gingnang_sekaiheiwatour_A4_2

「大人全滅」と歌うバンドが
いつしか「大人のバンド」になった


お盆の真っただ中、中野サンプラザで行われた銀杏BOYZワンマン
「東京の銀杏好きの集まり」に行ってきました。
スピーカーの真横の席だったので、しばらく耳鳴りが消えませんでした。
でも、耳鳴りが消えてしまうのが名残惜しかったくらい、最高に幸福なライブでした。

銀杏BOYZは6月から、単独では8年ぶりとなる全国ツアー、
「世界平和祈願ツアー2016」を回っていました。
今回のライブはそのファイナルという位置づけ。

この8年の間に銀杏BOYZはオリジナルメンバー3人が一気に脱退し、
メンバーは峯田和伸一人になってしまいました。
一時は、峯田一人による弾き語りスタイルでライブを行っていましたが、
今回のツアーはシングル『生きたい』のレコーディングに参加したメンバー3人
(藤原寛/後藤大樹/山本幹宗)が帯同し、久々の「バンド・銀杏BOYZ」でのステージとなりました。

中でも、藤原寛と後藤大樹の2人は、
長い間同じバンド(元andymori、現AL)のリズム隊を務めているだけあって、
ものすごい安定感&存在感でした。

安定したバンドに支えられて、峯田はいつも以上に「歌」に集中している印象でした。
<べろちゅー>、CDよりもややゆっくりめに演奏された<BABY BABY>
そして「9月11日」という歌詞を「3月11日」に変えて歌われた<夜王子と月の姫>
月並みですけど、曲が沁みてくるというか、
「これってこんな曲だったのか!」と再発見したようでした。

ところどころで挿入された弾き語りの歌もすごく良かった(特に<生きたい>)。
怒鳴ったり声がかすれたり、音を外したりしても、
どれだけ無造作でもその一つひとつが成立していて、ぞくぞくするくらいかっこいい峯田の佇まいは、
まるでボブ・ディランのようでした。

ただ、その一方で、ライブDVD『愛地獄』に収録されたRISING SUNのステージに見られるような、
オリジナルメンバー4人が放つ、何をしでかすかわからない強烈な緊張感はありませんでした。
スピーカーからは耳をつんざくような混沌としたノイズが常に流れていましたが、
それも根底では理性的にコントロールされていた印象です。
僕は、銀杏BOYZという、かつては大人になることを全身で拒絶していた少年達によるバンドが、
「大人の鑑賞にも耐えうるバンド」へと変わったんだと感じました。
(会場が中野サンプラザという「大人のホール」であることも象徴的です)

危険な臭いがプンプン漂っていた当時の銀杏BOYZを知っている人にとっては、
もしかしたら物足りなさを感じたかもしれません。
ただ、僕自身はこの変化をポジティブに受け取っています。
だって、ビートルズがツアーを止めて『Sgt. Pepper’s』を作ったように、
ブライアン・ウィルソンがビーチボーイズ本体から離れて『Pet Sounds』を作ったように、
銀杏BOYZだってずっと『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』『DOOR』のままじゃいられないし、
どこかで次のステップへと進む必要があったと思うから。

音源としてその変化が結実したのが14年の『光のなかに立っていてね』だったけど、
「バンド」として変わったこと(変わらざるをえなかったこと)が示されたのが、
今回のライブだったのかなと思います。
いわばその「お披露目」の場を運よく目撃できたことで、
僕としては改めて彼らをフォローし続けようという気持ちになりました。






sassybestcatをフォローしましょう
ランキング参加中!
↓↓よろしければクリックをお願いします

にほんブログ村 音楽ブログ CDレビューへ
にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ