍していたロリー・ストーム&ザ・ハリケーンズもいました)
そして、ビートルズが有名になると、
キャヴァーン・クラブは世界中のロックバンドにとって憧れの場所となったのです。

第1回でも書いたように、これまで1800組以上のバンドがキャヴァーンのステージに立ちました。
入り口へと降りる階段の壁のあちこちには、
過去にキャヴァーンに出演したバンドの写真が貼られています。

実は現在のキャヴァーンは、再建された2代目。
ビートルズが出演していたオリジナルのキャヴァーンは、
1973年に地下に換気口を建設するために取り壊されてしまいました。
その後、83年にかつてのキャヴァーンがあった場所の隣に、
当時と全く同じ設計で再建されたのが、現在の2代目キャヴァーン・クラブなのです。
■ビートルズの「音」を吸ったレンガ
いよいよ中に足を踏み入れます。

思っていたよりも狭い!
ステージもものすごく小さいです。4人も乗ったらかなりギュウギュウになりそう。
ちゃんとVOX社のアンプが置いてある!

キャヴァーンの狭さというと思い出すのが、まだ僕が小学生の頃(だったと思うのですが)に、
たまたまテレビで見たビートルズのドキュメンタリー番組。
その中で、レンガ造りの暗くて狭い空間で演奏するビートルズの映像が流れました。
モノクロの粗い映像と相まって、「有名なバンドのくせにずいぶん汚いところで演奏するんだなあ」と
やけに印象に残ったのを覚えています。
「キャヴァーン」という名前は、僕のビートルズ体験の中でも最も初期に脳裏に刻まれたキーワードになりました。
店内にはビートルズが使ってた楽器一式が飾ってありました。

本当ならば震えるように感激するべき物のはずですが、
「キャヴァーンにいる」という事実自体がすごすぎて、ほとんどスルーしました。

天井が低く、アーチ型になっているのは、かつて倉庫だったことの名残でしょう。
前述のように、2代目キャヴァーンが再建される際には、
初代キャヴァーンの設計が忠実に再現されたと書きました。
実はその際、壁のレンガには初代キャヴァーンの壁に使われていたものが再利用されたのです。
(土の中に眠っていたのを掘り起こしたそうです)
つまり、店内のレンガの一つひとつは、かつて本物のビートルズの音を吸い込んだものなのです。
僕がひたすら撫でまわしたのは言うまでもありません。
ちょっと面白かったので撮っておいたのが、この画像。

キャヴァーン内はフリーのWi-Fiが利用できるので(!)、試しにiPhoneで接続したところ。
こんなレアなWi-Fiに接続できるチャンスなんて滅多にないだろうと、
記念に画面を撮影しちゃいました。
■ビートルズと子供たち
ここで、この日僕が見た、ある感動的な光景について書きたいと思います。
2代目となったキャヴァーンですが、
今でも週末の夜になるとライヴが行われています。
ジェイク・バグやアークティック・モンキーズら、
10〜20代の若いアーティストによって、かつての熱狂が今も受け継がれているようです。
また、昼間は地元のコピーバンド(アーティスト)によるステージが行われています。
出演者は日替わりで、僕は2日間通ったので2人のステージを見たのですが、
2人ともギター1本の弾き語りにもかかわらずめちゃくちゃ上手かったです。
僕が最初にキャヴァーンを訪れた日は、
ジョン・レノンのそっくりさん(?)のステージでした。

昼間からビール飲みながら、あのキャヴァーンでビートルズの歌を聴くだなんて、
なんていうかもう夢のような時間です。
ただ、僕が見た「感動的な光景」というのは、このことではないのです。
ジョンさんのステージが始まって2〜3曲歌い終わった頃でしょうか。
突如店内に、大勢の小学生が入ってきたのです。

先生らしき大人が引率し、「RESERVED」の札がある席についたところを見ると、
どうやら日本で言うところの遠足、もしくは社会科見学のようです。
まだ陽のある時間ではあるものの、仮にもここはアルコールを出す店ですから、
そんな場所に小学生を連れてくるなんて、学校もずい分度量が広いなあと感心していました。
どうやらジョンさんも今日は小学生が見に来ることを承知していたようで、
「ステージの前に来なよ!」と子供たちに呼びかけます。

こういうときに女の子の方が積極的なのは日本もイギリスも変わらないようです。
しかしやがて、壁の方でモジモジしていた男の子たちも集まってきました。
んで、何に感動したかというと、みんなビートルズの歌を歌えるんです、普通に。
<Please Please Me>ではちゃんとサビの「カモン!」で掛け合いをするし、
<Strawberry Fields Forever>なんていう難しい歌までちゃんと歌える。
みんな10歳とかそこらですよ?
どの歌も自分が生まれる半世紀近くも前のものなのに、
みんな当然のように歌詞を知っていて、演奏に合わせて楽しそうに歌っている。
「音楽ってすげえ!」とか、「ちゃんと下の世代に受け継がせようとするイギリスの大人すげえ!」とか、
とにかくいろんな思いが涙と一緒にこみ上げました。
ちなみに、子供たちが一番盛り上がったのは、この曲でした。
動画を撮影しておいたので、現場の雰囲気が伝わるといいな。
なお、この日のラストの1曲が秀逸でした。
ジョンさんが子どもたちへのステージの締めに選んだのは、<Money>。
「僕が欲しいのはお金だけ」と連呼するという曲をあえて子どもたちに向けて歌うあたり、
やはり彼は「ジョン」さんでした。
■キャヴァーン・パブへ
キャヴァーン・クラブの向かいにある「キャヴァーン・パブ」にも足を運んでみました。

キャヴァーン・クラブが1994年にオープンした姉妹店で、
こちらはクラブの方とは異なり食事をすることができます。

この店の特徴は、過去にキャヴァーンに出演したアーティストの楽器やサインが豊富に展示されている点です。
下の写真の右側に見えるのは、ドノヴァンのギターとアークティック・モンキーズのギター。
そして左側のディスプレイに飾ってあるのは、なんとマイケル・ジャクソンのジャケット。

店内にはステージもあり、生演奏を聴くこともできるようです。

店内には延々とロックが流れています。
僕がいたときは、リバティーンズやオアシス、ストーン・ローゼズといった、
イギリスのロックが爆音でかかっていました。
ビールとロック。
これほど幸せなシチュエーションが他にあるのでしょうか。

---------------------------------------------------
※次回は、ロビーもレストランも客室も全てがビートルズという夢のようなホテル、
「ハードデイズナイト・ホテル」について書きます。
(参考文献)
『ビートルズ 心の旅』ザ・ビートルズ・クラブ(光文社)
『Somewhere In The Beatles』福岡耕造(ピエ・ブックス)
※本記事に掲載された内容は2014年1月現在の情報です。
また、できる限り調べて執筆していますが、個人で調べた範囲のものですので、
詳細な場所等には誤りがある可能性があります。ご了承ください。
ツイート

ランキング参加中!
↓↓よろしければクリックをお願いします

