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ウォール・オブ・サウンドは
クリスマスソングでこそ輝く


クリスマスアルバムが好きで毎年ちょくちょく買い足しているのですが、
(過去最大のヒットが「ザ・ビートマス(ビートルズ×クリスマス)」)
今年また新たなアイテムが増えました。

フィレスレコードが1963年にリリースしたコンピ、
『A Christmas Gift For You From Phil Spector』です。
フィレスレコードというのは、
1961年に音楽プロデューサーのフィル・スペクターが設立したレーベル。
当時フィレスレコードに所属していた、
クリスタルズダーレン・ラブボブ・B・ソックス・アンド・ザ・ブルージーンズ
そしてロネッツという人気アーティストたちが、
このアルバムでは一堂に会しています。

ロネッツは当時<Be My Baby>をリリースしたばかり。
それまでの看板アーティストだったクリスタルズと、
ちょうどこの後から人気をバトンタッチするので、
このアルバムはフィレスの絶頂期に作られたといえます。

僕としては、バックボーカル稼業の多い、
どちらかというと日陰の存在的イメージの強かったダーレン・ラブが、
一曲目の<White Christmas>で貫禄たっぷりな歌声を聴かせ、
レーベルの重鎮的存在感を放っているのが意外でした。

ですが、このアルバムの一番の聴きどころは、
参加してるアーティストのメンツよりも、
<Frosty The Snowman>や<Winter Wonderland>といった定番のクリスマスソングが、
「ウォール・オブ・サウンド」でアレンジされているという、音そのものでしょう。

クリスタルズの<Santa Claus Is Coming To Town>なんて、
原曲以上にこのバージョンのメロディの方がすっかり定番化してしまいました。
ロネッツの歌う<Sleigh Ride>の、
「Ring Ring…」という印象的なコーラスが、
どんどん転調していくあの展開とか、ホント最高。
ウォール・オブ・サウンドってこってりしてるからたまにお腹いっぱいになるけど、
クリスマスソングと組み合わせたらこの上ない食べ合わせで、
鬼に金棒、餃子にビール感がすごいです。




フィル・スペクターはこのアルバムを、単なるクリスマスソングの寄せ集めではなく、
一枚のトータルアルバムに仕上げたかった
という意味のことを語っています。

多くのクリスマスコンピアルバムが、ある種ベストアルバム的な無色無害さを持つ中で、
確かにこのアルバムには、強い「自己主張」があります。
印象的な効果音の多用や、<White Christmas>のリズムを強調した逆張り的アレンジ、
さらにラストの<Silent Night>では彼自身の「喋り」が入るなど、
当時まだ20代だったフィル・スペクターの強い自負心や、
才気走った様子を濃厚に感じます。

フィル・スペクターという人は、
ビートルズ好きな僕にとっては非常に複雑な、
というかハッキリ言えば嫌いな人物なのですが、
ラモーンズの『End Of The Century』という例もあった)
ブライアン・ウィルソン大滝詠一なども僕は好きで、
彼らの音楽を聴きこもうとすると、フィル・スペクターという名は避けては通れません。

特にここ最近、僕はバブルガムポップというジャンルをよく聴いているのですが、
その源流をたどろうとすると、
古いアメリカンポップスという水源に行き着き(まださらに先はありそうですが)、
そしてその水源池にはフィル・スペクターという大魚が待ち構えているのです。
というような経緯もあり、
徐々に彼に対する気持ちが変わってきていたところでした。

そこへきての、この『A Christmas Gift For You〜』だったので、
クリスマスアルバムのコレクションの新入りというだけでなく、
出会うべくして出会った1枚というような気がしてます。










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