20150324_1109305

中学生の男の子が
全曲完璧に歌ってたという事実


先週、「老いたロッカー」の話を書いた直後、
その代表格の一人のステージを生で見ることができました。
ポール・マッカートニーの「OUT THERE JAPAN TOUR 2015」です。

前回の同名ツアーから2年ぶり。
短いスパンで再来日を果たしたのは、
昨年、ポールにとっては日本初の野外ライブとなるはずだった、
解体前の国立競技場(大阪はヤンマースタジアム長居)公演を、
体調不良によって急きょキャンセルしてしまったことへのリベンジということなのでしょう。
(東京2日目、MCで「(すぐにまた来ると)ヤクソクシタネ。ユウゲンジッコウ(有言実行)!」と言ってました)

同じツアーということで、セットリストも演出も前回とほぼ同じ。
ですが、僕にとっての意味合いは前回と今回とで大きく異なります。

前回の来日公演は僕にとって初めて見る生のポールでした。
「OUT THERE JAPAN TOUR 2013」の記事はこちら
ドームの3階席だったのでポールは豆粒にしか見えなかったのですが、
今、この場で、ポール本人が歌ってる」という事実が信じられなさ過ぎて、ほぼずっと泣いていました。

そして、その夜のステージがあまりに素晴らしすぎたので、
次の日に旅行代理店に飛び込み、
ビートルズの故郷である英国リバプールへの飛行機とホテルをその場で予約しました。
リバプール滞在レポートはこちら

あの日、ポールのライブを見なければ、
もしかしたらリバプールなんて一生行かなかったかもしれません。
そして、もしリバプールに行かなければ、
ビートルズとの付き合い方も今とはだいぶ違っていたと思います。
キャヴァーン・クラブやストロベリー・フィールズはもちろん、
メンバーの住んでた家や通ってた学校や生まれた病院にまで行ったことで、
彼らは僕の中で「友達」といってもいいくらいの距離にまでリアルな存在になりました。
ポール?知ってるよ。アイツはね…」みたいな。

それに、リバプール旅行は僕にとっては新婚旅行でもありました。
もし全く違う場所を旅行先に選んでいたら、妻との関係も今とは違っていたかもと思います。
このように、2013年のポールの公演は、
具体的かつ物理的なレベルで僕の人生を変えたのです。
だから、2年前に比べるとはるかに身近な存在として、ポールを見ることになりました。


今回、僕は東京ドーム3日間に全て足を運びました(武道館は仕事で泣く泣くあきらめました)。
初日(4/23)は序盤こそキーが辛そうで「大丈夫か?」と心配したものの、
(1曲目に<Magical Mystery Tour>なんていう喉に負担がかかりそうな曲を選ぶから…)
中盤以降は2年前よりもむしろ若々しくエネルギッシュな歌を聞かせてくれました。
2日目はアリーナの7列目というかなり前の席が取れたので、
ポールの表情までを肉眼で見ることができたので感激しました。

個人的にはビートルズ時代の曲よりもウイングスやソロの曲の方が良かったです。
特に『Band On The Run』に収録されている<Nineteen Hundred And Eighty-Five>は、
あのキレ味のあるピアノのリフに何度もゾクゾクしました。


また、最新作『NEW』収録の<Queenie Eye>もすごく良かったですねえ。
2年前にも聴いたはずなのに、今回は「え?こんな曲だったっけ?」と帰ってからCDを聴き直しました。


あ、それと一番新しい曲である<Hope For The Future>
iTunesでDLして聴いたときはイマイチだったのに、生で聴いたらめちゃくちゃ良かったです。


こうした新しい曲が古い曲に負けてないというのは、ポールのキャリアを考えると驚異的です。



確かに、総じて言えば、ポールのライブは基本的には「同窓会」です。
音楽的な斬新さがあるわけではないし、
ライブの空気は既に長年のファンとの間で共有され尽くしているものです。

しかし、そのような「甘さ」を差し引いても、
やっぱり「これらの曲の全部をこの人(とこの人のグループ)が作ったんだ」という
歴史的感動は間違いなくあります。
なんてったって、アンコールでフラッと出てきて、
ギター1本で無造作に歌い始めたのが<Yesterday>なんですから!

そして、たとえ「打率」は下がってしまったとしても、
<New>や<Queenie Eye>のようなかつてと比べても遜色のない曲を書いたり、
<Hope For The Future>のような新たなチャレンジ(ゲーム音楽)をしたりして、
それらをちゃんと最新のライブに含めるポールの姿勢に、僕は好感を持ちます。


初日のことなんですが、僕の斜め前に、兄弟と思しき2人の男の子がいました。
お兄ちゃんはせいぜい中学生、弟はもしかしたら小学生でした。
2人とも『Revolver』と『Yellow Submarine』のかっこいいTシャツを着てました。
横の席でユニオンジャックを掲げてた、いかにも年季の入ったファンの男性がおそらくお父さんなので、
きっとお父さんの影響で2人ともビートルズを聴いていたんだと思います。

とはいえ、2人はお父さんに連れられて嫌々ついてきたというわけではなく、
むしろ時にお父さん以上に歓声を上げるほど、ライブに夢中な様子でした。
2人ともほぼ全ての曲の歌詞を完璧に覚えていて、
<Golden Slumbers>なんていう渋い曲まで歌ってました(僕でさえ歌詞微妙なのに!)。

その光景は、「ポール・マッカートニー」という存在を端的に表しているように、
僕には思えました。







sassybestcatをフォローしましょう
ランキング参加中!
↓↓よろしければクリックをお願いします

にほんブログ村 音楽ブログ CDレビューへ
にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ