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これはもしかしたら
「やってはいけないこと」だったんじゃないか


今年の10月、コーチェラフェスが行われるのと同じ米LAのエンパイア・ポロ・フィールドで、
ポール・マッカートニーローリング・ストーンズザ・フー
ニール・ヤング、ロジャー・ウォーターズ、そしてボブ・ディランという、
レジェンド級の大スターが一堂に会す空前絶後のすさまじいフェス「Desert Trip」が開催されます。

このニュースが最初に報じられたのは今年の3月だったと思います。
噂を耳にした時は僕も興奮したのですが、
日程や告知映像なんかが続々と公開され、噂が徐々に現実味を増していくのにつれて、
実は、当初の興奮は急速に冷めていきました

いや、確かにね、僕はポールもストーンズもディランも来日公演は全て行ったし、涙流したし、
無人島に持っていくなら?と聞かれてニール・ヤングの『Harvest』って答えてたし、
ロンドン五輪閉会式でザ・フーが<My Generation>を演奏してる真っ最中に
NHKが中継をぶった切った時は猛抗議しました
そういう僕からすれば、まるで夢のようなフェスですよ。
口から泡吹いて悶死するくらいの顔合わせですよ。

でもね…なんていうんだろう、これは「やっちゃいけないこと」だった気がする。
ワンマンだったら、そのアーティストが好きで行くわけだから別にいい。
反対に、普通のフェスのイチ出演者ということであれば、
例えばポールやストーンズを若いアーティストと並べて見ることで、
彼らレジェンドも相対化されるから、これもまた別にいい。

でも、レジェンド“だけ”集めたフェスというのは、どうなんだろう。
いってもみんなピークを下がりに下がりきった、70代の爺さん達ですよ。
そんな爺さん達を担ぎ出して、それが「フェス」として成立し、
しかもチケットが3時間で即完するほど熱狂的に受け入れられ、ニュースバリューを持つ。
そんな状況を、果たして手放しで喜んでいいのでしょうか。

みんなで<Satisfaction>と<Yesterday>と<風に吹かれて>を大合唱する。
それって、ただの壮大な「思い出の懐メロカラオケ大会」なんじゃないか。
「ロックはもうこれ以上の展開はありません」と白旗を上げたのと同じなんじゃないか。
そういうモヤモヤが拭いきれないのです。

いえね、僕自身ははっきりと50〜60年代こそ至上とする、
かなり保守的で原理主義的なリスナーです。
新しいアーティストに対しては決してフレンドリーではなく、基本的にまずは懐疑的な姿勢から入ります。
レディオヘッドの『KID A』は未だに理解不能だし、
「エレクトロ」と名の付くものは眉に唾つけて聴きます。
でも、そういう自分の嗜好が偏ってることに自覚的でいようとは思っていて、
古いアーティストと新しいアーティストがいたら、
(たとえ自分が気に入らなくても)後者が評価された方がいいと思っています。

5月にストーン・ローゼズが20年ぶりとなるシングルをリリースしたときも思いました。
あの<All For One>という曲は、よくも悪くも期待通りすぎて、
「おおお!これはまさにあのローゼズだ!」と興奮させられた一方、
「結局盛り上がるのは旧来の中年ファンだけなのでは?」という気になりました。
僕自身はヘビロテで聴くし、制作中と言われる3rdアルバムが出たら予約して買うし、
キャンセルになってしまった来日公演ももちろんチケット押さえてたけど(早くもっかい来い!)、
本当は「おじさんバンドがのこのこ出てきて20年前と同じことやってるよ」
シーンから笑われるくらいの方が健全なんだろうなあと思います。


だから、Desert Tripが「昔を懐かしみましょう」というスタンスであるならいいんだけど、
「これぞロックだ!」「彼らこそがロックなんだ!」みたいな扱われ方をしたら、
あるいは、このフェスが動員記録的な何かを塗り替えでもしたら、だいぶヤバイと思うのです。

…まあ、お金と時間があったら、間違いなく見に行くんですけどね。
見に行くんですけど、このフェスをどう飲みこんでいいのかわからなくて、モヤモヤします。


※この告知動画見ると「あ〜…」という感じです。





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