
大人になる一歩手前の
「憂い」と「揺らぎ」
毎日顔を合わせていたクラスメイトの女の子が、
実は某国のお姫様だった。
あるいは、
いつまでも子供だと思っていた近所の女の子が、
ふと気づいたらいつの間にか大人の女性に変身し、
手の届かないところへ羽ばたいていってしまった。
…みたいな例えをアラフォー男がブログに書くのは、
本当にキモいって分かってはいるんだけど、
ラブリーサマーちゃんのメジャーデビューアルバム『LSC』を
最初に聴いたときの感想は、まさにそんな感じだったのです。
いや〜、「衝撃」と表現してもいいくらい、素晴らしいアルバムでした。
僕がラブリーサマーちゃんをフォローするようになったのは、
彼女がFor Tracy Hydeに加入する前だったので、2年以上前になると思います。
フォトハイはもちろん、『よしよしサマー』以降、
彼女のソロ音源も熱心に買っていたのですが、
それはなんというか、「面白そう」「なんか気になる」というような気持ち、
要するに興味や好奇心からでした。
それが、今回のアルバムではっきりと「好き」になったような気がします。
何がそんなに良かったのか。
まず、ソングライターとしてすげえ、
という点が挙げられます。
これまでの彼女の楽曲は、いい意味でも悪い意味でも、まだどこか垢抜けない、
「アングラさ」があったと思います。
ところが今回の『LSC』では、
(おそらく以前からストックしていたのだろうけど)一気に洗練されました。
個々の楽曲のポップさもさることながら、
特筆すべきは楽曲のバラエティの広さです。
<青い瞬きの途中で>はオアシスを彷彿とさせる90年代ブリットポップ、
<202>はソフトなR&B、
そして<PART-TIME ROBOT>はヒップホップと、
「これマジで1人の人が書いたの?」という感じ。
アコースティックなバラード<わたしのうた>なんて、
音の中に沈んでいくようでホントに好きだなあ。
<天国はまだ遠い>の寒々しいギターの音なんかもすごくいい。
(あと<私の好きなもの>にこんなに長く付き合うことになるとも思ってなかった)
そしてもう一つ。
こっちが冒頭述べた“例え”につながるんだけど、
ラブリーサマーちゃんの声は、これまでとは明らかに変わった気がします。
これまではやくしまるえつこにも似た、
幼さや拙さが残る「ロリ声」だったのが、
このアルバムでは大人になる一歩手前のような、
「憂い」や「揺らぎ」のある声になりました。
再録された<ベッドルームの夢>なんて、かつてのep版とはまるで別の曲です。
そういう意味では本作のジャケットが、これまでのような可愛いイラストではなく、
青一色であることは象徴的です。
これはどういう変化なんだろう。
年齢に伴う自然な変化なのであれば、ドキュメンタリーを目撃したようなドキドキがあるし、
意図的な変化だったとしても、それはそれで彼女の底なしの才能を見た気がして身ぶるいします。
少なくとも、この声の変化によって、歌える歌の幅は格段に増したはずだし、
前述の楽曲のバラエティとも無縁ではないはず。
彼女はthe brilliant greenが好きだと公言してるけど、
川瀬智子の声に似てきた気がします。
メジャーデビューすると聞いたときは、
正直「やっていけるのだろうか」とちょっと懐疑的だったのですが、
現実の『LSC』は、そんな僕の「上から目線」をひねり潰すような、
素晴らしいアルバムでした。
(死語ですが)セルアウトだと言い出す人はいるんだろうなあ。
でもこういうアルバムこそ売れないで何がポップスだよと僕は思います。
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