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鳴ってる音のすべてが
僕の音楽遍歴そのもの


YouTubeやSoundCloudのおかげで、
「自分の知らない曲」を毎日手軽に聴けるようになりました。
もちろん、隅から隅までなんて到底聴けないので、
(各種のWebサービスが作り手に発表の場を広げたことで、日々の音楽の供給量は天文学的です)
僕が1日に聴く「新曲」は、多くてもせいぜい10曲程度。
それでも年間通せば3000曲以上の未知の曲を聴いてることになります。

んで、曲を聴くたびに「最高!」とか「ピンとこないな」とかいろいろ反応するわけですが、
ひたすらそれを繰り返していると「自分がどういう音楽を好きなのか」という、
好みの傾向みたいなものを自覚するようになります。
自覚することで、自分が好きそうな音楽をより効率的に嗅ぎ分けられるようになったり、
逆に、感性の硬直化に危機感を覚えたりします。

面白いのは、好みを自覚することで、
その好みの直接のルーツがどこ(誰)なのかが分かったりすることです。
そして、その「どこ(誰)」が、必ずしも「聴いてきた時間の総量」や「思い入れ」に比例しないことです。

例えば僕の場合、以前も書いたように20代前半にどっぷりとthe pillowsを聴いていました。
聴いた量的にも、のめり込んだ深さ的にも、おそらく彼らが一番です。
ところが、今の僕の「好み」というものは、
決してthe pillowsのような音楽そのものではありません。
むしろ、the pillowsきっかけで聴くようになったストロークスや、
ストロークスがきっかけとなって聴いたさらに別のバンドの方が近かったりします。
自分の好みを自覚することの面白さは、
そういう自分のルーツに対する意外な発見ができることです。

なんで延々こんな話を書いているかというと、
実は2016年は僕にとって、音楽の好みのルーツというものについて、
発見をしたり考えたりする機会が、いつにも増して多い1年だったからです。

今年ブログに書いたアーティストだと、例えばThe LemonsThe School
この2組は最初に聴いた瞬間から「ど」が付くほどハマったのですが、
そのことで「自分は黒人音楽よりも白人ポップスの方にシンパシーを感じるんだな」と、
大げさに言えば「発見」をしました。

この「発見」によって、
サイモン&ガーファンクルとか、50〜60年代のアメリカンポップスとか、
主に僕が20代前半の頃に聴いていた音楽を改めて聴き直したり、
ビーチボーイズ(ブライアン・ウィルソン)を「白人ポップス」という文脈で聴くようになったり。
さらには、新しい音源を買い求めてルーツをさらに掘り下げてみたりと、
普段の音楽の聴き方に新たな「テーマ」をもたらしました。

そして、「好みのルーツを発見した」という点で、
今年聴いたアーティストの中で最も影響が大きかったのが、
大阪出身の4ピース、And Summer Club(アンサマ)でした。



文字通り「どハマり」でした。
今年7月に出た1stアルバム『Heavy Hawaii Punk』は一体何回聴いたでしょう。
今年の夏はアンサマに始まりアンサマに終わった気さえします。
遠くから聞こえてくる、控えめで朴訥とした男女ボーカル。
シンプルな歌メロと、それに絡みつく力の抜けたギター。
アルバムタイトルの3つのキーワード(Heavy、Hawaii、Punk)に表される、
スカスカでチープな音像と前へ前へとつんのめる疾走感の不思議な同居は、
強烈な中毒性があります。

でも、音楽そのもの以上に衝撃だったのは、アンサマを聴いたことで、
「あ、俺ものすごくThe Pains Of Being Pure At Heart好きなんだ」とか、
「だから俺The Vaccinesにハマッたんだ」とか、
「そう考えるとOgre You Assholeとの出会いはめちゃくちゃ大きかったんだな」とか、
過去に聴いてきた音楽たちが、樹形図のようにつながっていったことでした。
まるで、バラバラの星と星を結んで星座ができていくみたいにして、
自分の音楽遍歴というものにストーリーが見えた気がしたのです。

なので、アンサマの音楽はもちろん大好きなんだけど、
彼らがいかにすごいかとか、他のアーティストに比べてどう優れているとか、
そういうことが僕にとって大事なわけではありません。
『Heavy Hawaii Punk』というアルバムは、
そこで鳴っているすべてのサウンドが僕の感性そのものであり、
これまで聴いてきた音楽とこれから聴くであろう音楽との間に挟まれた、
本のしおりのような存在のような気がするのです。








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